日経デジタルマーケティングが主催したイベント「ソーシャル激戦時代に売る秘訣 第2回ソーシャル活用売上ランキングセミナー」の後半では、ランキング作成に関わった3社が登壇した。

トップバッターは日経BPコンサルティング(東京都港区)コンサルティング本部ブランドコミュニケーション部シニアコンサルタントの大友直子氏。「売り上げに結び付いたかどうか」という消費行動にスポットを当てて、ランキングのハイライトを紹介した。
今回の調査は、Facebookのファン数、Twitterアカウントのフォロワー数など上位200社・ブランドが対象で、「消費行動スコア」の元になる消費者アンケートの回答者は約2万9千人に上った。これは100社・ブランド、約1万2千人だった第1回と比べて倍の規模である。
「購入や利用の候補にした」は上昇
ユーザー(登録者)が多いソーシャルメディアはYouTube、Facebook、Twitterだが「毎日利用している割合」はFacebookが頭ひとつ抜けている。注目のLINEは5位だが、登録に対する「毎日利用している割合」は高く、ポテンシャルは高そうだ。
売り上げにつながる消費行動について大友氏は、公式アカウントからの情報で購入や利用に至った割合が、昨年と比較して下がったと指摘。ただ、「購入や利用の候補にしたという割合は上がった」と話した。
消費行動への影響度が高い企業・ブランドは、前回は食品や小売りが中心だったが、今回は女性向けブランドが中心となった。さらにソーシャルメディアの影響は「購入」から「購入の候補」へと変化していた。
この傾向について大友氏は、「ソーシャルメディアのユーザーそのものが増えたことでファン数も増え、ソーシャルメディアをきっかけに購入に至るコアなファンの割合が相対的に低くなったという当然の流れ」としつつも、「直接的な購入に結び付けるのではなく、企業や商品の魅力を伝えることが目的のコンテンツが増えてきたこともあるのではないか。それに伴い、お客様の期待値も上がっていくのだろう」と分析した。
今後のソーシャルメディア活用では、「いつか買うための検討材料としての情報源」「ターゲットを絞ってファン数が少なくても売り上げに貢献」という視点が重要だと語った。
ソーシャルで好反応を得る勝ちパターンとは
「リーチスコア」算出に協力したユーザーローカル(東京都渋谷区)からは、コーポレートセールスディレクターの渡邊和行氏が登壇。上位企業の利用データから導き出された「勝ちパターン」を紹介した。
最初に示したのは「ソーシャルメディアへの投稿はリンク(URL)の有無で反響が違うか?」という問いだ。答えはFacebookの場合は投稿にリンクが含まれていると「いいね!」やコメントが減り、Twitterは逆にリツイートされる傾向にあるというもの。

理由について渡邊氏は、Facebookではリンクがあると外部のサイトに出てしまうが、Twitterのリツイートでは、その点は気にならないからではないかと分析した。両方で同じ内容を投稿をするケースがあるが、FacebookとTwitterでは勝ちパターンが異なる。それぞれのユーザー層やメディア特性を意識した運用が重要とした。
続いて示したのは「反響が多いタイミングはいつか?」。反響の多いもの、少ないもの別に、投稿時間や曜日を集計したところ、FacebookとTwitterではやはり違いがあった。
時間帯で見ると、Twitterは朝8時、昼食時、夕食時に、Facebookは11時、夜間に好反応が得られやすい。曜日別ではTwitterは木金土、Facebookでは日月火水の反応が高いという。
これは企業アカウントの投稿日に原因がある。Twitterでは土曜日、Facebookでは日月火水の投稿が少ないため、結果として目に付きやすくなるというわけだ。ただし、これはあくまでも統計的な知見であり、渡邊氏は「この時間帯や曜日に投稿すれば必ず良い反応を得られるというわけではない」と強調した。
3つ目は写真の有無による反応の違い。「写真付きのほうが反応がよい」と言われるが、それを裏付けるようにFacebookでは「反応の良い投稿の92.7%が写真付き」「反応が悪い投稿には66.5%しか写真が付いていない」という結果を明らかにした。
写真の種類については「食べ物」「乗り物」の反応が高く、「色が地味」「有名人の写真」「スーツの女性男性」などは反応が低いという。テキストの長さや含まれている単語による違いも紹介。勝ちパターンは業界や商品分野ごとに異なり、メディアの特性、投稿するタイミング、写真のテイストや画質、テキストの長さや単語など、少しの工夫で効果は大きく変わるとして講演を終えた。
知るべきは「世の中」「消費者」「可能性」の3つ
最後に登壇したソリッドインテリジェンス(東京都渋谷区)コンサルタントの佐々木悠氏は、企業がソーシャルメディアを有意義に活用するための秘訣について、事例を交えて紹介した。

ソーシャルメディアを活用した事例として最初に紹介したのは、エスエス製薬の「カゼミル」というWebサイトだ。Twitterへの投稿から風邪の流行状況を把握し、視覚的に表示するサービスだ。佐々木氏は、ソーシャルメディアをプロモーションのコンテンツとして活用した好例と評価した。
続けて、良品計画がソーシャルメディアからプロモーション企画のアイデアを発掘した事例を紹介した。同社は毎年12月、お菓子の家を親子で作るという企画を実施しているが、プロモーション企画で悩んでいたところ、ソーシャルリスニングによって顧客のニーズを発見したという。そのニーズを踏まえてイベントを企画したところ、15万人の来場者と前年度比130%の売り上げを達成したという。
人が集まる場所を示す「混雑ヒートマップ」
最後は、Twitterを「人群探知機」として活用した米国のHailoCabという取り組み。投稿に含まれる「人身事故」や「車輌故障」といった単語を分析することで、人が集まっている場所を示す「混雑ヒートマップ」になる。この分析データをタクシー会社に、交通手段を求める人々がいる場所として提供している。多くの潜在顧客がいる場所がリアルタイムに把握できるため、実車率が高まり売り上げにつなげることができる。
これらの事例を踏まえて佐々木氏は、企業によるソーシャルメディア活用が現在の「リスニング、プロモーション」から、今後は「売り上げ向上」、そして「未来予測」へと変わっていくとの展望を示した。ソーシャルメディアを使いこなす秘訣としては、「世の中を知る」「消費者を知る」「可能性を知る」の3つを挙げた。
「世の中を知る」とは、FacebookやTwitterなどメディアごとに世の中があり、それを理解することが重要だという意味。「消費者を知る」とは、自社製品の評価だけに注目するのではなく、根本にある顧客のニーズや気持ちの変化を知るということ。最後の「可能性を知る」は、事例からソーシャルメディアの可能性を学ぶことだという。
ソーシャルメディアに十分な予算や人員を割けない企業は少なくない。そのような環境にあっても、担当者は独りで悩まずに他社や海外の先進的な事例を参考にすることで、自分自身の可能性も広げられるはずだと締めくくった。