野村不動産は4月16日、新たなWebサイト「CoLaBo(コラボ)」を立ち上げた。個人のブログページのようなシンプルなトップページに個別の不動産会社のサイトの定番コンテンツである物件情報は見当たらない。代わりに「あそぶ」「たべる」「まなぶ」「くらす」といったカテゴリーに分けて、武蔵小杉駅などの東急東横線沿線の駅近くにある飲食店や学校、病院といった街の情報を子どもと一緒に楽しむことをポイントに紹介している。
記事の執筆やサイトの運営はデジタルマーケティング支援のエヌプラス(東京都渋谷区)に委託した。野村不動産との関係を示すのは、サイト下部に載せた社名入りロゴマークくらい。マンション販売会社のサイト“らしさ”を薄めたのは、CoLaBoで集めたいと考えているのが、「マンション購入についてあまり意識していない人たち」だからである。

多くのマンション販売会社は見込み客を集めて、自社の物件情報を発信し、成約に至らせる仕組みとして友の会を組織している。野村不動産のそれは「PROUD CLUB」という名称だ。
各社は友の会の会員獲得数でもしのぎを削る。会員を増やすのに最も有効だと言われているのは高額商品をプレゼントするキャンペーンである。賞品が豪華であれば入会者は急増するが、そうした会員の成約率は低い。分かっていながら他社との競争上、やめることは難しい。実は、CoLaBoも、PROUD CLUBの会員獲得が大きな目的なのだが、同時に、この閉塞した状況を変えることも目指している。
「CoLaBoの記事を見て『この店に行ってみたい』『この街に住んでみたい』と思っていただくことがまずは重要」。住宅事業本部営業企画部営業企画課の清水宣幸課長代理はそう話す。紹介されている街に住んでいる自分、そこでの生活を想像すれば、それを実現する手段の1つとしてマンション購入ということが視野に入る、というわけだ。
ワークショップ開催で会員獲得
そうした想像を現実的に感じてもらう仕組みとして、CoLaBoは月に1回程度、体験型ワークショップを無料で開催する。第1回は5月3日。ファッションデザイナーを講師とし、子どもたちが母親のためにコサージュを作る企画を実施する。場所は野村不動産が販売中のタワーマンション「プラウドタワー武蔵小杉」のモデルルームである。
ワークショップはCoLaBo自身の集客策であると同時に、見込み客を購入へと誘う仕組みとしても期待する。ワークショップの申し込みはPROUD CLUBへの登録が条件。参加時にはマンションがある武蔵小杉駅やモデルルームに足を運ぶため、それがごく自然に街やマンションへの関心を喚起する可能性はある。
「CoLaBoを通じて、PROUD CLUBの登録者を今年中に1000人増やしたい」(清水氏)。見込み客とすら呼べない段階の顧客にアプローチする、そんなCoLaBoの斬新さの価値は、現実的な目標をクリアした後にハッキリするだろう。
記事掲載当初、エヌプラスの本社所在地が誤っておりました。記事は修正済みです。[2013/4/16 13:45]