Webサービス事業を展開するリクルートライフスタイル(東京都千代田区)は11月20日、来春にも総合ネット通販サイト「ポンパレモール」を開設して、EC(電子商取引)モール事業に参入すると発表した。その旨を記したプレスリリースには一切記載されていない、出店料やクーポン・チケットの販売サイト「ポンパレ」との連携施策などを、本誌独自の情報として紹介しておきたい。
モールを開設する狙いは、ポイント制度を軸とした既存会員の活性化だ。リクルートライフスタイルは、年間約6000万人が利用する旅行情報サイト「じゃらんnet」、年間約4000万人が利用する飲食店情報サイト「ホットペッパーグルメ」などを運営しており、これらのサービスで相互に利用できるポイントを発行している。ただ、「利用者にとって気軽にポイントを利用できるサイトがなかった」(同社)。
ためたポイントを有効活用、それがモールの狙い
そこで衣料品、家電、グルメ、DVDやCDなどを販売する事業者を集めたECモールを自社で立ち上げて、これまでためたポイントを衣料品や家電の購入などに使えるようにする。これにより、既存会員の活性化を図る。
モールへの出店希望企業には、リクルートが持つ既存サービスと連携しながら顧客を獲得できる仕組みを用意する。これにより出店を促す。具体的には、出店店舗が見込み客を集められる仕組みとして、月間約100万枚のクーポンやチケットを販売するポンパレと連携したサービスを提供する予定だ。
例えばモールへの出店事業者が、ポンパレで特定の商品が半額になるクーポンを提供する。クーポン購入者は、出店事業者にも会員登録することになるから、そこで獲得した会員に対しメールマガジンを送って、また別の商品の購入を促すことができる。メールの配信手数料は無料だ。
後発のため、先行する大手モールより出店費用を安く設定した。例えば基本プランで、ある大手モールと比較してみよう。月額費用については大手モールよりも約2万円安い2万9800円に設定した。システム利用料も売り上げの2.5%で、前出の大手モールの中央値より0.5ポイント安い。なお、登録できる商品数は2万点、契約期間は1年となっており、いずれも大手モールと同等だ。
より多くの商品を取り扱いたい企業向けには、登録できる商品が5万点で月額5万9800円のプランを用意している。システム利用料や契約期間は基本プランと同じ。先行他社と同様に、短期出店企業向けのプランも用意した。契約期間は6カ月で、月額費用3万9800円、システム利用料は売り上げの3.5~4.5%、登録できる商品数は5000点とした。
ZOZOTOWNには追随できず?
ただ、誤算も生じている。スタートトゥデイの施策に端を発したファッション分野でのポイント付与率引き上げ合戦の余波だ。リクルートライフスタイルが出店者への説明資料として用意している「ポンパレモール出店ガイドブック」には、こうある。
「ネット通販業界において最高水準3%のポイントを振り出すことで、ポンパレモールユーザーの購買活動を活性化させ、新たな売上拡大の場をめざします」
しかし、スタートトゥデイはファッション専業サイト「ZOZOTOWN」のてこ入れを目指し、11月1日からポイント還元率を購入金額の10%まで引き上げている。従来の10倍に相当する割合だ。すると11月8日には、アマゾンジャパンがこれに追随し、衣料品の購入時に付与するポイントを同率まで引き上げた。
結果として、リクルートが掲げる3%という還元率は、環境変化が目まぐるしいファッション分野においては、もはや優位とは言いがたいものになってしまった。ちなみにリクルートライフスタイルでは、現時点でポイントをスタートトゥデイやアマゾンジャパンと同率まで引き上げる予定はないとしている。