大手EC(電子商取引)間で繰り広げられた「全品送料無料」を巡る競争が転機を迎えている。各社が対応を進めた結果、送料無料に次ぐ新たなサービス差異化策が求められるようになってきた。

 年明け早々、アマゾンジャパンがひっそりと全品送料無料を事実上撤廃していたことに、関係者の関心が集まった。「あわせ買いプログラム」を昨年11月に導入し、文具や食品などで単価が数百円の商品の一部は、購入合計額が2500円以上にならないと発送しないようにした。「これまで取り扱いがなかった低価格商品を幅広く提供できる」(同社)と導入の狙いを説明する。全品送料無料という“名”より、低価格品充実という“実”を取ったといえる。

 同社は2010年春に全品無料配送を正式サービス化。これに家電量販店が翌11年に追随、昨年11月にはスタートトゥデイも踏み切るなど、送料無料は1つのトレンドとなった。ところが例えばスタートトゥデイが昨年12月の商品取扱高として前年同月比10.9%増を発表すると、翌日の株価は大きく下落。もはや送料無料化は競争優位を導かなくなりつつある。

 個人的見解と断りながら送料無料化に否定的な考えを示すのは楽天物流の馬弓良輔取締役だ。「配送センターで扱う数が増えれば、送料は下げられるがゼロになるわけではない。商品価格に上乗せしゼロに見せかけるだけ」。

 楽天は配送スピード向上に力を入れる。店舗の配送作業を代行する「楽天スーパーロジスティクス」を提供し、利用店舗は送料390円以下で、正午までの注文なら原則翌日までに商品を配送可能になる。さらに今夏、一部商品と地域を対象に即日配送を始める。2015年までに即日配送対象地域の人口カバー率を7割まで高める方針だ。

 アスクルがヤフーと共同運営するECサイト「LOHACO」も配送体制を強化する。既に全16万商品のうち4万商品を関東、関西圏の大半の地域へ即日配送する。7月には埼玉物流センター(仮称)を新設し対象商品を倍増。日用品など低価格品の扱い拡大と配送スピード向上により、リアル店舗との競争も一層激化しそうだ。

大手ECサイトの配送サービスを巡る主な動向

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