■特集「ネスレ日本、直販2割に挑む」
前編 ニッチ商品ばかりのメーカー直販に限界、事業モデルの革新で売る
中編 私だけのキットカット、価格2倍でも喜ばれる訳
後編 成長の起爆剤は、ビジネスモデルイノベーションとデジタルコミュニケーション


※この記事は、「【特集】ネスレ日本、直販2割に挑む(中編)私だけのキットカット、価格2倍でも喜ばれる訳」の続きです。

 さて、ここまで紹介してきた、ネスレの取り組みだが、実は今年100周年を迎えたネスレ日本が3月に発表した、事業における成長戦略のキーワードにすべて関連している。俯瞰して見ることで、同社が進める戦略の全体像が浮かび上がる。

ネスレ日本の成長戦略のキーワード

 右図をご覧いただきたい。ネスレの戦略を示すキーワードは大きく3つある。

 まず「製品・技術イノベーション」から「ビジネスモデルイノベーション」へと進化させること。コーヒーの味を改良するのが製品イノベーションとすれば、バリスタと直販サイトを組み合わせてオフィス市場を開拓するネスカフェアンバサダーは、ビジネスモデルのイノベーションだ。カスタマイズできるキットカットもここに入る。

 2つ目は「マスコミュニケーション」から「デジタルコミュニケーション」への進化だ。消費者と直接つながり、マーケティング施策などに対する反応を直接検証できるネスレアミューズは、コミュニケーション手段の変化を示す象徴的な取り組みだ。ネスレの直販事業を支える顧客基盤として活用していく。

 そして、人事の評価制度を「日本的な人事制度」から、成果を基にした「パフォーマンスカルチャー」へと変えるのが3つ目の戦略だ。

 このように、ビジネスモデルイノベーションとデジタルコミュニケーションという戦略を進めながら、その成果を収益化する場として、直販サイトを活用していく。それが、ネスレの成長戦略の全体像となる。

昨年6月にCMO職を新設

 ネスレは、そうした新しい収益を生むビジネスモデルを作り出す上で、組織体制も変化させて、会社全体で取り組みを始めている。

 今後の成長戦略を推進する要として、ネスレは昨年6月に新たな役職を設置した。それが石橋氏が務めるCMOである。

ブランドや事業部に横串でアドバイスするCMOを設置

 石橋CMOは、高岡社長がネスレ子会社の製菓会社ネスレコンフェクショナリー(現在はネスレに統合)のマーケティング本部長を務めていたころに、共にキットカットの受験キャンペーンを成功させた経験を持つ。

 このキャンペーンは、商品の持つ価値を単なるチョコレート菓子から受験生を応援する商品へと大きく変えたビジネスモデルイノベーションという側面を持つ。そして、PR活動によって生んだ話題をデジタルメディアを通じて広げていくという新しいマーケティングコミュニケーションという側面もある。

 お気づきかもしれないが、キットカットのキャンペーンが、ネスレが掲げる新たな戦略のキーワードの礎となっている。

 この成功体験を持つ石橋CMOが、各事業部に対して横串でアドバイスしていくことで、ネスカフェアンバサダーのような新しいビジネスモデルや、キットカットのキャンペーンのような新しいコミュニケーション手法が生まれる社内環境を作っていく。その実現こそが、直販比率2割を達成するための最大の課題にもなると言えよう。