季節の行事や旬の食材などに題を求め、毎月テーマを変えたキャンペーンを今年1年で12回も連打する──。自社Webサイトとソーシャルメディアの活用による企業ブランドと商品認知度の向上に力を注ぐヤマサ醤油(千葉県銚子市)が、その取り組みを強化している。

 現在は「ヤマサで日本の食文化を楽しもう!」と銘打った一連のキャンペーンの第4弾「お花見グランプリ2013」と、第5弾「MOTTAINAIリメイクレシピコンテスト」を同時開催している。テーマに沿った料理写真やレシピを消費者から募り、それをソーシャルメディアで拡散しようというものだ。

お花見グランプリ2013はしょうゆを使うお花見用レシピを募集

 独自レシピを考える“グルメ”な人たちはもちろん、普段はしょうゆの銘柄など気にしない人たちにもキャンペーンをきっかけにヤマサやその主力商品であるしょうゆ「鮮度の一滴」の情報に触れてもらうことが目的だ。

 ヤマサがデジタルマーケティングに注力する背景には、しょうゆ市場の厳しい現実がある。テレビCMを出せば商品が急に売れ始めるわけではない。販売数量を稼ぎたければ、消耗戦となるのを覚悟の上で、販促費をかけてスーパーなどに特売してもらうくらいしか方法がない。市場規模も右肩下がりが続き、200億円を割り込んだとみられる。

 家庭向けしょうゆなどのマーケティングを取り仕切る、営業本部マーケティング部の藤村功家庭用MD推進室長は言う。

 「(業界2位である)当社の規模では特売を打つにしても、何度も、続けざまに実施できるわけではない。もっとお金がかかるテレビCMではなおさらだ。しかしインターネットを活用したマーケティングなら話は別だ。企業規模ではなく、アイデアのユニークさやユーザーとの直接対話の多さ、密度などで勝負ができる」

 業界1位のキッコーマンが約30%(グループのヒゲタ醤油を含む)。対するヤマサは約10%。国内市場におけるシェアの差が、ヤマサをしてソーシャルメディア活用へと走らせる。

自社サイトとソーシャルの両輪

 一連のキャンペーンは、ヴァズ(東京都武蔵野市)の、料理に特化した写真共有スマートフォン用アプリ「SnapDish」、IMAGICA FTV(東京都港区)のレシピブログ投稿サービス「tabelatte」などと連携して実施している。2社のアプリ、サービスはFacebookやTwitterと連携する機能を備える。自社Webサイトのメルマガ会員と連携サービスを通じたソーシャルメディアへの拡散の両輪で、キャンペーンを活性化さたいという狙いは明確だ。有力な新興サービスといち早く手を組むことで、彼らの勢いをヤマサブランドに取り込みたいという期待もあるだろう。

 肝心の成果はどうか。藤村室長は「会員登録は合計1万人。1週間で写真などが500件前後投稿されている」と話す。実は一連のキャンペーンは藤村室長と少数のスタッフが担う。経営資源の限られる2番手企業でも、デジタルなマーケティングに知恵を絞れば、トップ企業と互せる可能性は広がる。