ブランド力を強化するために直販にこだわり、顧客の声を重視する。そこで育ったファンが新規顧客の獲得に貢献する。これがベビー服ブランド「コンビミニ」を展開するコンビネクスト(東京都台東区)が描く戦略だ。

 商品は8つの直営店のほか、カタログ通販や自社EC(電子商取引)サイトを通じて販売している。ブランド立ち上げ当初は他の小売店でも販売していたが、わずか半年で事業モデルを直販へと切り替えた。転換の背景には、こんな出来事があった。

 ワゴンに放り込まれたベビー服を物色する女性たち。洋服を手に取る彼女たちが見比べるのは値札だ。ブランド名を気にすることなく、価格を比較して商品を購入していく──。

 コンビミニブランドを立ち上げたコンビネクストの木下道太前社長は、ある小売店でこんな光景を目の当たりにした。商品の購買を決定する要因は価格だけ。自身が手掛けた愛着あるブランドだけに、その消費行動に大きなショックを受けた。

「ブランドが育たない」と危機感

 「価格ばかりを見られていては、ブランドが育たない」。そう考えた木下氏は、直販事業への切り替えを決意する。直販にすることで、価格決定権を自社で持ち、ブランドのファンに指名買いしてもらう。こうして、ブランドを築き上げていくことを目指した。

 ファン作りに欠かせないのがブランドに対する信頼感だろう。信頼を醸成するために、コンビネクストは顧客の声を傾聴し、顧客の求める商品を作ることを心掛けてきた。

コンビミニが顧客の声から開発したベビーカーがヒットに

 「もっとかわいい色のベビーカーが欲しい」。例えば、こんな声から、親会社のコンビ(東京都台東区)が販売するモデルをベースに、アパレルブランドらしさを生かしたベビーカーを開発した。赤を基調にした「コンビミニ ディアクラッセ」などだ。これらは親会社の同型モデルよりも売れるヒット商品となり、コンビでも赤いベビーカーを作ることになった。

 また、未熟児を子供に持つ親から、「体が小さい子供向けの洋服が欲しい」という意見が寄せられ、要望に応えた商品を開発した。広く売れる商品ではなく、収益だけを考えれば開発しないだろう。実際、「数としてはさほど売れておらず、採算は取りづらい」と、コンビネクストの村田勤コンビミニ事業部長は明かす。ただ、こうして顧客と真摯に向き合う姿勢が、ブランディングにつながると考える。

 しかし、ベビー服のブランドゆえに、子供の成長とともに顧客は離れてしまう。また、直販限定のため、流通大手の売り場などで偶然、消費者が商品を目にする機会もない。新規顧客の獲得活動は常に欠かせない。これまでは雑誌や新聞広告を活用してきたが、若者の雑誌や新聞離れもあり、新たな新規顧客開拓の手段が求められている。

 そこで、7月にはECサイトを刷新して、顧客による紹介制度を導入する計画だ。ブランドへの愛着心の強いファンを通じて新たな顧客を開拓する。その仕組みを成功させるために、今後も顧客と向き合い、顧客優先のマーケティングを進めていく方針だ。

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