少子高齢化や個人旅行の増加で、旅行代理店を取り巻く環境が厳しさを増す中、Web上の「共感」を武器に、利用者を増やしている旅行サイトがある。弱冠23歳。今春、大学を卒業したばかりの石田言行(いしだいあん)氏が代表取締役を務める「trippiece(トリッピース)」だ。
「共感を呼び、仲間と一緒に『創る』ことで、確実に商品を売り、リピーターを獲得できる」。「モバイル&ソーシャル WEEK 2013」で石田氏は、共感をベースにした“共創マーケティング”の力について熱弁をふるった。

trippieceは、ユーザーが旅行を企画し、興味がある仲間と一緒に詳細を詰め、参加したい人を募集。一定数を超えればJTBやHISなど提携旅行会社がツアー化するサービスだ。「聖闘士星矢のギリシャ聖地巡礼企画」など一般の旅行代理店が企画しないようなニッチで独自性の高い企画も実現する。ソーシャルメディアを通じて集客することでプロモーションコストを抑えられるので、一般的な代理店のパッケージツアーより安くできるという。
ともに作った旅行企画だから、愛着が生まれる
登録ユーザー数は5万、これまで企画された旅行は1200。このうち200が実現しており、旅行参加者は累計約9000人、リピート率は35%に上るという。申し込まれた旅行のキャンセル率は1割程度で、約4割という業界平均と比べると極めて低い。メーンのユーザー層は25~34歳。trippieceで初めて海外に行ったという人が2~3割に上り、60歳以上のシニア層の利用も増えているという。
「共感」をベースにした「共創マーケティング」が成功のキモだと石田氏は語る。面白い旅行企画は共感を呼び、SNSでクチコミが広がっていく。「面白い発想には一定数の顧客が共感してくれる。例えば『ハワイに行こう』だと人は集まらないが、『着物を着てハワイに行こう』など個性化すると人が集まる」と石田氏は具体例で説明する。
共感した人同士が一緒に旅行の細部を詰めて“共創”するため、旅行企画そのものに愛着が生まれ、低キャンセル率につながっている。企画した仲間とともに参加することで思い出も“共創”。旅の後も「楽しかった」などの感想がソーシャルメディアで拡散され、新たな共感を呼んだり、旅行に参加した人同士が仲良くなってコミュニティーを作り、次の旅を一緒に“共創”し始める。
旅行代理店から売り上げの約10%のマージンを受け取るビジネスモデルだが、代理店は集客いらずでツアーを販売でき、「win-winだ」と石田氏。trippieceとほぼ同じ仕組みのサイトを、JTBブランドで提供する「共感トラベラー」にAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を提供するなど、法人との連携にも力を入れ始めている。
今後はよりコミュニティー色を強め、“旅のFacebook”のようなサイトに育てていく方針。「人々が最もお金と可処分時間を投じる非日常のサービスや体験の分野には、まだ王者と呼ばれるようなサービスはない。そういったサービスのデファクトになりたい」と話した。