ローソンとヤフーは1月16日、食品・日用品の定期宅配事業「スマートキッチン」を1月17日に始めると発表した。運営するのは、ローソンが51%、ヤフーが49%を出資するスマートキッチン(東京都品川区)だ。共働き家庭の主婦などをターゲットに会員を集めるとしており、2015年度に会員数70万人、売上高1000億円を目指す。

記者発表会に登壇したスマートキッチンの加茂正治社長

 ローソンは昨年12月に、野菜を中心とした食品宅配サービスのらでぃっしゅぼーや(東京都新宿区)と共同出資で作った会社の食品ネットスーパー事業を、らでぃっしゅぼーやに事業譲渡したばかり。

 「らでぃっしゅぼーやの主力商品である有機野菜を使って料理をすることを、コンビニエンスストア事業のローソンに求める消費者は少なかった」。ローソンの常務執行役員でスマートキッチン社長でもある加茂正治氏は、事情譲渡の理由をこう明かす。そして、「スマートキッチンでは、この反省を生かしたサービスを作り上げた」と続けた。

コンビニに求める手軽さを提供

 スマートキッチンの特長は、簡単で手軽な買い物体験や商品だ。今年3月までに約500の献立をそろえ、「かんたん」「時短」といったカテゴリーで消費者に提案して、「毎日の献立を考える」という悩みの解消につなげたい考え。提案した献立に必要な食材は一括で購入することもできる。

 また、下ごしらえをした食材をレシピに沿って調理するだけで食卓に出せる料理キットも開発した。料理キットは、3月中旬までに40種類まで増やす。利用者が仕事などで時間のない日でも、家族に手軽に手料理を振る舞える。

 1月17日時点では3種類の「おためしセット」から販売を始める。2月1日から本格的に定期宅配を始め、3月中旬までに食品8800点と日用品などを1万4200点、計2万3000点を取りそろえる。配送は、神奈川県座間市に構えた専用の物流拠点から週1回、定期宅配する。届ける日時は指定可能だ。利用者が首都圏在住であれば送料が無料になる。

 集客面ではローソンの顧客への利用促進のほか、「Yahoo!JAPAN」のトップページからの誘導も含めて、今後検討を進めていく。ローソンがヤフーと組んだ理由として、その集客力に期待をかける部分も大きい。ただ、ヤフーとの共同作業は必ずしも順風満帆ではなさそうだ。

 スマートキッチンの会社設立は昨年6月20日のこと。「本来であれば、直後に会社設立を発表するはずだった」(関係者)。ところが、会社設立前日の6月19日に、ヤフーは「Yahoo!JAPAN」で付与してきた「Yahoo!ポイント」をカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」へ移行すると発表。ローソンにとっては寝耳に水だった。

 Tポイントは、ローソンが積極活用するポイントサービス「Ponta」と真正面からぶつかり合う存在だ。ローソンでは「それだけが理由ではない」としつつも、スマートキッチン設立の発表は、半年後の12月まで見送られることとなった。

 3月には、Yahoo!JAPANにおけるTポイントへの移行が完了する予定だ。一方、スマートキッチンには「Yahoo!JAPAN ID」で会員登録でき、決済サービス「Yahoo!ウォレット」も利用できるが、取得できるポイントはPontaのみ。本来、Yahoo!JAPAN ID利用者にとっては、Yahoo!ショッピングなどの利用でたまるTポイントが付与された方が望ましいだろう。

 「既存のチケットやDVDのEC(電子商取引)事業と双璧をなす存在にしたい」と意気込む加茂氏。だが、事業拡大には集客策や商品のラインアップの充実もさることながら、ローソンとヤフーが互いに信頼関係を築き、足並みをそろえて事業に取り組んでいくことが重要ではなかろうか。

■修正履歴
スマートキッチンの会社設立日を追記しました。これに関連してヤフーとCCCの提携発表の日付について、正しくは「会社設立直前の6月19日」でした。本文は修正済みです。[2013/1/17 2:10]
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