第1回 ジーユーが10月のチラシ廃止、位置連動クーポン配信に成功
第2回 ヨドバシ店頭の全商品にバーコード表示、スマホアプリから情報提供
第3回 店舗内誘導、事前決済…、日米で広がる新型O2O

 10月9日、ヨドバシの店舗がガラリと変わった。店頭にあるすべての商品に「バーコード、ご利用ください」という札がついたのだ。

 店舗で商品情報を仕入れて、家に帰ってネットで最安値のものを買う。「ショールーミング」と呼ばれる消費行動への対応策というのは、矮小化した見方だろう。ネット通販の排除ではなく、ヨドバシは店舗をデジタル化させることでネット通販を取り込みに入った。カギがこのバーコードだ。

 「楽天市場」や「Amazon.co.jp」をはじめとする、店舗を持たないネット通販企業は、利益が出るギリギリまで価格を下げ、全国から容易に“集客”して大量販売できる。「他店より1円でも安く」をキーワードに価格競争でしのぎを削ってきた家電量販も、ネット通販に“素手”で価格勝負に挑むのは分が悪い。

 そこでヨドバシカメラの藤沢和則副社長は決断した。

 「オンライン上の情報を店頭でも活用することで、売り方を変える。価格面だけではなく、売り方でお客さんに選んでもらうことができるはずだ」

 店舗とネット通販を比較すれば、店舗の弱点の1つが情報量の少なさだ。例えばデジタルカメラを購入する場合。ネット通販ならメーカーサイトや個人のブログ、価格比較サイトなどを簡単に行き来しながら、スペックに加えて作例も比較した上で購入を決められる。

 一方、店頭の強みは実際に商品を触れることだ。しかし撮影できるのは原則として店内のみ。旅行先などで風景を撮ることを目的としてカメラを探している人は、味気ない店舗内写真の撮影だけでは納得してくれないだろう。

スマホでオンラインと店舗の融合を図るヨドバシカメラ

 そこで、店頭に配備したバーコードの出番だ。今年8月には、バーコード読み取り機能を持つスマートフォンアプリ「ヨドバシ」を提供している。

 店頭に表示された商品バーコードをアプリで読み取ると、商品情報ページを閲覧できる。そのサイトから、主要なカメラメーカーの機種やレンズの作例を集めたサイト「フォト・ヨドバシ・ドット・コム」へと誘導する。店頭にいながらにして、様々な作例を見ることができるわけだ。

 他店への流出を防ぐため、アプリにはヨドバシのECサイトとの連携機能も持たせた。例えば、バーコードで読み取った商品をアプリのお気に入りに追加すれば、ヨドバシのECサイトのお気に入りリストにも追加される。

 店舗内で複数の商品を比較して迷った末に買わないこともあるだろう。そんなときでもバーコードを読み取ってお気に入りに追加しておけば、後日アプリのEC機能や、ヨドバシカメラのECサイトで購入できる。

 オンラインの情報量とオフラインでの実体験を融合することで、おもてなしの強化を目指す。アプリの利用者に気になるカメラを自由に比較してもらう。こうして納得感を持ってもらえれば、商品の購入につながる可能性も高まるだろう。

 ご想像の通り、店頭にバーコードを表示することに、異議を唱える社員も少なくなかった。バーコードを読み込むことで、複数のECサイトや店舗で価格比較できるようなスマートフォンアプリが第三者からも提供されている。バーコードを掲示すれば、ほかのネット通販サイトへの顧客流出を助長しかねないからだ。

 そうした社員の意見ももっともだ。しかし藤沢氏の独自の視点は、ある程度の説得力を持っている。

 「立ち読みお断り、という張り紙のある書店と、腰かける椅子が用意されていて、ゆっくり欲しい本を探せる書店があるとしましょう。どちらを消費者が選びます? それは後者でしょう」

 まさに、おもてなし。顧客視点で考えれば、価格も含め自在に比較したいはず。それが自社の評価につながるかは未知数だが、店舗の利便性が増すなら、まずやってみる。そう考え店頭でのバーコードの表示に踏み切った。

クチコミサイト連動のデジタルPOP

 「女性に人気のオンラインメディアがあり、そして月間17万人が来店する直営店を都内に持つ。それが当社の強み。この2つをシームレスにつなげるのです」

 自社のO2O戦略についてこう語るのは、コスメネクスト(東京都港区)の高松雄康社長だ。化粧品のクチコミサイト「@cosme」を運営するアイスタイルの子会社で、@cosmeと連携した化粧品の販売店「@cosme store」を都内に7店舗展開している。

 この販売店では、@cosmeで人気の商品を棚に並べている。そんな戦略から成り立った「O2O型店舗」といえる。

 化粧品の店舗といえば店員による接客がおもてなしだが、@cosme storeではネットの世界に集まったクチコミがおもてなし、と同社は捉えている。

 ネットと店舗の連携を強化し、顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めることを狙う施策の1つとして、店舗に大型デジタルサイネージの導入を進めている。画面上に@cosme上のクチコミ情報などを表示することで、オンラインとオフライン融合型の店頭販促(POP)を作り上げている。

「@cosme store」はデジタルサイネージをO2Oに活用

 デジタルサイネージの役割は、「@cosme上の情報をプッシュして、購入意欲を高めること」と高松氏。4000円と少々値が張る洗顔料を、お薦め商品としてデジタルサイネージに掲載したことがある。

 画面はタッチパネル式になっており、来店者は自分で操作してクチコミ情報を閲覧することができる。実際、こうした行動をしていく来店者が少なくないという。それが、デジタルサイネージ掲載前後の比較で、1カ月の売り上げ本数が1.5倍という数字に表れている。

 @cosmeと店舗のサイネージを連携した広告サービスも開発中だ。同社の来店者の9割は@cosme利用者である。だからネットの広告で、ある商品に興味を持ってもらい、店舗を訪れた時にも、それをサイネージの画面で広告展開することで、購入を促すといった施策が可能になる。サイネージの裏側は商品棚になっており、広告の商品をすぐ手に取れるのもメリットだ。こうしたサービスを提供していく計画だ。

 ここまで紹介した事例をご覧いただければ、効率的な集客にはエリアや購買履歴を使った個別対応、店舗での購買率の向上にはオンラインの情報と店舗の体験を生かしたおもてなしが、現在のO2Oの潮流となっていることがお分かりいただけたはずだ。クーポンの一律配信だけがO2Oではないのだ。

 特集連載の次回は、O2O関連サービスを提供する企業の動向を紹介していく。現在の潮流をさらに推し進めるようなサービスラインナップが整いつつある。自社のO2O戦略に合ったツールをお選びいただきたい。

第1回 ジーユーが10月のチラシ廃止、位置連動クーポン配信に成功
第2回 ヨドバシ店頭の全商品にバーコード表示、スマホアプリから情報提供
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