企業のTwitter、Facebookページ上に独自キャラクターを登場させて、企業対個人ではなく個人同士という形で円滑にコミュニケーションを進める動きが広がる。例えばローソンの「あきこちゃん」がよく知られるところ。コンビニエンスストア業界ではほかにも、ファミリーマートに「宣伝部 日々野優」、サークルKサンクスには「コンビニ研究室 准教授の“はる”」というキャラクターがいるのをご存じだろうか。

 そして、ミニストップには「ミミップくん」がいる。競争が激しい同業界でも人気上昇中の“ゆるキャラ”だ。登場当初は社内から「イラストがかわいくない」との声もあったそうだが、着ぐるみが登場し“実物”が写真で登場すると人気を博し、ソーシャルメディアから飛び出し、同社の社内勉強会から各店舗へと活躍の場を広げている。

うさぎの「ミミップくん」が商品紹介

ミニストップのFacebookページ
ミニストップのFacebookページ

 ミミップくんは今年3月27日、「広報担当ミニストップ公式キャラクター」として誕生した。公式プロフィールによると、夢は「世界中の人々にひとやすみしてほしい」、性格は「ゆるゆる、のんびり過ごすのが大好き」、特徴「すぐ座りたがる」、趣味「ひとやすみ」といった設定だ。

 SNS・プロモーション部SNS・ニュービジネスチームの鈴木昭氏は、ミミップくん登場の背景をこう説明する。

 「プロモーション用キャラクターを作りたいと考えていました。お客さまと緩やかなコミュニケーションをしたいというソーシャルメディアの目標と、ミニストップの社名の由来である『近くの街角にあり、ちょっと立ち寄れるところ』からほっと一休みしてほしいという店舗の目標の2つから発想し、何か際立つものをと考えたのです」

 子供を描いたキャラクターなど3つの候補を作り、その中からミミップくんを選んだ。うさぎの特徴であるミミの語感が「ミニストップ」「一休み」と相性がいいという。選出の理由も少し緩めだ…。

 他のキャラクター同様に、ミミップくんも新商品やキャンペーン紹介をしていく。普通のキャンペーン紹介も「おはミミ~☆彡 今日から5日間はWAONがお得だよ♪」と書くだけで、雰囲気がやわらぐ。「ひるミミ~☆」「ゆうミミ~☆彡」といったあいさつや、文末の「ひとやすミミ~♪」が口癖だ。SNS・ニュービジネスチーム7人のうち2人を中心にFacebookなど7種のソーシャルメディアで情報発信しており、「文字数制限のないFacebookでもミミップくんだから多くは話せないと思ってもらえ、運用負担が軽減するのも実はメリット」と鈴木氏は明かす。

 投稿ネタがない日には、公園や浜辺で一休みするミミップくんの写真を短いメッセージとともに投稿する。それだけでも反響は大きく、エンゲージメント向上に大きく貢献する。

 同社の阿部信行社長もミミップくんには期待をかける。5月にはミミップくんと阿部社長が「ひとやすみダンス」をするYouTube動画を披露(現在は視聴できない)。この動画と合わせて、新入社員を前にミニストップの戦略商品であるコーヒーを5種類の中から当てるブラインドテストに挑む阿部社長の動画などを紹介したページを、まとめサイトの「NAVERまとめ」上の広告ページとして公開したところ、ページビュー(PV)は約28万に達した。「(運営元の)NHN Japanからも想定3万~4万と言われていたので、大きな成功」と鈴木氏。ミミップくんとともにソーシャルメディア活用に熱心で、顧客が喜ぶことへのアンテナが高いという阿部社長のキャラクターも光ったと言えようか。

 人気をさらに高めたのが、熊本県のゆるキャラ「くまモン」とのコラボだ。8月末、ミニストップでの九州フェアをきっかけに実現。このフェアを紹介したコラボ動画の再生回数は11万回を超えた。その続編や、11月には新たに「豆しば」とのコラボ動画を配信しており、ミニストップのゆるキャラとしてのさらなる認知度向上を図る。

 「ミミップくんが登場するまでの8カ月間で得たFacebookページのファン数は1万5000人弱だったが、登場後の7カ月で7万5000人増えて9万人に。各投稿へのいいね!は平均100件程度から450件程度へ増えた。こうした動きをビジネスにどう結びつけるかが議題になっている」と鈴木氏は言う。

 同社はFacebook、Twitter、mixi、Google+、GREE、YouTube、ニコニコ動画の7つに公式アカウントを持つ。FacebookとTwitterを中心に活用し、その他は週1回、動画サイトは月1回以上の更新が目安だ。6月にはカルビーと共同開発するポテトチップスの風味のアイデアをTwitterで募集。数千の案から「バーニャカウダ味」を選出して11月20日に発売した。店舗集客について、ミニストップは140万人近い会員がいる「お得なケータイサイト」にその役割を任せ、ソーシャルメディアは今のところ、同サイトの会員を増やす役割と分担させている。

店舗で愛されるゆるキャラへ

 ミミップくんの人気は、ソーシャルメディアという枠を越えて、店舗に広がりつつある。「先日の水曜日、お店に行ったらミミップくんがおにぎりを持っている写真が大型パネルになって飾られているんですよ。月曜の夕方にFacebookに投稿したばかりの写真がですよ」。鈴木氏は興奮気味にこう語り、自身のスマートフォンで撮った写真を見せてくれた。

 最近は、店舗の経営者やアルバイトスタッフが愛着を持ち、自主的に店頭販促(POP)広告を作ってくれるという。人気のきっかけは9月に実施した加盟店が集まる商品売り場勉強会だった。登場したミミップくんを店舗経営者らが取り囲むほど関心を集めた。新規店舗のオープン時にはミミップくんを派遣したり、キャンペーンの応募シートにイラストで登場したり、リアルな販促の場でも存在感を高めている。

「ミミップくん」はミニストップのPR担当として、同社のFacebookや店舗で活躍。「ひとやすみ」が特徴のゆるキャラで、右上の寝転んでいる写真には660、右下の転んだ写真には1000を超えるいいね!が寄せられた
「ミミップくん」はミニストップのPR担当として、同社のFacebookや店舗で活躍。「ひとやすみ」が特徴のゆるキャラで、右上の寝転んでいる写真には660、右下の転んだ写真には1000を超えるいいね!が寄せられた

 また、ミニストップでは各店舗独自のFacebookページの開設を推奨しており、ミミップくん効果で各店の関心が高まっているという。8月末に始めた取り組みで、活用ガイドラインを定めて事前に店舗の担当者のFacebook上での活動を1カ月チェックして適性を見極める念の入れようだ。

 ソーシャルメディアから登場したミミップくんは、ネット上のファンとの関係深化だけでなく、本部と店舗の関係強化にも貢献している。成功要因の1つは「ほっとひとやすみ」という会社の方向性と一致したキャラクター設定にあるだろう。例えばコーヒーなどの新商品やキャンペーンは、普段のミミップくんの活動に沿って自然に伝えられる。「ミミップくんの目標『世界中の人々にひとやすみしてほしい』の実現にも期待がかかる」と堅く記事を締めくくったら、「ひとやすミミ~♪」と返されてしまうだろうか。

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