そして2年の月日が流れ去った。東日本大震災の4時間前にソーシャルメディア公式アカウントを開設して第一声を発したホンダにとっても、あの日は忘れられない日であるとともに、社業を通じた被災地・復興支援に邁進するきっかけとなった

 震災翌日の3月12日、ホンダ車オーナー向けの交通情報サービス「インターナビ」の通行実績データをGoogleに提供し、それが「Googleマップ」上で公開された「通行実績情報マップ」は、被災地居住者と支援に向かう車両のスムーズな移動に大いに貢献し、評価された。

「逃げ地図」機能を追加した、ホンダのスマートフォン向けアプリ「インターナビ」

 ホンダの取り組みは震災直後だけにとどまらず今も続いている。昨春にはインターナビのスマホ向けアプリに、震度5弱以上の地震や津波の情報があった際、警告メッセージを配信する「防災・減災情報」を追加。今年3月末には、津波の際の避難地点までの距離や徒歩での所要時間、経路が一目で分かる「逃げ地図」を搭載する。そのほか、 災害による通行止めなどの情報をドライバーが投稿して共有できる新しいスマホアプリ「インターナビ リポート」も提供し、機能強化を図る。

 震災情報の拠点となったGoogleとYahoo!JAPANは、災害発生時に役立つポータルを目指し、情報の強化と発信体制の整備に努めている。グーグルは3月7日に「Google 災害情報」を開設。ヤフーも同日、南海トラフ巨大地震を想定した「津波被害想定マップ」を公開したほか、今夏からは「避難勧告・指示」の配信を開始する。

 一方で両社は、震災の記録にも熱心だ。グーグルは3月4日、福島第一原子力発電所から20km圏内の「警戒区域」を含む福島県双葉郡浪江町のストリートビューの撮影を始めた。数カ月後の公開を目指す。また、失われた思い出や風景をアーカイブするために2011年5月に開設した「未来へのキオク」には、5万5000件以上の写真や動画が集まっている。

 ヤフーは、収集したビッグデータから震災を振り返るレポートを公開している。震災翌日、宮城県からのページビュー(PV)が平時の約5分の1に落ち込んだことや、Yahoo!ニュースのPVが首都圏で急増した半面、ヤフオクやショッピングは激減したことなど、震災直後の混乱が数字から見て取れる。

 “デジタルな支援”はネット系企業だけにとどまらない。日比谷花壇(東京都港区)は、AR(拡張現実)技術を使って日本三大桜の1つである福島県の「三春滝桜」と記念写真が撮れる空間装飾サービスの提供を開始した。ユーザーが同社のスマホアプリ「ポップアップカメラ」をダウンロード・起動して、ARマーカーを設置した特設パネルに向けてカメラをかざすと、三春滝桜のARコンテンツが現れ、記念撮影することができる。撮影した写真に復興応援メッセージを添えて専用サイトに投稿すると、10円が三春滝桜の保存のために町役場に寄付される仕組みだ。原発事故の影響で観光客が大幅に減少していることを受け、滝桜を通じて福島県を応援する好企画だ。同社は商業・観光施設にパネルの設置を提案していく。

 日本コカ・コーラも4月以降、自動販売機と連動したARアプリの提供を始める。今年から導入した省エネ型「 ピークシフト自販機」に描かれた同社のキャラクター「ポーラーベア」がARマーカーになっており、スマホカメラを向けるとポーラーベアが「音が全然しない」といったボードを掲げて自販機の特徴を伝える。震災後の電力不足で節電が叫ばれた際、自販機がやり玉に挙がったことがあった。AR技術を通じて省エネ努力を伝えていく考えだ。

 多くの企業で、本業を通じた復興支援や低エネルギー社会の実現につながる取り組みが行われている。そこにデジタルな要素を絡めれば、利用者に伝わりやすくなり、風化の防止にも貢献できるはずだ。