「使いやすいすい、物件数No.1」──。不動産・住宅情報サイト「HOME'S」を運営するネクストは、年間で最もWebサイトの利用が多い2~3月の引っ越しシーズンに向けて、年明けから人気お笑いコンビのバナナマンが出演するテレビCMの放映を始めた。同社にとってテレビCMの放映は初めて。大がかりなプロモーションに打って出たのは、「あとは知名度を上げるのみ」という段階までサイトを強化したためだ。
HOME'Sの掲載物件数は、2012年12月平均で約420万件。3年前の2009年12月時点の142万件から3倍増と、大幅に伸ばして業界トップの水準にある。2011年1月から不動産事業者への課金体系を変更し、掲載数を急増させた結果である。
住宅情報サイトでは通常、事業者に対して物件の掲載数に応じた課金方式を採用している。その場合、事業者は自社への“客引き”のため成約につながりやすい好条件物件だけを載せ、掲載件数を抑えようとする傾向がある。
自社も利用者も利点がある仕組み
これでは物件を探すユーザーにとって利便性を損うし、自社の掲載収入も頭打ちになると考えたネクストは、課金体系を変更。問い合わせが発生したら物件価格・賃料の一定割合を課金する成果報酬型の課金方式を導入し、基本掲載料1万円のみで無制限で物件を載せられるようにした。この変更で、これまでなら掲載を見合わせていた物件も載せるケースが増え、掲載数が飛躍的に伸びることになった。
情報量が増えた際に重要になるのが、ユーザーと物件のマッチング精度の向上だ。そこで同社は、掲載数が急増した昨年、サイトリニューアルに取り組んだ。
刷新の柱となったのが、借りる(マンション・アパート・一戸建て)と、買う(新築マンション・中古マンション・新築一戸建て・中古一戸建て・土地)の横断検索だ。同社HOME'S事業本部マーケティング部長の久松洋祐氏は、「ユーザーのアクセス履歴を見ると、同じエリアの賃貸物件と中古物件を行き来しているケースが比較的多くみられた」という。
刷新前は、賃貸検索から離れて中古物件のページに飛び、改めてエリアや予算などを選択する必要があった。そこで、物件種別にチェックを入れると検索結果に賃貸も購入も混在して表示できるようにした。例えば月々支払額を12万円までと指定すると家賃12万円以下の賃貸物件のほか月々の支払い目安が12万円以下の中古物件も表示される(管理費や修繕積立金は除く)。
このほか、同一物件や棟の情報はまとめて表示するといったユーザビリティの向上にも取り組んだ。結果、2012年11月末にモーニングスターが公表した「Gomez不動産情報サイトランキング」で、HOME'SはSUUMOと並んで総合1位、「使いやすさ」部門でも1位を獲得。同12月には、ニールセンのネット視聴率調査「ネットビュー」のデータでHOME'Sの訪問者数が推計300万人弱(家庭・職場のパソコンからのアクセス)で業界トップに立つなど、成果が早々に表れている。
