産業用センサーを開発・販売するオプテックス・エフエーは3月から、センサーの大量導入が期待できる企業に対して、業種などで内容を変えて個別に最適化したメールを作り営業担当者を通じて配信するマーケティング施策を始めた。

 「各工場の機器にどのセンサーを使うかを本社が一括管理するのではなく、工場に委ねている企業が多い」

 こう説明するのは、オプテックス・エフエーでデジタルマーケティングを手掛ける事業支援部事業支援課販売促進担当の石谷高宏氏だ。例えば、ある食品メーカーの茨城工場ではオプテックス・エフエーのセンサーを導入しているが、岐阜工場では導入していない。このようなことは少なくないという。つまり既存顧客の工場の中にも、この岐阜工場の例のように、新規の顧客となり得るところがあるのだ。

 そこをいかにして攻略するか。競合するのは、往々にしてオムロンやキーエンスといった大手メーカーだ。企業体力に劣るオプテックス・エフエーは、顧客との関係をより強める道を選んだ。具体的には各種のキャンペーンを告知する際などに販促担当の方で、相手先の工場ごとの導入状況や同業種の導入情報を調べ上げて、企業ごとに内容を変えたメールを作る。そのメールを、個人名を入れたタイトル(題名)や署名を付け、営業担当者のアドレスから送ることで、営業担当者個人からの提案メールという印象を強めている。以前は、送り先が違っても同一内容のメールを一斉配信するだけだった。

 先述の例で言えば、営業担当者を通じて、岐阜工場の担当者に、茨城工場の導入状況や、活用方法について記載したメールを送る。また、まだ導入した工場がない企業の場合には、同業種の導入事例を見つけ出してきて、同様に営業担当者からのメールとして配信している。ワン・トゥ・ワン型のメールながら、配信システムなどを新規に導入したわけではないところがカギだ。営業先、つまりメール配信数が限られる業種や事業であれば、ワン・トゥ・ワンを手作り、手作業で実現することもでき、その方が効果的な場合もある。

まず使ってもらうことが重要

オプテックス・エフエーは3月25日から直販サイトで大幅値下げに踏み切った

 ただ、これだけで、即座に他社から乗り換えてもらえるとは考えにくい。そこで、オプテックス・エフエーでは思い切った“二の矢”を放った。それが3月25日から直販サイトで始めた、製品販売価格の大幅な値下げである。戦略的に販売する製品85機種の販売価格を20%引きにした上で、さらに20%のポイントを還元する。実質4割引となる。直販サイトでの大幅な値引きは同社にとって初めてのことだ。

 オプテックス・エフエーではこれまで「高品質ではあるが低価格」というブランドメッセージを掲げてきた。ただ、「当社は業界で3~4番手に当たるため、まず使ってもらわなければ製品の良さが伝わらない」(石谷氏)。そこで、“お試し価格”の採用に踏み切った。まずお試し価格でセンサーを数台分、導入してもらい、使えると判断すれば、大量導入を検討してもらう。そんなシナリオを描いた。

 とはいえ、同社の製品を販売する販売代理店も多くいる。大幅な値下げは、そうした企業からの反発を招きかねない。「既存の販売代理店からクレームが来る可能性もある。ただ、割引価格で買える台数を制限するなど、お試しであることを伝えて理解をしていただく」と石谷氏。大量発注となる際には、そうした販売代理店などを通じて購入した方が、結果的には安価に導入できるという。あくまで販促の一環として販売代理店の理解を求める方針だ。 

 オプテックス・エフエーの2012年12月期の売上高は3.5%減の44億円、営業利益は40.4%減の2億7000万円と大幅減益となるなど、取り巻く環境は厳しい。デジタルマーケティングを活用した営業支援で、現状の打破を目指す。

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