本誌は、特集「これがデータサイエンティストだ-3年後、最も求められる職種、ECマーケター、O&Oディレクターにも注目」の企画に当たり、本誌読者を中心に「デジタルマーケティング職に求められる人材像」アンケートを実施した。その結果、今求められる専門スキルは「CRM(顧客関係管理)」(60.4%)がトップ、3年後に求められるスキルは「ビッグデータ分析(データサイエンティスト)」(67.9%)となった
 同アンケートにおいて、「デジタルマーケティングのスペシャリスト、マネージャーなどに今後求められるスキル、そうした人材の育成法などについてご意見があればお聞かせください」との問を投げかけたところ、自社のためにマーケティングを実施する企業、支援する立場の企業の様々な方から、実務経験などに基づいた熱意に溢れた意見が多数寄せられた。一部は誌面でも紹介したが、本記事ではその全意見を紹介する(一部誤字などを修正)。意見後のカッコは、(役職/所属企業の社員数/所属企業のマーケティングに対する立場)となる。

マスや店舗、マーケティング全般への知識、理解


●デジタルマーケティングだけではモノは動かない。レガシーメディアやO2Oも含めた統合的なプランを組まなければうまくいかない。既に海外では気づいたところからそういう動きになっている(デジタルマーケティング部門がマーケティング部門に統合されている)。(部長職/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●逆説的であるがデジタルマーケティングに捉われ過ぎない。つまり、ともすればデジタル馬鹿になりかねないが、「マーケティング」を理解していることが大前提。データの先には人が、消費者がいることを意外と忘れている人が多い。(担当役員、最高経営責任者/10~99人/自社のためにマーケティングを実施)

●どの流入チャネルにあといくら投資して、いくら売れるのかという会社からの問に対して、Onlineでの獲得以外に、Offlineでの獲得もConversionとしてみなしたいのだがその数値設定が難しい。その理由は、Big Pictureでの効果測定の正攻法がまだつかめてないため。そういったことが今後とは言わず、今すでに会社から期待される能力だと思っていたところです。USと模索中。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●デジタルだけなく、マーケティング全般への知識レベルが高く、実際に運用しながら、分析、PDCAをきちんと回せるスキル。(スタッフクラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●デジタルの領域にとらわれない広範な知識と説得力。(その他/100~499人/他社のマーケティングを支援する)

●マスも含めた、マーケティング全般の視座。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

実地での経験、実行力


●弊社はECサイトを運営しています。知識が必要な事は基礎条件ですが、ECサイトを実際に運営している人と学問だけの人では比べる事ができないくらい、不毛な議論だと実感しています。EC現場での実績しか育成方法はないと感じています。(担当役員、最高経営責任者/10~99人/自社のためにマーケティングを実施)

●実際にツールを扱った経験。(担当マネージャー、リーダークラス/5000人以上/自社のためにマーケティングを実施)

●情報に左右されず、自らの事業の目的を最大化できる手法を自分自身で考え組み立てる能力。代理店やコンサル会社に頼らなくても意思決定や業務遂行ができる。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●当事者意識を持ち、一人称で業務を遂行できる職場環境が必要。(担当役員、最高経営責任者/500~999人/他社のマーケティングを支援する)

●自身の生活で、ソーシャルメディア、WEB、スマートフォンを積極的に活用し、ユーザー目線でのマーケティングを計画、実践できるスキル。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

社内外との連携、他部門での経験

●ジョブローテーションである日突然そういう部署のマネージャーになってしまったら、自分は高度に専門知識が必要な部署の部門長になってしまったと自覚すること。
・とにかく専門知識のある部下を雇うか育てること。
・自らも最低限の勉強をすること。信用できるプロフェッショナルに読むべき本、話を聞くべき人について教えを乞うこと。
・社内・社外問わずプロフェッショナルを信用すること。プロフェッショナルの知見に敬意を払うこと。
・適正なアウトソーシングの必要性を認識すること。デジタルマーケティングの仕事にある日突然就いた人がまず「たのもー」と教えを乞いに行ける人
・スペシャリストについては、基本的なマーケティングの知識は不可欠。
あとは職種にもよるでしょうがどんな役職・職種でも最低限Google Analytics(GA)を使って基本的な分析は自力でできる程度の知識は必要でしょう。GAが使いこなせれば基本的な用語や数値の意味、広告の知識も入っているということでしょうから。あとは日々の業務の中でどうにかなる気がします。ただし、ビッグデータの解析となればマーケターではなくデータ解析の専門家が必要だと思います。これだけは専門職として育成の必要性を感じます。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●デジタルマーケティングの専門的知識ではなく、リスク管理能力、交渉力、プレゼン力が必要で、自由な発想ができることが必要な能力だと考える。そのための育成としては、ユニークな事業展開の発想とリスク想定ができるよう、さまざまな業務経験、他部署での経験が必須だと思います。(部長職/10~99人/自社のためにマーケティングを実施)

●外部からのプロフェッショナルの採用と業務委託からのマンパワーを併用しつつ、社内人材を育成する。実際にはなかなか進まない。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●基本的なデジタルマーケティングの知識と経験はもとより、いかにそうでないメンバーに分かりやすく説明し、実働につなげられるかのスキルが意外に重要。アイデアだけでなく、社内のさまざまなタイプ・立ち位置にいるスタッフをどう全体目標に近づけるために動いていただくかのコミュニケーションスキルは、デジタル領域だけやっていても身につかないので、従来型の業務チームでの修業も取り入れる。(部長職/100~499人/自社のためにマーケティングを実施)

●世代交代の一言につきます。マスを中心に考えている(考えてきた)マネージャーを変革させることは至難の業です。スキルや意識を持ったマネージャーに交代させるべき。変革できないマネージャーは自ら身を引くべきだと思います。(部長職/5000人以上/自社のためにマーケティングを実施)

●他社への出向制度(営業領域等では実績あり)が必要と感じています。(スタッフクラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

●実店舗における研修+デジタルな知識。(担当マネージャー、リーダークラス/100~499人/自社のためにマーケティングを実施)

全体像の設計、継続する仕組み作り


●継続的な広告運用や保有資産(顧客データ等)の運用による個々の効果の最大化はさることながら、それ以上にECにおいては単なる個々の手法運用だけではなく、新規からリピーター創出の全体像の設計と構築、その的確な運用が求められると考えます。重要なのは設計と構築です。(部長職/10~99人/自社のためにマーケティングを実施)

●広告などのワンショットの業務ではなく、継続する新たな「仕組み」を創出できる人材が強く求められる時代になってくると思います。(担当マネージャー、リーダークラス/100~499人/自社のためにマーケティングを実施)

新しいことへのチャレンジ


●KPIを明確にし、予算を与え、その中で自由に実施をさせる。ただし、新しいデジタルマーケティング手法に関しての結果を問わない。理由としては、デジタルマーケティングが最大の効果を発揮するのはいち早く取り組む事だと思うので、社内稟議や結果にとらわれていると良い手法を実践することができないため。(担当役員、最高経営責任者/1~9人/他社のマーケティングを支援する)

●KPIや合理化にのみこだわるのではなく、新しいことにチャレンジする、あるいは部下にチャレンジする機会を与える能力と、新しい技術や情報を得るための努力と人脈を有すること。(担当マネージャー、リーダークラス/500~999人/自社のためにマーケティングを実施)

●テクノロジーを使って自社のビジネスにどのような新しい価値を出せるのか、夢を描けて、さらに経営陣に説得できるスキル。クイックWinで目に見える成果をだし、成功スパイラルを社内外にアピールする実力。(担当マネージャー、リーダークラス/1000~4999人/自社のためにマーケティングを実施)

グローバル視点、情報収集能力

●国際マーケティング力、世界各地の情報収集力が必要だと思います。若手のエンジニアも大切にできる土壌も日本にはまだまだ構築できていないと感じています。日本の大学の競争力を知って、日本の大学に進学せずにアメリカの大学に活路を求めた人材も知っている。大学に世界で活躍している人の講義等を聴くことのできる仕組みが必要である。(その他/100~499人/自社のためにマーケティングを実施)

●デジタルマーケティングは米国の方が素早く進歩していると思いますので、米国の情報をいち早くキャッチし、それを内部に落とし込めるような人材を育てる必要があると思います。(スタッフクラス/100~499人/他社のマーケティングを支援する)

●進化の早い分野なので、常に最新動向を追って、吸収する能力。(担当マネージャー、リーダークラス/10~99人/他社のマーケティングを支援する)

(前編) これがデータサイエンティストだ
(中編) 生き残りが難しいスキル、脱SEM専門家へ全社で方針転換
(後編) 組織改革との両輪で専門スキルは生きる、サッポロビールの試み
(特別編) 「デジタルマーケティング職に求められる人材像」アンケートに寄せられたコメント紹介(読者の方以外も閲読可能)
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