「ゲーミフィケーションを活用したO2Oサービスを開始」「O2O型無料アプリの提供開始」──。
最近、O2Oをうたうソリューションサービスの提供にまつわる話題に事欠かない。関連サービスは増加の一途をたどっている。
そこで本誌は、増殖する国内のO2O関連サービスを、オンラインとオフラインの軸をベースに分けて、カテゴリーごとにまとめたマップを作成した。それが下図だ。

利用者との接点が比較的オンライン中心のサービスとしては、デジタルクーポンが取得できるサービスやクチコミサイトを配置した(上図の左側)。一方、比較的オフライン中心のサービスには、店舗でスマートフォンなどの端末をPOSレジや決済端末として利用できるサービスなどを配置している(同右側)。
メーカー向けO2Oサービスも
オンライン中心のサービスのうち、新たなカテゴリーとして、国内でもサービスが増えつつあるのが、メーカー向けO2Oサービスだ。7月に提供を始めたカタリナマーケティングジャパン(東京都港区)の「クーポンネットワーク」や、10月にソフトバンクテレコムとヤフーが共同で提供を始めた「ウルトラ集客」が、このカテゴリーに入る。O2Oが小売店のマーケティングだけでなく、メーカーのマーケティングにも活用できるようになっている。
いずれのサービスも、導入企業はネット上でクーポンと引き換えられるバーコードを提供する。消費者はそのバーコードをスマートフォンなどで読み取って、店頭で利用する。サンプル作成や値引きための原資は、メーカー側が負担する。
ソフトバンクテレコムは、5300万のデイリーユニークブラウザーを誇る「Yahoo! JAPAN」のメディア力と、法人向け携帯電話端末の販売で培った営業網を生かして、先行するカタリナマーケティングを追随する。
ソーシャルメディアと連携したギフトサービスも、最近登場したO2Oサービスだ。Bappy(東京都渋谷区)の「Bappy!」は、店舗で使えるギフトカードをFacebook上の友人に贈れるサービスである。成果報酬型の料金のため、ギフトカードを提供する店舗にとっては効率的な集客が期待できる。
スマートフォンの普及に合わせて今後活用が広がりそうなのが、位置連動チラシ・広告サービスだ。
例えば、O2Oマーケティング支援のアイリッジ(東京都渋谷区)が提供する、位置連動型プッシュ通知ツール「popinfo」を使えば、特定の地域に住むアプリ利用者だけに新店舗の開設案内を送ったり、店舗でのイベント開催直前に、店舗の周辺にいるアプリ利用者だけに告知したりといった施策を展開できる。
オフライン中心のサービスでは、「Tポイント」や「PONTA」などのポイントサービスに加え、オフラインでの行動に対する特典を付与することで来店につなげるサービスが増えつつある。
例えば、リクルートホールディングスのスマートフォンアプリ「ショプリエ」は、店舗にある特定の商品のバーコードをアプリで読み込めばポイントがたまり、一定数をためると商品券と引き換えられる。「無印良品」を展開する良品計画やアパレル製造販売のビームスなどが、マーケティングに採用している。
米国ではモバイル決済に注目
続いて、米国のO2Oサービスの潮流をShowcase Gig(東京都渋谷区)の新田剛史社長の協力を得て、8つの領域に分類した。新田氏は以前ミクシィに在籍し、「mixi」利用者の42万人を来店に結びつけた、ローソンのO2Oキャンペーンなどに携わった経験を持つ。

米国のO2Oサービスで、最も注目を集めているのが、モバイル端末を活用した決済サービスだ。この領域における最有力候補は、米ツイッターの共同創業者のジャック・ドーシー氏が退社後に始めた米スクエアだろう。
同社の製品「Square」は、スマートフォンなどのモバイル端末につなぐだけで、クレジットカードのリーダーになる機器だ。今年8月に米スターバックス コーヒーから2500万ドルの出資を受け、全米約7000店舗にSquareを導入した。再選を果たしたバラク・オバマ大統領が今回の大統領選で、このSquareと協力して政治献金アプリを開発するなど、政治の世界からも熱い視線を集める。
同社が開発で力を注ぐのが簡便な決済サービスだ。例えばコーヒー店に向かう途中で、事前にオーダーし、事前決済をSquareのアプリで済ませる。後は店で名前を告げれば、店頭の端末にその人の顔が表示されて商品を受け取るというものだ。クレジットカードもスマートフォンも店頭で出さずに済むサービスだ。10月には同社のマーケティング担当者が来日するなど日本上陸の可能性も探っている様子だ。
また、「店舗ナビゲーション」は、大規模店舗が多い米国ならではのサービスだ。ユーザーは事前にアプリに買い物リストを登録しておけば、近くにある売り場や事前に買い物リストに登録した商品情報に基づいてクーポン情報などを受け取ることができる。小売り企業は「aisle411」や「Digby」といったサービスを使って、こうした購買を促進するアプリを構築できる。独SAPは店舗ナビーションアプリを構築できる「SAP Precision Retailing」を日本でも提供を始めている。
店舗に設置したセンサーとカメラを使って顧客の動向を解析する、いわばネットにおけるアクセス解析のリアル版ともいえるサービスも登場している。少々大掛かりだが、店舗内の導線設計などの見直しに使えそうだ。
店員による接客をオンライン化して強力にするツールが「Signature」だ。このツールは、店員が持つスマートフォンに導入して使うもので、ツール上には店員それぞれが担当する顧客情報が表示される。顧客情報には顔写真や過去の購入履歴が登録されている。店員は顧客ごとの興味や関心に合わせて、入荷した商品情報などをSMS(ショートメッセージサービス)で送信できる。米百貨店チェーンのニーマン・マーカスが採用している。
販促、CRM、そして店舗や決済までを、デジタル対応やスマートフォン対応にすることで進化させる。それがO2Oという概念の本質だ。今後はメールによる一律的なクーポンの配信ではなく、スマートフォンを持つ人に寄り添い、その場の状況に応じた情報提供で売り上げを高める方向に進化することは間違いなさそうだ。