折々のテーマを提示して投稿を募り、投稿者の「Facebook」や「Twitter」のアカウントを通じて、話題を拡散してもらう─。全日本空輸(ANA)のソーシャルメディア連携サイト「SOCIAL SKY PARK(SSP)」が活況を呈している。
投稿数は前年比30%増のペースで増えている。昨年10月、投稿への謝礼に電子クーポン「ANAスカイコイン」を導入したことが功を奏している。

SSPは「ANAマイレージクラブ(AMC)」会員向けサービスの1つ。ANAスカイコインは、10コイン(=10円)単位で、航空券や「ANAスカイホリデー」などANA系ツアー商品の購入に使える。その利便性が受けて、SSPの利用が活発になってきている。
SSP運営の狙いは、コインを通じたAMC会員の囲い込みに加えて、毎回設定するテーマを広告宣伝に活用することにある。例えば6月前半は「夏と言えばこれ! あなたの夏の定番を教えてください。」というテーマを掲げる。これは「だからこの夏、ANA」という同社のキャンペーンに連動したもの。「夏」をテーマにした投稿を促進することで、旅行のハイシーズンが近づいていることを投稿者やその友だちへ伝える。
こうしたテーマに毎回数千件の投稿が寄せられる。そして、投稿者のFacebookやTwitterを通じて、テーマに関する情報が拡散していく。
ユーザーが増え、利用が活性化しているメディアは、他社からも広告宣伝の場として注目を集めやすい。
「自社のブランドやサービスの認知度向上、あるいは幅広い世代の意見を集めるといった目的でSSPを使いたいというスポンサーが順調に獲得できている。当社自身がSSPをマーケティングツールとして活用しながら、その運用コストなどをスポンサー収入で十分にまかなえるようになってきた」
SSPを担当しているANAのマーケティング室ロイヤリティマーケティング部の高橋光毅氏はそう話す。
ネット販促の三本柱の1つに
オンラインにおける宣伝告知、販促の場として、SSPは同社Webサイトやメルマガと並ぶ柱になっている。SSPの最終目標はスポンサー収入でないにせよ、そうした収入があることで自社のマーケティングROI(投下資本利益率)は大きく向上する。
SSPとスカイコインは、同社の顧客のすそ野の拡大にも貢献する。
ANAのマイルは、基本的には1万マイル以上ためないと航空券などに換えられない。利用のハードルは高い。しかし、手持ちのマイルをスカイコインに交換すれば、1万マイル未満でも航空券などの支払いに充てられる。
会員がいざ航空券を買うことになった時、「スカイコインもあるからANAにしようか」と考えてもらえるのではないか、というわけだ。「nanacoポイント」を含め、9種類のポイントから交換できるようにしているのも、利便性を高めるため。
規模は小さくとも知恵を凝らせば収益は向上できる。ANA流ソーシャル活用が意味するのは、実にシンプルな事実である。