「ローソンではすべての販促企画にソーシャルメディアを連携させることが求められている」
日経デジタルマーケティングが4月19日に都内で開催したイベント「ソーシャル激戦時代に売る秘訣 第2回ソーシャル活用売上ランキングセミナー」に登壇したローソン広告販促企画部の白井明子マネジャーはこう明かした。なお、本セミナーは本誌が年4回企画する読者無料セミナーの本年第1回として開催したものである。
ローソンは、本誌が2月に発表した「第2回ソーシャル活用売上ランキング」において、首位。ソーシャルメディアを活用した販促効果を高める売る秘訣は、その組織的な取り組みにあった。

詳しい報告に入る前に、ソーシャル活用売上ランキングについて説明しておこう。このランキングは、上場企業を中心にFacebookページのファン数、Twitterアカウントのフォロワー数を調査し、その上位200社・ブランドを対象に、Facebookファン数や話題にしている人の率、Twitterやmixiのフォロワー数、LINE公式アカウントの登録者数、YouTubeの再生回数などを偏差値化した「リーチスコア」、2万9000人超の消費者アンケートでソーシャルメディアをきっかけに、購入候補・購入・リピート購入といった購買行動に至った割合を算出し偏差値化した「消費行動スコア」の両スコアから総合スコアを導き出し、順位付けしたものである。
1位のローソンは現在27のソーシャルメディアを活用しており、登録者数は延べ860万人に上る。登録者数を大きく底上げしているのが、昨年から利用しているLINEだ。登録者数は、既に680万超。こうした規模の大きさを反映し、リーチスコアは全企業・ブランド中1位の99.2と高い数値となっている。
最近の動きとして白井氏は、仮想空間サービス「LINE Play」で3月から展開しているローソンの公式アカウントで、開始から2週間で登録者が60万人を超えたことを明かした。こうした取り組みを今後も進めることで、2013年度中にソーシャルメディア全体の登録者数を1000万人まで拡大する計画だ。
スピード感を持って企画を回す
ローソンはリーチスコアも高いが、消費行動スコアも高い。72.1と全企業・ブランド中3位につけている。通常、登録者数が増えれば、新商品にすぐ飛びつくような熱狂的なファンばかりではなく、企業やブランドに興味があるという程度の人も多く含まれるようになる。結果として、集まるファンの“濃度”は薄まり、売り上げに結びつけづらくなると考えられる。ところがローソンは、全企業・ブランド中最も高いリーチスコアを誇りながら、消費行動スコアも高い。なぜか。
1つは、ローソンがソーシャルメディアを活用するのは、来店者数の増加と購買を促進するためであり、売るためであると、目的が明確に意識されていることだ。もう1つは、販促施策にソーシャルメディアを効果的に取り込めるマーケターの育成に注力し、その成果が徐々に現れていることがある。これらが同社の高い消費行動スコアにつながったのだろう。
「(役職が)マネジャーになり、部下を育てることが評価軸となった」。白井氏は、マネジャー就任によって自身の役割が変わったことを、こう説明する。ローソンの白井氏と言えば、マーケターの間でも、ソーシャルメディアにいち早く取り組んで、成果を上げてきた存在として知られる。ただ、ローソンが展開する販促企画のすべてに白井氏が関わるのは、企画の数や実施するソーシャルメディアが拡大する中で、徐々に難しくなっていた。
そこで、昨年から白井氏は実行部隊からは外れ、部員の教育に力を注いでいる。「部員がそれぞれに企画を展開してくれる。私が意識しているのは、とにかくスピード感を持って企画が回るような環境づくり。成功事例ばかりではないが、スピーディーに企画を実施していけば、その中から爆発的なヒットが生まれる可能性を高められる」と白井氏は強調する。
恋愛相談企画で高いクーポン引換率
こうした考えの下、白井氏は、ソーシャルメディアを活用した販促施策に一緒に取り組んでいる広告販促企画部員の中から4人を講演で紹介した。各ソーシャルメディアのアカウントの運用や新規開設などを総括的に担当するA氏、「ウチカフェスイーツ」などのデザートブランドの販促を担当するB氏、「からあげクン」などのフライドフーズを担当するC氏、そしてインドネシア向けのローソンのFacebookページアカウントの運用など、国外向けの情報発信を主に担当するD氏である。

このうちデザート担当のB氏が考案したものの1つに、デザート商品「プレミアム 四角いプリンのケーキ」の販促企画がある。4月9日の発売日から10日ほど前に「四角いケーキの正体を当てよう!」とLINEの登録者に呼びかけた。Twitterを通じて回答してもらい、正解した人に抽選で1年分のプリペイドカードなどをプレゼントする企画だった。「コンビニの新商品は初日にどれだけ売れるかが、その後の売り上げに大きな影響を与える」(白井氏)。そのため、こうした発売前の販促施策が重要になる。この「四角いプリンのケーキ」はTwitterでの話題づくりなどが奏効し、商品の売れ行きは好調だという。
バレンタインデーのキャンペーンでもLINEを活用した。ただ、企画内容はまったく異なり、ローソンのLINEアカウントに恋愛相談をすると、自動返信でアドバイスとデザート商品のクーポンがもらえるというもの。この企画には21万人が参加し、そのうち8.6%が店舗でクーポンを利用したという。「アドバイスを求めるという能動的な人にクーポンを配ったことが、通常のクーポンよりも高い引き換え率につながった」と白井氏は分析している。
フライドフーズ担当のC氏は、4月27~28日に千葉県の「幕張メッセ」でドワンゴが開催するイベント「ニコニコ超会議2」との連動企画を担当。その1つが商品の共同開発だ。ローソンでは、イベント会場で販売する商品を、動画共有サイト「ニコニコ動画」のユーザーと共同で開発。フライドチキン商品「Lチキ」を薄焼きのパンでくるんだ「トルチキ」をニコニコ超会議2の会場で販売した。
こうしてローソンではソーシャルメディアマーケターを続々と生み出している。今後はソーシャルメディアだけではなく、後手に回っていたゲームなどのエンタテインメント業界や、携帯電話事業者との取り組みを強化。「O2O(オンラインtoオフライン)を成功させたい」(白井氏)と語って、講演を締めくくった。