大丸松坂屋百貨店は、2012年のクリスマス商戦の集客策として、大丸と松坂屋を対象として、ミクシィと共同のO2O(オンラインtoオフライン)キャンペーンを実施した。ミクシィのクリスマス限定企画「mixi Xmas 2012」と店頭の展示物を連動させたキャンペーンで、来店を促す施策だ。

店頭の展示物を見ながら、スマートフォンなどでクイズに参加

 「非百貨店利用者層に、店頭へ足を運んでもらう」。大丸松坂屋の販売促進部デジタル販促担当の神谷彩子氏は、キャンペーン実施の狙いをこう語る。キャンペーン期間中には、全国で2万人以上が店舗を訪れる成果につながった。

 mixi利用者はF1層(20~34歳の女性)とM1層(20~34歳の男性)で62.1%を占める。これに10代を加えると78.8%に達する。まさに、大丸松坂屋としてもアプローチしたい層だ。とはいえ、単にmixi上に広告を掲載するだけでは来店は見込みにくい。mixi利用者に来店する動機づけをしたい。目をつけたのがmixi Xmasだった。

来店限定アイテムを特典として提供

 mixi Xmasは、利用するとアプリ上にベルのついた“靴下”を飾ることができる。このベルを鳴らしたり、友人の靴下についたベルを鳴らしたりして遊ぶこともできる。こうした利用によってポイントをためれば、プレゼントに応募できるようになる。靴下は、デジタルアイテムで着飾ることができ、友人間で見せ合うことができる。昨年は200万人以上が利用するなど、mixi利用者に人気のキャンペーンだ。

 「mixi Xmasに積極的に参加する人にとって、来店することでもらえる限定アイテムは来店の動機づけになるのでは」。こう考えた神谷氏は、mixi Xmasの靴下を飾れるデジタルアイテムを、来店の特典として提供する施策を思いつく。

 ヒントとなったのは、2011年にミクシィが独自で実施したmixi XmasとテレビCMを連動させた施策である。テレビCM放送中に、mixi Xmasのページにアクセスしていると、テレビCMの最後の場面で、サンタクロースが運んできたプレゼントの形を当てるクイズが表示される。そのクイズに正解すると、限定のデジタルアイテムがもらえるという内容だった。

 テレビCMを流した3日間で延べ56万人が参加した。この事例からも、限定のデジタルアイテムがキャンペーン参加の動機づけになる可能性が高いことが分かっていた。

 大丸松坂屋では、この施策を改良し、キャンペーン期間中に対象店舗の店頭にクイズの答えを展示するようにした。mixi Xmas利用者は、対象店舗を訪れて、店頭で答えを見ながら、mixi Xmasのキャンペーンページにアクセスして回答すると、限定アイテムがもらえる、という内容だ。

 クイズの答えは、若年層向けファッションフロアなどに展示した。ターゲット層が、キャンペーン参加後に、そのまま店舗を見てもらえるような導線を意識して設置したものだ。購入に結びつけるために、1000円以上の買い物をすれば、クイズキャンペーンとは別のデジタルアイテムとケータイストラップをもらえる、という特典を用意する販促策を実施した。

参加者を対象に再来店促進策

 キャンペーンの実施店は、大丸と松坂屋の13店舗。「全国にある大丸と松坂屋の大型店舗を対象にした」(神谷氏)。大丸松坂屋としては、オンラインのサービスと組んだO2O施策は初めてのこと。にもかかわらず、この規模で実施できたのは、「全国を対象としたサービスであるmixiと組むなら、こちらの店舗網も生かして全国で実施した方が良い」という、大丸松坂屋の山本良一社長からの進言があったからだという。

 その結果、キャンペーン期間中に2万人以上が来店して、うち9割が女性と、取り込みたい層の来店につながった。また、実際の購入にもつながるなど、「トライアルとしては十分な成果」(神谷氏)となった。

 神谷氏は当初、ネット上のキャンペーンというと1人で完結しているイメージがあったが、実際の来店者を見てみると、「友人同士で人が目立った」と振り返る。「mixi Xmasを友人同士で遊んで、リアルでも一緒に行くという動きにつながったのではないか」と神谷氏。

 もちろん、クイズにだけ参加して、購入には結びつかなかった人もいるだろう。そこで、クイズキャンペーン参加者を対象として、次回の来店につなげる施策の実施をミクシィと協議中だという。例えば、キャンペーン参加者限定でクーポンを提供する。そんな施策も考えられる。mixiというプラットフォームをベースに、CRM(顧客関係管理)を実施するようなイメージだ。大丸松坂屋では、ネットからの集客だけで終わることなく、複数回来店へとつなげる施策へと、O2Oを進化させていくことを狙っている。