「企業はソーシャルメディアで自社商品の紹介・宣伝をすると嫌われる」「子猫が眠ってる癒し系の画像にたくさん『いいね!』が付いた」─。
こうした定説や成功体験談に振り回されて、Facebookページ担当者は疲弊していないだろうか。最終的にブランド価値を高めて売り上げを伸ばすという目標がある以上、商品の宣伝を避けるのは非現実的だ。ではどうすればいいか。商品の宣伝に多数のいいね!が付くサッポロビールの取り組みが参考になるだろう。
KPIは月2いいね!ファン率
同社は、忠誠度の高いファンの比率を表す「ロイヤルユーザー比率」を、ソーシャルメディア解析を委託しているユーザーローカル(東京都目黒区)とともに開発し、この数字の維持に努めている。算出式は、月2回以上いいね!あるいはコメントを寄せたファン数を、Facebookページのファン数で割った値だ。

Facebookページを運営するサッポロビール営業本部企画推進部デジタルマーケティング室の森勇一氏は言う。
「投稿のたびにいいね!を押してくださるファンの方がいて、そうした方のページを見たところ、やはり実際にサッポロ製品を愛飲されていて、好意的なクチコミの発信源になっていた。こうしたコアなファンとのつながりを大事にして増やしていくことが重要だと考え、指標化に至った」
同社が1月に測定したロイヤルユーザー比率は、サッポロビールページが6.72%、ヱビスビールページが5.45%だった。エンゲージメント率と同様、ファン数が増えるほどコアなファンの割合は減るため、数字は下がる傾向がある。「ユーザーローカルからは、ファン数が3万人を超える規模になると大半が2%程度に落ちるので、かなり良い数字だと説明を受けている」(森氏)。
ロイヤルユーザー比率を高めると目標が定まれば、安易なウケを狙った投稿でいいね!を稼ぐという発想はなくなる。直球勝負でサッポロ製品を露出し、それをどのように見せれば、また伝えれば魅力的に映るか、森氏は試行錯誤を繰り返している。
社員が居酒屋で撮影したスナップ写真と広告写真素材で反応を比べたり、テキストを100文字以上と未満で比較したりといった具合に様々な条件で投稿研究をした結果、「手応えがつかめてきた」(森氏)。参考までに反応のよいパターンを1つ挙げると、ビール缶あるいはグラスで乾杯している手の入った写真だという。もっともそれは同社が「乾杯をもっとおいしく」をキャッチフレーズとしてサッポロ製品を想起させることを目標に投稿を積み重ねてきたためでもある。
そんな同社のFacebookページで珍現象が起きている。企業ページでは一般的に商品の宣伝投稿はスルーされがちで、CM起用タレントなどが登場するといいね!が増えるものだが、同社の場合はまったく逆だ。最近では専用サーバー「ヱビス プレミアムミックス」の紹介が7500件超のいいね!を集める一方、豪州ワインのブランドアンバサダーであるきゃりーぱみゅぱみゅさんや、焼酎のイメージキャラクター井上和香さんらが登場するイベントの案内投稿は1000~2000件程度にとどまっている。「こちらももっと増えてほしいですが…」と森氏は戸惑うが、本物のサッポロファンを集めた成果と言えるのではないだろうか。