「テレビに関するオープンな会話の95%はTwitterで行われている」

 Twitter Japanの牧野友衛パートナーシップディレクターは、「モバイル&ソーシャル WEEK 2013」の講演で、衝撃的な数字を口にした。

 「オープンな」とは、一般人が見ることができる掲示板やブログ、ソーシャルメディアなどの、という意味だ。調査対象は米国市場だが、驚くべき数字であることは間違いない。

Twitter Japanの牧野友衛パートナーシップディレクター

 Twitterユーザーの50%は、テレビを見ながらTwitterを使っているといい、調査会社の米ニールセンによれば、米国でテレビについて投稿しているTwitterユーザーは約3200万人に上る。

 「Twitterには、興味のある人や物事につながるインタレストグラフと呼ばれる関係性がある。少し前はスポーツや芸能人、映画、グルメがメーンだった。最近は多くの企業、官公庁、政府などとつながっている。そうした中の1つにテレビがある。いまユーザーはテレビについて多くを語り出している」(牧野氏)。
 
 世界のTwitterのアクティブユーザーは月間2億人超で、昨年比で100%以上の伸びだという。そのうちモバイルユーザーは1億2000万人にも達している。

 こうしたTwitterの動きとも相まって、「ソーシャルテレビ」という言葉が生まれた。視聴者がテレビを見ながら自ら情報を発信するという、新しい視聴スタイルが一般化した。

ツイートは、視聴者の視聴行動に影響を与える

 「米国に、ソーシャルとの連携で話題になった『X Factor』という番組がある。ある回は視聴者数が420万人で、放送中の番組に関するツイート数が140万あった。この投稿がどのくらい見られているのかを、放送中にTwitterのタイムラインに表示されたインプレッション数でカウントしたところ、3100万。放送してから1週間までで見ると、約2億2000万まで広がっていた」(牧野氏)。

 昨年末、米Twitterとニールセンは、こうしたフォロワーによる情報拡散についても、日次でより正確に把握していくために、「ニールセンTwitterTVレーティング」という組織を設けると発表。今秋から本格稼働させる予定だ。牧野氏によれば今年3月には番組に関するツイートが8.5%増えると、視聴率が前年比で1%上がる、といったデータも発表されているという。

 日本はどうか。昨年実施された調査では、70%のユーザーが「視聴している番組についてツイートをしたことがある」と回答。51%のユーザーが、その番組についてのツイートを見て、何らかの行動をした。さらに、ツイートをきっかけに、テレビをつけて番組を見たが27.5%、チャンネルを替えて番組を見たが21.1%いたなど、ツイートが視聴行動に影響を与え始めていることがわかってきた。
 
 昨年10月には、ビデオリサーチが番組に関するツイート数をハッシュタグなどを使って計測すると発表している。現時点では詳細が決まっていないが、Twitterとテレビの新しい関係は、既に始まっていると言えそうだ。

 「そもそもソーシャルテレビってなんなのか」

 ヤフーの友澤大輔マーケティングイノベーション室室長の問いかけにより、「ソーシャルテレビ最前線――真のユーザーファーストとは」と題したセッションが始まった。

 「ネットメディアである一方、広告主でもあるヤフーは、日々いろんな実験をしている。ヤフーが持つテクノロジー、アセットを有効活用するため、動画広告やテレビとの関係性を調査している」

 テレビとネットは補完関係。ソーシャルメディアやアプリ、タブレット、スマホといった仲介者の存在は日々、大きくなっている。「デジタルコンバージェンス」という言葉があるが、まさに日本では、今年がその元年。そう友澤氏は続けた。

多くの参加者が集まった「ソーシャルテレビ最前線」セッション

 ヤフーの「話題なう」というアプリは、FacebookやTwitter上の投稿やつぶやきを、両方から検索でき、グラフ化できる。またYahoo!の、いわゆるブランドパネルと、テレビ広告を組み合わせると、効果はどうなるのか。某飲料メーカーでトライした事例では、2040人くらいのサンプルでインターネット調査を行い、ネットを組み合わせることで約17%、効果が上がり、購入意向も20%上がったという。

企まずして生まれた“世界記録”

 一方、テレビ業界にとってソーシャルメディアはどんな存在なのか。日本テレビの編成局メディアデザインセンターメディアマネジメント部の安藤聖泰氏は、2011年、金曜ロードSHOW!でアニメ映画『天空の城ラピュタ』を放映した際に起きた「バルス事件」を題材に、思いを語った。

 これは、登場人物が番組で呪文を唱えるのに合わせて、ユーザーがTwitterに投稿した書き込みが、1秒間で2万5000という、当時の世界記録になったというもの。画期的な話だが、テレビ局が意図したわけではなく、偶発的な“事件”。「それを喜んで、座視しているだけでよいのか」と、安藤氏は考えている。
 
 ちなみに8月2日、同じ金曜ロードSHOW!で『天空の城ラピュタ』が再び放映される。既にネットでは、「バルス」について盛り上がりを見せている。
 
 もちろん座視しているわけではなく、日本テレビは様々な試みをしている。

 2012年3月、日本テレビは、テレビとSNSを組み合わせた新しいテレビ視聴体験を味わえる世界初のソーシャル視聴サービス「JoinTV」を発表した。スポーツ中継などを離れた場所にいる友人とネットを通じて一緒に応援したり、クイズ番組に参加して、家族や友人と得点を競ったりできる。

 2012年11月には、JoinTVの第一弾としてバスキュールの朴正義社長らが制作を手がけた、エヴァンゲリオンとスマートフォンのアプリが連動する「ムーヴィシンクロナイザ」という企画を実現した。

 音楽特番『THE MUSIC DAY 音楽のちから』では、「リアルタイム音ゲーLIVE」という企画を実施。137万人2311人が参加したという。

 セッションに参加していたもう一人、エイベックスエンタテイメントの池田達也S.M.クリエイティブ室宣伝販促部部長は、「音楽市場において、大量にテレビCMを投下しドラマとのタイアップを獲得して、といったやり方は限界にきている」と話した。

 「何か新しい宣伝手法を取り入れなきゃいけない。テレビとソーシャルの融合が起きる中、(日本テレビのスマートフォン向けアプリである)『wiz tv』に目をつけた」

 テレビで東方神起のニューアルバム「TIME」のCMが流れている間に、wiz tvを立ち上げると、その音声を認識して、アプリにスクラッチカードが出現する。そして画面を指でこすると、その場で豪華賞品が当たるという企画だ。

 「結果はまだまだ。課題も見えてきた。東方神起の本人たちもスタッフも、こうした新たな取り組みにおいて先鞭をつけていこうという思いがある。これからも失敗を恐れず、挑戦していきたい」(池田氏)。

 最後に友澤氏が、このセッションをまとめた。

 「ソーシャルテレビか、セカンドスクリーンかではなく、ユーザーに“自分ごと化”してもらうこと。それが今後の楽しみであり、課題であり、挑戦すべき領域になる」