バニラ、ラムレーズン、ストロベリーといったミニカップの定番に、4月22日から「抹茶トリュフ」が期間限定で加わって人気を集めているハーゲンダッツ。4月25日に唯一残っていた新浦安店が営業を終了し、店舗販売から撤退したニュースには惜しむ声が続出したが、そんなムードを払拭しようと同社は4月24日、ユーザー参加型特設サイト「Haagen-Dazs EXPO」をオープン。その第1弾キャンペーンとして「あなたはどれが好き?人気のフレーバーランキング」を開催中だ。

ハーゲンダッツの人気投票企画「あなたはどれが好き?人気のフレーバーランキング」

 これは同社が過去に販売した124種類ものミニカップの中から好きなフレーバーに投票し、人気ランキングを決めるというもの。さながら“OG”も参加可能な選抜総選挙といった趣だ。Facebook、Twitter、mixiのいずれかのアカウントにログインして投票すると、18金製ミニカップホルダー(1人)や、バニラの引き換え電子クーポン(6000人)が当たる抽選権が得られ、その場で当落が分かる。なおプレゼント抽選権は得られないがSNSにログインせずに投票することも可能。投票数は5月6日時点で40万票を超えた。応募期間は6月20日までだが、規模の上では既に成功キャンペーンと言っていいだろう。

「この投票よくわからないし腹立つ」との投稿も…

 ところが、このキャンペーンには設計に一部“不備”があった。開始2日目の4月25日に記者がTwitterにログインして、10年前に発売された「アズキ」を懐かしく思い出しながら1票を投じたところ、投票直後に表示されたメッセージは、「残念でした。またの投票をお待ちしております」……というものだった。

好きなフレーバーを選んで投票すると、「残念でした」という“残念”なメッセージが表示された

 SNS上には、このメッセージに違和感を持ったと思われる投稿が散見された。

 「ミント系好きです。何残念でしたって...?」

 「ハーゲンダッツの好きなフレーバーに投票ってやってみたけど、なんで好きなものをクリックして残念でした。ってなるのだ? 何かこの投票よくわからないし腹立つ」

 「質問は『あなたはどれが好き?』なのだから当たりも外れもないと思うけど、『あなたの選んだのは外れです』って、ハーゲンダッツは私の好みの何を知っているんだい? あまりに失礼な判断だよ。あぁ、はらだたしい!」

修正後のメッセージ画面
 

 記者は4月25日、ハーゲンダッツの公式Facebookページ宛に、プロフィールを公開したうえでこの“不備”についてメッセージ機能で伝えたが、返答がなかったため、4月30日に取材を申し込んだ。同社広報は5月2日、「もともとの予定とは異なるメッセージがアップされてしまっている。ゴールデンウイーク期間中で制作会社が動けなかった。間もなく修正する」と回答。参加者の不評や記者の指摘で初めて気づいて修正するわけではないとの説明だった。そして同日夜、投票御礼をプレゼント当落の前に追記したメッセージに差し替えた。

 「投票ありがとうございました」。その一言が抜けていただけの話、ではある。だが同様のトラブルは、人気投票キャンペーンを展開する企業なら十分起こりうることなので、注意が必要だ。

投票する人=プレゼントが欲しい人、とは限らない

 投票に際してSNSがよく使われる理由は大きく2つ。1つは投票者のうちプレゼント当選者に連絡をとったり、投票回数の制限をかけたりすることが容易なためだ。たとえばTwitterを使った投票では、自社アカウントのフォローを投票条件とすることで、当選の通知をDM(ダイレクトメッセージ)で送るケースがよくある。

 2つ目は、SNSが持つ拡散性への期待。たとえば「バニラ」に投票したことがタイムライン上に表示されれば、SNS上の友だちに投票企画の存在が伝わり、芋づる式に参加者が増える可能性が高まる。それがソーシャルインフルエンスの威力であり醍醐味だ。今回のキャンペーンでSNS経由で投票した場合でも、プレゼント目当てというより、投票することでクチコミに協力できるという善意でもってログイン投票している人も多いと思われる。

 この2つの要素のうち、企業側がSNSを前者の目的で使う意識が強いと、「SNSにログインして投票する人」イコール「プレゼントが欲しい人」という位置づけになり、だから「当落を真っ先に伝えて何度も投票してもらおう」という思考になりやすい。そう考えると、修正前のハーゲンダッツのメッセージは決して他人事ではない。

 なおハーゲンダッツの人気投票では、SNS経由で投票してもどのフレーバーに投票したかはSNS上に投稿されない仕様になっている。好きなフレーバーについて感想コメントを記すことはできるものの、SNS上には、たとえば「週1コは食べてます♪ ハーゲンダッツ『あなたはどれが好き?人気のフレーバーランキング』URL」という雛形で掲載されるため、SNS上の友人に「ただいま投票受付中」であることがやや伝わりにくい。ちなみに同社は投票企画に先立って自社コミュニティ登録者に人気フレーバー調査を実施し、その結果グリーンティーが1位だったことを公表してニュースにもなっていた。せっかくSNS上で投稿を目にしても、この事前調査結果に対する感想と勘違いしてしまう恐れもある。

 参考までに、日清食品が「カップヌードル」の“復活総選挙”を実施した際は、以下のように投票内容がTwitter上に反映された。

「『カップヌードル天そばを食べたい!』 歴代カップヌードル復活総選挙 第1回中間発表*月**日予定! URL #cupnoodle_40」

 これならばタイムライン上の友だちに企画の存在と、投票受付中であることが伝わりやすい。ハーゲンダッツも投票意欲をそそる文言になっていれば、投票総数はさらに伸びたことだろう。

 「投票した人がこのメッセージを見てどのように思うか、再度投票したくなるか」「このタイムライン上に流れるメッセージを見てSNS上の友だちが企画の存在に気づくか、投票意欲が喚起されるか」……。SNSを単に投票ツールあるいは連絡ツールと位置付けてしまうと、こうした参加者の心情を軽視した設計・文言に陥りがちだ。いわゆる“投票もの”を実施する可能性がある企業には、SNS利用目的の再確認と慎重さが求められる。

この記事をいいね!する