NTTドコモは4月23日、同社の企業向けサービスの認知度向上や見込み客開拓などを狙ったタブレット向けアプリ「ビジどこ」の提供を開始した。営業スタッフがタブレットを営業現場に持ち込んでプレゼンをするようなケースは増えてきたが、タブレット向けアプリを見込み客など一般に配布してマーケティングに活用しようとする取り組みは珍しい。

NTTドコモはタブレット・アプリ「ビジどこ」で潜在法人客にリーチを広げようとしている

 スマートフォンを使ったモバイルグループウエアや、情報漏えいなどを防ぐ情報セキュリティ対策サービスといった、同社が提供する「ソリューション」、それらを導入した「企業事例」といった情報をアニメーションなどを多用することで分かりやすく伝える。

 開発を主導したNTTドコモ法人事業部の松木彰法人ビジネス戦略部長は、顧客ばかりでなく「当社の法人営業担当者や代理店の担当者ら数千人にも必携のツールとして、全員に使ってもらう方針」と言う。顧客と営業担当者の双方に最新の情報を伝え、理解を深めるプラットフォームとすることで、企業向け事業の拡大につなげたい考え。

 これまでは、企業向けサービスの内容や活用事例といった情報は紙のパンフレットにまとめ、営業担当者が客先に持参したり顧客に送付したりといった形で使っていた。顧客や社員への情報伝達手段としては一般的だが、こと企業向けでは、少なからぬ課題があったと松木氏は話す。

 「法人向けの場合、どうしても文字中心の説明になりがちで、お客様の興味を引くことが難しい。しっかりと見ていただいたり、理解していただいたりしていないのでは、と感じていた。作成してから時間が経つと、掲載している内容と提供サービスのラインアップにズレが生じることもある」

 その一方で、企業の顧客は一般消費者と違い、情報が新しければよいというわけでもない。松木氏は、「『2、3年前にもらったパンフレットに載っていた事例と、似たようなことをしたい』というように、紙ではもう配布していない古い情報を求められることも多い。ビジどこの開発により、当社が持っている情報を、過去のものを含めてデジタルデータとして一元管理。アプリを通じて提供できるようになった。これまでに見えていた課題の解決にもつながるはずだ」と期待を寄せる。

 ビジどこには、顧客の興味・関心をリアルタイムで把握できる機能も持たせた。開発に使ったアドビシステムズの「Digital Publishing Suite(DPS)」の機能を使うことで顧客がビジどこの、どのコンテンツを見たか、その総数はどれほどか、何が見られていないのかといったデータを収集できる。集めたデータを分析して顧客との商談に生かしたり、ビジどこに載せる情報を見直したりといったことを精緻に実施できるだろう。

 現在ビジどこが利用できるのは、Androidのタブレット端末のみ。この点について松木氏は、「(iPadを販売していない)ドコモとしては、やや異例な措置だが」と前置きしつつ「iPadなどでも使っていただけるよう、iOS版も作成している。なるべく早く『App Store』からもダウンロードできるよう準備を進めている」と話す。NTTドコモと取引がない見込み客を含めビジどこのユーザー数を増やすには、タブレット市場で大きなシェアを持つiPad向けアプリの用意が欠かせないという判断だ。

 iPad版の開発を進める背景には、アプリ作成に利用したDPSがAndroidのネイティブアプリ開発に対応していないこともある。その結果、「Android版は画面のスクロールなどの動きが少しばかりぎこちない」(松木氏)。ただ、アドビは今年夏から秋をメドにこの問題を解決する見込み。Android版の動作が改善した後に、ビジどこのダウンロード促進のキャンペーンなどを打って利用者を一気に増やし、見込み客獲得のツールとして本格活用したい意向だ。

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