化粧品メーカーのコーセーは、インターネットで収集した顧客の声を生かした商品開発や改善に本格的に乗り出す。今年1月から2月に実施した試験的なプロジェクトでは、約5000件の声を集めた。反響の大きさや寄せられた意見の内容から本格展開を決断。メーカーと顧客が対話して、商品開発に取り組む“共創”を目指す、新たな取り組みとして注目を集めそうだ。
「これまで、(消費者を集めた)グループインタビューを実施してきたが、(緊張などから)なかなか本音がでにくい」。原谷美典経営企画部長はリアルの場でのグループインタビューの課題をこう語る。
そこで、意見をより気軽に投稿してもらえるように、専用の新サイトを年内に開設する。そのサイト上に、コーセーが質問を投げかける。これなら、自宅のパソコンやスマートフォンで、他人を気にせずに意見を書き込んでもらえるとみる。まず、約20万人が登録するコーセーの会員組織「CLUB KOSE」から、参加者を募る。
テーマを分けて掲示板で意見を募る

コーセーは今年の1月21日~2月20日、一部の顧客を対象に、「KOSE Idea BOX」という非公開のWebサイトで意見を求める試験的なプロジェクトを実施済みだ。
4つのテーマについて、意見を求めて、意見を投稿した人の中から抽選でそれぞれのテーマに沿った商品をプレゼントした。テーマごとに、参加者が投稿した様々な意見が並ぶ掲示板のようなイメージだ。
1カ月で約5000件の意見が集まった。テーマの1つ、「ファンデーションを付ける時は、ブラシ?スポンジ?指?」という質問には1282件の意見が寄せられた。ファンデーションを使うときに、指やスポンジで肌に付ける人が多いだろうという予測とは異なり、ブラシで付ける人も多くいるなど、意外な傾向が見て取れたという。
各投稿には賛同を示す「Up」ボタンと、賛同しないことを示す「Down」ボタンを設置した。この数などによって、顧客のニーズの高さを判断した。
この結果から、マーケティングや商品開発の参考にできる可能性が高いと判断して、本格的に取り組むことを決めた。ただ、投稿者に属性情報の登録を求めていなかったため、寄せられた意見がどういった年齢層に多いのかといった分析ができないなどの課題が浮上した。こうした反省点を生かして新サイトを開設する。また、試験時は経営企画部が運営したが、本格運用時は商品開発部門に移管するという。
顧客に尋ねる質問としては、既存のブランドに関する意見ではなく、どのように化粧や洗顔をしているか、どんな商品や機能があると便利かなどをテーマにする。商品開発部門はそれらの意見を受けて、コーセーのどのブランドの製品開発や改良に生かせばよいかを横断的に分析していく。
公開サイトで意見を募って商品開発や改良に役立てる取り組みは、米スターバックスコーヒーの「My Starbucks Idea」など米国で進んできたが、日本企業の取り組みはまだ珍しい。