日本コカ・コーラのWebサイトと言えば、まず1番目にキャンペーン情報やゲームコンテンツ満載の会員向けコミュニティサイト「コカ・コーラ パーク」、そして「コカ・コーラ」「コカ・コーラ ゼロ」のほか「ジョージア」「爽健美茶」「アクエリアス」といった飲料ブランドのサイト群が2番目に思い浮かぶ。

リニューアルしたコーポレートサイト「Coca-Cola Journey」

 そしてもう1つ、企業としての日本コカ・コーラが発信するコーポレートサイトがある。この“第3のサイト”が6月25日、約5年ぶりにリニューアルし、新たに「Coca-Cola Journey」としてスタートを切った。前回、2008年8月の北京オリンピック開催直前に実施したリニューアルは、主にユニバーサルデザイン導入によるユーザーインタフェース、アクセシリビリティ面の改善だった。今回の目玉は、Webマガジン型コンテンツ「コカ・コーラ ストーリー」の投入で、中身も見た目も大きく変わった。

米国本社にならいつつ国内の利用者目線を重視

 サイト刷新を率いた同社広報・パブリックアフェアーズ本部の佐藤克哉氏は、「新製品やキャンペーン情報のみならず、(地域別の製造販売会社である)ボトラーズカンパニーを含めた日本コカ・コーラグループ全体の様々な日々の取り組みをストーリー仕立てに編集してお伝えする。またコカ・コーラにゆかりのある方や話題の人にインタビューや連載コラムといった形でご登場いただく。こうした新しいアプローチを取ることでステークホルダーとの絆を深めていきたい」と狙いを語る。

 昨年夏、次年度のコーポレートサイトの方針について社内で話し合った際、自社のユニークな取り組みをもっと効果的に露出できないかという課題が挙がっていた。同社は旬なアーティストやタレントを起用したインパクトのあるマス広告・キャンペーンを展開する一方、日中の冷却用電力をゼロにする「ピークシフト自販機」を開発したり、自販機にICレコーダーを装着して絶滅危惧種のヤンバルクイナの生態調査に協力したりといった知られざるプロジェクトも数多い。

 それらをもっと物語的に見せていくといった方向性が固まりつつあった昨年秋、米国本社がグローバルサイトに新コンテンツ「Coca-Cola Journey」を立ち上げ、その特徴に一致する部分が多かったため、日本版Journeyとして全面リニューアルする運びとなった。基本的に米国版の構成やインタフェースを踏襲しているが、従来のサイトで利用が多かったニュースリリースコーナーは左サイド中段に残すなど、国内ユーザーの使い勝手を優先している。

 ストーリーは、「ブランド」「ライフスタイル」「自動販売機」「ビジネス」「イノベーション」「パートナー」「ピープル」「サスティナビリティ」「歴史・文化」「グローバル」の全10トピックで構成し、週1~3本ペースで更新していく。

 6月25日のオープン初日には、竹中平蔵氏とティム・ブレット社長の対談や、「ジョージア ヨーロピアン」のCMに出演している三浦知良選手の独占インタビューのほか、一橋大学の米倉誠一郎教授が「ピークシフト自販機」について語ったり、元「広告批評」の編集長が「Share a Coke and a Song」キャンペーン(関連記事)について論じたりと気合が入っている。竹中×社長対談は英訳されて米国版Journeyでも掲載中だ。

 ブランドサイトと企業サイトを分けている企業にとって、企業サイトをWebマガジン化した際に気になるのはコンテンツの棲み分けだ。例えば三浦知良選手のインタビューは、ジョージアのブランドサイト内にあってもおかしくはない。

 この点について佐藤氏は、「ジョージア主導のカズ選手インタビューがあるとすれば、例えばカズ選手のコーヒーにまつわるエピソードを軸にもっとコーヒーが、ジョージアが好きになるような記事に仕上げると思う。コーポレートサイトとしては、今なお現役にこだわり、高い情熱とモチベーションを保つ彼の流儀を描くことを通じて、弊社も同様のサスティナビリティを重視していることをメッセージとして伝えていく」と説明する。

 当面の目標は月間訪問者100万人。これは月間5億PVに上る「Coca-Cola Park」(会員数1200万人)やTwitterアカウント(フォロワー約8万人)、Facebookページ(ファン数約38万人)などから誘導を図ることでクリアできそうだ。

 佐藤氏は、「PV(インプレッション)よりエクスプレッションが大事だと思っている。どう読み取ってシェアされ、語られていくか。その反応を見ながら展開を考えていきたい」という。

継続的な取り組みでファンや従業員とつながり続ける

 そのうえで日本版Journeyの今後について佐藤氏は、「まったくのアイデアベースだが」と前置きしたうえで、次のように語る。

 「コカ・コーラとゆかりのある方や、各方面で活躍中のブロガーさんなどに例えば『コカ・コーラと私』といった切り口で自由に書いていただく。これまでプロモーションで接点のあった方は大勢いるが、企画が終わるとそこで接点も途切れてしまいがちだった。そうした方々が執筆者ネットワークに加わってオピニオンを寄せていただくことで、継続的なつながりを維持し、そのファンの方にも訴求する。こうしたパートナーやオピニオンリーダーのご意見は、(ステークホルダーの一角である)従業員のモチベーションの向上にも役立つはず」

 社内の知られざるプロジェクトをストーリー仕立てで紹介し、一方で社外有識者に自社への期待や提言を語ってもらう――。このコンセプトは決して過去存在しなかった斬新なコンセプトではなく、多くの企業が社内報でやってきたことに似ている。しかし社内報は経費節減の一環で縮小し、紙からデジタルの流れの中でイントラネットに収まったことで注目度も下がっている。

 このノウハウを社外向けコンテンツとして再生することで、企業発のメッセージはもっとダイナミックかつ厚みのあるものになるだろう。コカ・コーラパークという巨大サイトが既にある前提での企業サイト刷新ではあるが、Coca-Cola Journeyの取り組みは、Webを活用したコーポレートコミュニケーションの新形態として注目される存在になりそうだ。

この記事をいいね!する