ソーシャルメディアと連携して友人や知人にプレゼントを贈るソーシャルギフトは、新たなギフト需要、消費喚起の手法として、TwitterやFacebookなどの普及とともに企業の注目を集めてきた。ただ、サービス始めたものの早々に撤退するネット企業や小売企業が相次ぐのも事実

 一方で、全国各地に店舗を持つコンビニエンスストアこそソーシャルギフトとの相性がいい、ギフトの連鎖は5段階先の友だちまで広がる…。そんな可能性がファミリーマートとマルチメディア端末「Famiポート」の企画・運用を手がけるファミマ・ドット・コム(東京都豊島区)の活用事例から見えてきた。

 ソーシャルメディアを活用していかに消費者を店舗に呼び込んだり、独自商品の認知度を高めたりするかは、実店舗を持つ流通・小売業のデジタルマーケティング施策における大きな課題だ。その解決手段の1つとして、ファミリーマートとファミマ・ドット・コムは昨年から、ソーシャルギフトサービスを試験的に活用している。

 両社は昨年12月、ソーシャルギフトサービス「giftee」を運営するギフティ(東京都渋谷区)などと協力し、Facebook経由でフライドチキンの新製品「スパイシーチキン」のクーポンをプレゼントするキャンペーンを実施した。「友人間のコミュニケーションに、企業の商品が自然に介在できた」と、ファミマ・ドット・コムのコンシューマー事業本部MMK事業開発部エキスパートの田代雷太氏は手応えを感じている。

予想外のギフト需要が発生

 ファミリーマートは2010年11月に、Famiポートを使ったクーポン発券サービス「Famiポートクーポン」を開始。商品と引き替えられえるクーポンをクーポン共同購入サイト「グルーポン」や「エキサイトクーポン」などで配布してきた。外部サイトに頼り切るのではなく自社のTwitterアカウントやFacebookページでも告知して、店舗集客や商品の販売促進に生かしてきた。

 ただ、こういったクーポンは、基本的には企業から消費者への一方通行だ。クーポンページにはFacebookやTwitterのボタンをつけてはいるが、SNS内で広く話題にしてもらうためには、つぶやいてくれた人に特典を追加してツイートを喚起するなど工夫も必要だった。

 その点、ソーシャルギフトなら企業からの一方通行ではなく消費者同士で贈りあえるし、もらった人がさらに別の友人に贈るといった拡散も期待できる。ただし、「ギフトを贈る習慣が海外にはあるが、日本人はそれほど贈らないのでは」との懸念も田代氏は抱いていた。

 そこで昨年8月、まずは試験的な活用から始めた。auのスマートフォン向けアプリ「giftee for auスマートパス」ユーザーに限定して、無料で、300円分のファミリーマートお買い物券(クーポン券)を友だちにプレゼントできるキャンペーンを実施した。

 その結果に田代氏は驚いた。「プレゼントした分とは別に、クーポン券を追加で購入したユーザーが半分ぐらいいた。正直、追加購入はないだろうと思っていた」。無料クーポンの引き替えと同時に売り上げが発生し、さらに日本ではなじまないと予想していたギフト需要が起きたことに気づいたのだ。例えばこんな利用法だった。

 「もらったgifteeで水分補給したぜーーーー!!!ありがとぅーーー!!!!」

 これは東京から鳥取までの自転車旅行をTwitterでリポートしていたある大学生のツイートだ。その大学生に複数のユーザーがgifteeのファミマクーポンを、TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)経由でプレゼントしていたのだ。

 「ソーシャルギフトなら、相手の住所を知らなくてもプレゼントを贈れる。応援のひとつの形としてギフトが贈られるという需要が実際にあった」(田代氏)。離れた知人、友人に手軽にギフトを贈れるのは、全国各地に数多くの店舗があるコンビニという業態ならではだろう。

ギフトは5段階先の友人まで波及

 クリスマスにチキンを贈るギフトを扱いたい――。

 昨年12月にはギフティからのそんな要望で、スパイシーチキン5万本分をプレゼントするFacebook連携のソーシャルギフト企画を実施した。ギフトを贈る習慣があまりない人でもクリスマスなら抵抗なくギフトを利用してもらえるだろうという狙いだ。チキンの費用はギフティが負担し、情報の波及や店頭集客への効果を測った。

 仕組みはこうだ。特設サイトからFacebookにログインし、gifteeアプリを承認してカードめくると、めくったカードに記載された数の友人に、Facebookのウォール経由でチキンの引換券をプレゼントできる。贈った人のウォールには、贈った人数やキャンペーンに関する告知画像が、贈られた人のウォールには、贈ってくれた人の名前やチキンの画像、受け取り用のURLが投稿される。贈った人・贈られた人だけでなく、その友人にまで情報が公開されることで、話題が広がる効果を狙った。

スパイシーチキンのソーシャルギフトは、送り手と受け手双方のFacebookのウォールにキャンペーンの告知画が表示された

 その狙いは当たり、チキンの画像が投稿されたウォールのコメント欄では、「これは何?」「ファミマにクーポンを持っていけばもらえるんだよ」「人にプレゼントはできるけど、自分にはもらえないので、誰か私にもください!」といったコメントが、贈った人、贈られた人、共通の友人などから書き込まれ、プレゼントを“ネタ”に、友人間のコミュニケーションが活発化した。

 「これまで、Facebookの企業ページやアプリなども利用してきたが、あくまで企業からの発信という形で、企業と受け手の間で完結してしまう部分があった。スパイシーチキンのギフトでは、企業からのプレゼントをまずユーザーが受け取り、友人に贈るという形にしたことで、企業と個人のやり取りではなく、友だち同士のやり取りに商品が入るという状況を作り出せた」と田代氏は振り返る。

 SNSの拡散力も目の当たりにした。「もらった人の半数以上が再度、誰かにあげるという行為をしていた」。贈った人からその友人、さらにその友人へと、「5段階ぐらいまで先に波及した」と田代氏はみる。ソーシャルギフトのサービスでは、贈れる商品や店舗が限られることで利用意欲を損ねることがあるが、店舗が全国にある同社だからこそ、誰にでも気軽に贈ることができて、話題が自然に広がったのだろう。

いまはスタート時の苦しみも…

 用意したチキン5万本分のクーポンは約10日間でなくなったが、消化ペースは予想より遅かったという。また、付与したクーポン総数のうち、実際に引き替えられた数は4~6割程度。自分で使えるクーポンをプレゼントした場合の8~9割よりかなり低い数字になった。

 その原因として田代氏は、クーポンを贈ったりもらったりする際に、Facebookでgifteeアプリを承認・ログインする手間がかるなど、利用のステップが煩雑だったことや、ソーシャルギフトそのものにユーザーが慣れていなかったことなどを挙げる。「回数をこなしていったり、定期的に実施したりすれば、仕組みそのものの認知も増えるだろうし、アプリを事前にインストールしているユーザーも増え、来店率も高まるはず。今は産みの苦しみだと思う」

 ネットを使ったマーケティングは、「普段の生活に近ければそれだけ、間違いがない(成功する)と思う」と田代氏。ソーシャルギフトは、現実社会で友人同士がちょっとしたプレゼントを贈りあうように、友人間のコミュニケーションに自然に商品を介在させることができ、消費者の商品へのエンゲージメントを高めることができるとみる。ファミマ・ドット・コムでは今後もソーシャルギフトやSNSを活用し、来店のきっかけ作りや売り上げアップにつなげていきたいという。

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