企業のWebサイトの玄関口であるトップページは、サイトを訪れた人に意外な発見を与え、サービスや製品に興味を持ってもらうことも重要な役割の1つだ。ところが、ページの目立つ位置を独占していたキャンペーンに関する情報へのリンクがまったくクリックされていなかったとしたら…。

ヤマハはトップページのユーザビリティ改善を進める中、そこに気づいた。サイト訪問者に様々な情報に関心を持ってもらいサイト内を回遊してもらえる情報を提供できるよう、トップページに掲載する情報の運用方針を改めた。運用方針の刷新後は、トップページを訪れた直後にサイトから離脱する人の割合を示す直帰率が5.1ポイント低下する成果を得ている。
ヤマハのトップページには昔も今も、最上部のメニュー直下にブランドイメージを伝える大きな画像がある。そのすぐ下の目立つ位置に「ピックアップ」というコーナーがあり、小さめの画像に数行のコピーがついた、同社お薦めの情報へのリンクが4つ並ぶ。
アクセス数が多い製品を掲載
従来、このコーナーに載せる情報は営業部門から掲載の要望を募り、それを基に掲載スケジュールを組んで順次掲載していた。ただ、掲載の要望に上がってくるコンテンツはキャンペーンばかり。新製品や新サービスの掲載要望は少なかった。さらに、要望提案に積極的な担当者と、そうではない担当者で二極化してしまい掲載情報に偏りも見られた。しかも、よくよく分析してみれば、「キャンペーンに関する情報はほとんどクリックされていなかった」(国内営業統括部営業企画部WEB・CRM推進室の関口宏司課長代理)。
そこで昨年10月、トップページに掲載する情報を、戦略的に選んで載せるように運用方針を変えた。新しい運用方針では、掲載情報はすべて広報部とWEB・CRM推進室で決め、営業担当者からの提案は受けつけない。キャンペーン情報は一切掲載しないと定めた。営業部門から不満が上がる恐れもあったが、関口氏は論拠として以前掲載したキャンペーン情報がクリックされていないデータを示し納得してもらった。
また、「保育士向けピアノ講座」といった、対象者が絞られるような情報や、ヤマハと資本関係にある他社の製品の情報も「わざわざヤマハのサイトから探す人はいない」と考えて掲載しないことに決めた。
一方、掲載する情報については、主にAV(音響・映像)関連の新製品を中心に紹介することにした。他製品より比較的アクセス数が多いことが、分析結果として出ていたからだ。掲載タイミングは、製品の発売時期に合わせる。
また、PRと連動した情報提供も始めている。例えば、テレビ番組などで、自社の製品やサービスが紹介されるときには、放送日に合わせて対象製品やサービスのページへのリンクを掲載している。

運用方針の変更後は、ピックアップのコーナーに掲載したリンクは、高いときで以前の約5倍クリックされるようになった。平均しても1.7倍まで増えた。その結果、トップページの直帰率は運用方針の変更前後の3カ月で比較して5.1ポイント低下した。今後もこうした改善を続け、サイト来訪者に、より高い利便性の提供や新しい製品との出会いを創出していく。