第1回 パソコン用メガネ「JINS PC」、ヒットの秘訣は売れる“空気”作り
第2回 ポッキーの日制定14年目でギネス記録、はなまるの期限切れクーポンキャンペーン
第3回 自民圧勝を分析し、売れる商品の肝をつかむ

 空気次第で勝敗が決する。あえてビジネスとは、かけ離れたところから見つめ直すと、その本質が見えてくる。最たるものが国政選挙を巡る空気だ。

 再びの政権交代をもたらした昨年12月の衆院選。事前のオンライン調査では、日本未来の党が一番人気になるといったお粗末なものも一部あったが、ネットユーザーの言動をつぶさに観察すると、2つのデータが自民党優勢のトレンドを示していた。

 1つは、ソーシャルメディア分析ツール「クチコミ係長」を提供するホットリンク(東京都千代田区)とデジタルマーケティングコンサルティング会社のルグラン(東京都渋谷区)が、主要政党や党首の評判を指標化した「永田町インデックス」。利用したのは、政党および党首に関する記述があるブログ記事のうち好意的な記事の割合、いわゆるポジティブ率だ。

 政党Aについて言及したブログ100件中ポジティブ記事が15件、ネガティブ記事が10件、どちらでもない記事が75件だった場合、ポジ・ネガの合計25件を母数としてポジティブ率(15÷25=60.0)を算出する。この値の7日間移動平均値を日次で求めて指標(インデックス)とした。50より上であるほど、その政党について書かれたブログは好意的であることを示す。

政党の評判を指標化した「永田町インデックス」の推移
政党の評判を指標化した「永田町インデックス」自民党の推移
政党の評判を指標化した「永田町インデックス」民主党の推移

クチコミも検索も多かった自民党

 この推移を追うと、日々のニュース報道が如実に反映されたことが分かる。大敗を喫したとはいえ、民主党に一貫してネガティブなブログ投稿が続いたわけではない。党代表選で野田佳彦前首相が再選を果たした当時のインデックスは58.1と高かった。だが当時の法相に暴力団関係者との交際問題、文科相が大学新設不認可などドタバタが続くとインデックスは急落、30台の低空飛行が続いた。野田氏が衆院解散に言及すると58.3まで回復したが、止まらぬ離党、野田氏の比例重複立候補、北朝鮮のミサイル発射時期を巡る官房長官の発言などが響き、下り坂で50を割った状態の中、投票日を迎えた。

 その点、インデックスが50未満になる日が少なかったのが自民党。9月7日から12月15日までの100日間で、50未満だった日は民主の71日に対し自民は25日。50からのマイナス幅も総じて小さく、ブログ件数が多い自民・民主・未来、そして日本維新の会の4党の中で唯一、投票前日のインデックス50超で本番を迎えることができた。

政党名検索数と比例得票数の相関 (2012年12月4日~12月15日)
政党名検索数と比例得票数の相関 (2012年12月4日~12月15日)

 もう1つのデータは、ヤフーが公表した「政党名検索数と比例得票数」の関係。政党名の検索量と比例得票数には非常に高い相関があることを示している。こちらは単純明快だ。

 この2つのデータから何が言えるだろうか?まず1つは、話題になることが重要ということ。クチコミ内容は、もちろんポジティブなものが多いに越したことはないが、それよりもまず話題にならければ始まらない。

政党別ブログ言及件数の比較 (2012年9月7日~12月12日)
政党別ブログ言及件数の比較 (2012年9月7日~12月12日)

 投票前日のインデックスが44.4と主要政党で最も低かったのは実は維新だった。太陽の党との合流や原発政策を巡る発言のブレなどで評判は下降線をたどった。一見すると不人気に映るが、それでも維新が比例で第2党に躍進したのは、ブログ件数が最も多かったことと無縁ではなかろう。つまり、例えば「関心層300万人で支持率8割」より、「関心層1000万人で支持率3割」の方が票は稼げるという理屈だ。

 もう1つ言えるのは、検索はアクションに直結すること。“自分ゴト”としての認識が検索行為を誘発し、そこで閲覧した内容に納得がいけば、投票や購入というコンバージョンに至る。自分ゴト化は人に伝えたくなるクチコミ欲を促進し、そのクチコミの増加は多くの人にその存在を認知・想起させるので、2つは相互に関係している。

 さて、あなたが会社で担当する商品やブランドは、ソーシャルメディア上で話題にしたくなる、あるいは検索したくなる要素があるだろうか。もし、売上高などに課題があるなら、こうした要素の不足が伸び悩みの理由かもしれない。

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