●「第2回ソーシャル活用売上ランキングセミナー」報告
第1回 ローソンが進めるソーシャルマーケター育成戦略が明らかに
第2回 好意的なツイートに積極的に話しかけるオルビスのアクティブサポート
第3回 HIS、60もの観光地別Facebookページ開設し、参加型企画で「支援者」育成
第4回 ユーザーローカル、ソリッドインテリジェンスらが明かす、ソーシャル活用の「勝ちパターン」と「未来予測への応用」

 コールセンターにかかってくる電話といえば、多くは製品や店舗接客などに対する苦情だろう。製品やサービスを気に入っても、わざわざ電話をかけてくるような消費者は少ない。一方、ソーシャルメディアに書かれる製品やサービスに関する評判はというと、必ずしも苦情ばかりではないようだ。

 化粧品会社のオルビス(東京都品川区)はTwitter(@ORBIS_JP)を活用した、アクティブサポートに取り組んでいる。アクティブサポートは、Twitterの投稿の中から、自社製品やサービスに関する不満や疑問のツイートを見つけ出して、企業側から解決策などを提示する手法を指すことが多い。

オルビス通販事業部デジタル企画推進チームの大川真樹課長

 だが、オルビスがTwitter上で話しかけるユーザーの多くは、自社製品などについて好意的な意見を投稿している人たちだ。既に好意的な印象を持っている顧客に対して、さらに付加情報を提供して、顧客満足度を高めることを狙う。

 日経デジタルマーケティングが主催したイベント「ソーシャル激戦時代に売る秘訣 第2回ソーシャル活用売上ランキングセミナー」に登壇した、オルビス通販事業部デジタル企画推進チームの大川真樹課長は、そうしたオルビスのアクティブサポート戦術を明かした。

「人肌感」をソーシャルメディアでも演出

 同社は「ソーシャル活用売上ランキング」において、消費行動スコアで80.8ポイントとなり、全企業・ブランドの中で最も高い数値となった。同社の成功の秘訣は「人肌感」をソーシャルメディア上でも創出すること。ソーシャルメディアを通じて、顧客と自社や従業員との距離を縮めて、製品やブランドに対して好意を持ってもらう。そのために、消費者に人肌感を感じてもらえるコンテンツの配信や対話を心がけているという。そうした対話によってブランドに親近感を抱いてもらい、購入に結びつけている。

 冒頭で紹介したTwitterを活用したアクティブサポートも、オルビスと顧客の距離をより近づけることを狙って始めた。同社は、本社勤務の人間でもいつでも顧客の声を聞けるようにという経営方針の下、コールセンターを本社内に設置している。

 ただ、コールセンターはあくまで顧客からの連絡を待つ、受け身の姿勢が基本だ。ところが、ソーシャルメディアの利用が広がったことで、コールセンターに直接問い合わせをするのではなく、Twitter上に苦情や不満を投稿するようなケースが増えていると言われる。そこで、「当社で力を入れている顧客サポートを、ソーシャルメディアでも生かしていく」(大川氏)ためにアクティブサポートに乗り出した。

 ところが、アクティブサポートの開始に先立ってTwitter上のクチコミの内容を分析したところ、意外な結果が出た。全体の59%が製品やサービスに対して好意的な意見で、苦情や不満などの意見はわずか5%、残りはどちらでもない意見だったという。

 この結果を受けて、アクティブサポートの狙いを大きく変えた。苦情や不満を解決することは当然、優先する。その上で、「好意的な意見を投稿している人にも積極的に話しかけて、顧客の満足度を高める」(大川氏)。こうした運営方針の下、コールセンター業務を兼務する4人で、アクティブサポートに取り組んでいる。

社員は必ず名前を名乗ってツイート

 企業名や製品名といった、あらかじめ設定したキーワードを含むツイートを収集するツールでTwitter上の顧客の声を収集して対応する。顧客にTwitter上で話しかけるときには、必ず担当者が自分の名字を名乗ることを心がけている。こうした細かな点にも、人肌感を感じてもらうための工夫がある。

人肌感を演出するため、Twitterで顧客に話しかけるときには、必ず名前を名乗る

 例えば、オルビスのベージュ色のマニキュアがお気に入りで、職場の同僚にも人気というツイートを発見したときには、「突然失礼します。オルビスの斉藤と申します。~中略~、レディーベージュは指をキレイに見せてくれる優れ色です。オルビスのネイルは爪にやさしいのでいろいろな色もお試しいただければ幸いです」と話しかけた。すると、そこから「仕事がハードなのですぐにマニキュアが剥がれたりするので、どうすれば防げるのか?」という相談に発展した。オルビスは、この相談に対しても、対応策を返信している。製品を気に入っている人に、このような対応をすれば、よりブランドのファンになってもらえる可能性は高まるだろう。

 一方で、不満や苦情にもしっかりと対応する。例えば、配送トラブルで間違った商品が届いたというツイートに対しては、問い合わせ先の電話番号を記載した上で、正しいものを送り直しますのでご連絡くださいと伝え、不満の解決につなげた。通販限定商品にもかかわらず、店舗に見に行ってみようとツイートしたユーザーには、それが通販限定であることを伝えて、店舗に無駄足を運ばないようにした。

 Twitter上で対話をした場合、オルビスのアカウントをフォローしていない人でも、その25.7%が、その後オルビスのアカウントをフォローしてくれるという。現在のフォロワー数は約2万7000人にとどまっているが、地道な活動を通じて、徐々にファンは増えてきている。

 ファン数はソーシャルメディアの活用において、優先度の高いKPI(重要業績評価指標)ではある。ただ、ネット通販が会社全体の売り上げの約半分を占めるオルビスにとって、ファン数はあくまで中間指標にすぎない。今後は、ソーシャルメディアアカウントと連携してECサイトにログインできる機能を付加するなどして、会員の売り上げ増加に対するソーシャルメディアの貢献度を測定することにも挑む。「購買データを自社で持つ企業だからこそ、こうした指標が作れるはずだ」(大川氏)と今後の展望を語った。

●「第2回ソーシャル活用売上ランキングセミナー」報告
第1回 ローソンが進めるソーシャルマーケター育成戦略が明らかに
第2回 好意的なツイートに積極的に話しかけるオルビスのアクティブサポート
第3回 HIS、60もの観光地別Facebookページ開設し、参加型企画で「支援者」育成
第4回 ユーザーローカル、ソリッドインテリジェンスらが明かす、ソーシャル活用の「勝ちパターン」と「未来予測への応用」
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