6月19日、楽天市場Facebookページのファン数が100万人を突破した。Facebook本体やグローバルで同一アカウントを使用している企業などを除き、国内Facebookユーザー向けに発信している一般企業として初の100万人の大台到達である。

先週17日(月曜)時点では、ソフトバンクが97万人に達し秒読み段階に入っていた一方、楽天は89万人あまりで、初めて大台を超えるのはソフトバンクだろうと見られていた。
楽天は同じ日、1等100万ポイント、2等1万ポイントなど高額な楽天スーパーポイントが当たる「楽天トレジャーハンティング」というFacebook上のキャンペーンや、楽天市場と出店店舗のFacebookページをいいね!して購入するとポイントが5倍になるキャンペーンなどの開催期間を延長し、告知を強化したことで、先週前半から一気にファン数を増やし、大逆転で100万人一番乗りを果たした。
わずか4カ月で50万人を上積み
楽天市場Facebookページの開設は2010年6月。50万人達成は今年2月のことで、2年8カ月を要した。そこからわずか4カ月あまりで50万人を上積みしての大台到達となった。今年4月からFacebookページを担当している楽天グループソーシャル部ソーシャルマーケティンググループの田島由美子リーダーは、「エンターテインメント性の高いソーシャルキャンペーンや季節性を意識した懸賞、アプリを複数実施したところ、ファン数が急増した」と手応えを語る。
楽天市場の場合、四半期に1回以上同モールで買い物をするユニーク購入者数が約1300万人、一方のFacebook国内アクティブユーザーは2000万人弱で、両者の相当な割合が重なっているであろうことを考慮すると、数十万人規模のファン数は国内トップクラスとはいえ満足できるものではなかった。様々なKPI(重要業績評価指標)の中でもファン数は最重要視していたため、「(100万人達成で)大きなマイルストーンに達したと感じている」(田島氏)。
もちろん企業Facebookページはファン数がすべてではない。ファンのいいね!やコメントでFacebookページが活性化し、楽天市場への送客、そして売り上げへとつながってこそ意味がある。田島氏は、「Facebookファンの楽天市場における購入金額は、平均よりも高くなっている」と説明する。

この6月だけでも、いいね!が1万件を超えた投稿が3本ある。一方的にキャンペーンの案内や季節の販促品情報を垂れ流すのではなく、「この商品がすごい」と題して、芝生を敷いたサンダルや、カセットテープの音源をMP3データに変換できる機器など意外性のある商品を紹介することで反響を得ている。6月13日に紹介した自転車向けの「ドーム型傘」は、その斬新なスタイルがウケて、いいね!約1万5000件、コメント400件、シェアも1200件超に上った。「いいね!は多いがコメントとシェアは少ない」と言われる国内Facebookページでは、異例の大反響と言っていいだろう。
田島氏は、「Facebookではこうしたユニークな商品紹介を交えて『Shopping is entertainment』というブランドコンセプトをお伝えし、さらに関係を強化していきたい」と抱負を語る。大量に届くメルマガには不満の声も上がる楽天市場だが、Facebookでは良好な関係の構築に成功しているようだ。
一方、100万人到達目前で大逆転されたソフトバンクは、相当衝撃を受けている模様だ。
「楽天のファン増加スピードには、大変驚いております」。ソフトバンクモバイルマーケティング本部の高橋宏祐Webコミュニケーション部長は驚きを隠さない。
「FacebookやLINEを活用するのであれば、ファン数でナンバーワンになるんだ」。高橋氏は、ソーシャルメディアを活用するに当たり、孫正義社長からこんな檄を飛ばされ続けてきたという。
「最初は、(孫氏が)単にナンバーワンを目指せと言っていると思っていた」と高橋氏は振り返る。ファン数が30万~40万人のころは、事業収益に寄与する割合も少なく、「やっている意味があるのか」という反応を示す社員も少なくなかったようだ。
80万人を超え業績貢献が目に見える形に
ファン数が80万人を超えたころから、潮目が変わった。「(情報が波及した人数を示す)リーチ数が伸びて、コメントも増えてきた」(高橋氏)。それだけではない。Facebookだけで告知した商品が、その週末に売り上げが増加するなど、業績への貢献が目に見えるものになってきた。「100万人近い規模になって、初めて売り上げへの効果が目に見える形になった。孫の言うナンバーワンになることの意味を実感した」と高橋氏は言う。だからこそ、どこよりも早く100万人を達成したかったに違いない。
ソフトバンクのファン数増加に大きく貢献したのが、4月18日から5月17日の期間、Facebook上で実施した「ケータイ代一生分無料キャンペーン」という企画だ。これは、応募者の中から1人に通話料金一生分に相当する518万8000円分の商品券が当たるというもの。開始前は45万人程度だったファン数が、キャンペーン後には、2倍の90万人以上にまで増えた。これは楽天市場の急伸ぶりをも上回るもの。
同社が最初に首位に立ったのはLINEだ。5月23日にローソンの公式アカウントの登録者数を抜いた。これに続く形で、6月上旬にはFacebookでそれまでファン数で1位だった、良品計画の「無印良品」を抜いて、ファン数で首位に立った。
100万人一番乗りに向けて、ソフトバンクは6月3日~17日にかけてアディダスジャパンと共同で「100万いいね!へ応援感謝!!」と題したキャンペーンを実施した。2社のFacebookページのファンになると、抽選でプロサッカー選手の香川真司さんがソフトバンクモバイルのテレビCMで着用しているユニフォームが当たるという内容だ。
また、6月14日からはその場で「Yahoo!ポイント」が500ポイント当たる、スピードくじキャンペーンをFacebookページ上で開始。キャンペーン終了日の6月23日までに、ファン数が100万人に達すれば100万ポイントが当たる特典を用意するなど、100万人を意識していた様子がうかがえる。
これらのキャンペーンは、通話料金一生分プレゼントに比べると、反応は薄かったが、着実にファン数を増やし、6月中に100万人を達成することはほぼ確実だった。
「色々と調査してみたのですが、楽天が実施したキャンペーンの効果に加え、別に実施していた『診断アプリ』でも急激にファンが増えたのでは、と推測しております」と高橋氏は言う。そしてこう続ける、「ソフトバンクとしては、ユーザーにメリットのあるキャンペーンなどの形で情報を発信していき、純粋なFacebookページの企画に対する反応をいただくことで、当社のファンを増やしていきたいと考えています」。両者の激しいつばぜり合いは今後も続きそうだ。
ソフトバンクは本日(6月25日)中にも100万人を達成する見込みで、無印良品やユニクロも100万人を目前に控えている。国内で相次いで100万人規模のFacebookページが誕生するのは間違いない。
黎明の時代を過ぎ、実利につながるマーケティングツールへ。日本におけるソーシャルメディアマーケティングは、大きな節目を迎えつつある。