ファッションEC(電子商取引)サイトの中国撤退が相次いでいる。ファッション専業ECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは、1月31日をもって、中国で展開していた自社ECモール「ZOZOTOWN CHINA」と、中国のECモール大手「天猫(ティエンマオ、旧タオバオモール)」上で展開していた店舗を閉鎖した。また、若年層向けファッションECの夢展望(大阪府池田市)も、昨年8月に天猫店を閉鎖して、中国から撤退していたことが本誌取材で分かった。

 採算性を度外視した価格設定、多額の資金を投じた広告展開が日常的な光景になっている中国EC市場において、ある程度の投資で事業を拡大するのは極めて難しい。昨年は楽天、ヤフーと大手ネット企業の中国撤退が相次いだ。その波がファッションECにも押し寄せている。

 「中国のネット利用者は低所得者層と富裕層で二極化しており、中間層が少ない」

 撤退の理由について、両社はこう口をそろえる。スタートトゥデイは中国に進出した当初、日本で仕入れた商品を中国でも販売していた。だが、これでは中国市場では価格競争力に乏しく、売れ行きは芳しくなかった。そこで、昨年5月にサイトを刷新すると同時に商品を現地で調達する事業モデルへと変更した。

スタートトゥデイは1月31日に中国で展開するECサイトをすべて閉鎖

 ところが、「富裕層は高級ブランドを買い、低所得者層はより安い商品を買う。現地調達で商品価格を下げたものの、それでも当社の商品の価格帯は中国市場では響きにくかった」(スタートトゥデイ)。こうしたことから一度サイトを閉鎖の上、今後の展開も含めて再検討することを決めた。

日本では安価でも中国では高価

 一方の夢展望は、国内においては比較的安価で流行に合った商品を展開することで、若年層の支持を集めてきた。その同社ですら、「中国においては価格面での優位性はなかった」と岡隆宏社長は振り返る。

 120円のセーター、280円のワンピース、500円のコート。天猫の女性ファッションカテゴリーを見てみれば、こんな価格の商品がずらりと並ぶ。夢展望の国内での販売価格は、ワンピースで2980円、コートは4980円と、中国の10倍ほど高い。「中国の企業は利益度外視でとにかく安く売る。同じ土俵に立つには条件が違いすぎる」と岡氏は言う。

 また、ECモールで売り上げを増やすにはモール内での広告出稿が重要な施策となる。だが競争が激しい分、広告枠の奪い合いも激化している。広告枠の需要と供給のバランスが取れておらず、「広告費用がとにかく高い上に、交渉の余地すらない」(岡氏)。夢展望は出稿経験もあるが、費用対効果は低かった。

 さらに、中国におけるファッションのトレンドの変化も夢展望を直撃した。同社が中国でネット通販を始めた2010年は、夢展望が強みとする、いわゆるギャルファッションの人気が高まっており、売れ行きも好調だったという。しかし、そのわずか1年後に韓国ブランドの人気が急上昇。情勢は大きく変わり、「“メード・イン・ジャパン”の洋服は売れなくなった」と岡氏は言う。

 かくして岡氏は、中国では投資に対する採算が合わないと判断して撤退を決めた。そこで浮いたヒトとカネを国内に投下して、日本での事業の拡大を目指す。

 例えば、2月中にはテレビショッピング大手のQVCジャパンと協力してテレビショッピング専門ブランド「ChapterOne」の販売を始める。従来、夢展望の顧客は若年層に偏っていたが、ChapterOneでは30代以上をターゲットとした商品作りで、QVCの番組の視聴者層の取り込みを狙う。当面はこうした施策の展開で、国内市場での顧客層拡大を進めながら、新たに進出する国を模索していく考えだ。