表現力が豊かなパソコンサイトでブランディング、モバイルサイトはクーポン配信による店頭集客…。自社サイト活用法の1つの定石だが、モスフードサービスのモバイル活用はひと味違う。

 「モバイルこそ、当社のスローガン『身近。ワクワク。笑顔。』を伝えやすいツール。クーポン配信だけでなく、会員限定のコンテンツなどでモスフードへの親近感醸成を目指しています」

 同社マーケティング室販売促進グループの横山実生氏の説明こそが、同社のモバイル活用方針のすべてを表す。モバイルはいつも手元にあり、パソコンより気軽に使える。だからこそ利用頻度が高まればブランディングに最適と同社は考える。

モスバーガーのスマートフォンサイト
モスバーガーのスマートフォンサイト

 モスフードはスマートフォンサイトを今年3月に開設した。ウェブ構築のアイ・エム・ジェイ(東京都目黒区)に発注。以前からあった従来型携帯電話用サイトやスマートフォンアプリとコンテンツはほぼ同様ながら、インターフェースに遊び心を盛り込んだ。例えば、同社のキャラクター「モッさん」がページ上を歩き回り、端末を傾けて横長画面にすると“隠れモッさん”が現れるといった具合だ。

 コンテンツでは、モバイル限定で月1回配信する、いやし系4コマ漫画が人気という。「ゆるくいやされるモスフードの雰囲気を知ってもらい、登場する野菜に親近感を寄せてもらいたい」とは、販売促進グループの江幡美穂子氏。そのほかにも壁紙、ゲームなどのコンテンツをそろえる。そもそも会員登録をしてくれる人は、モスフードと何らかの接点を持つ。モバイルを通してモスフードをもっと好きになってもらい、月1回来店する人は月2回へと来店頻度を上げることを目指す。

 値引きクーポンも配信するが、通常は年8回実施するキャンペーンの期間だけ。今年は創立40周年を記念したクーポンも年4回配信したが、あとは個別店舗の施策に任せている。それでもマクドナルドなどのように毎週という頻度ではない。「ここ数年、折り込みチラシを使ったクーポンも年1回程度。値引きでお客様を呼び込むといった戦略はとらない」(販売促進グループリーダーの真鍋貴裕氏)というのが全社方針だ。

登録のコンバージョン率が1.5倍

 現在のモバイルサイトの利用端末は、スマートフォンが4割、従来型携帯電話が6割で、その比率が逆転する日も近そうだ。スマートフォンが本格普及する来年の「ジャンプのため、今はしゃがんでいる状態」(真鍋氏)。利用動向を注視して改善を重ねる。例えば、9月末には会員登録のフローを見直した。登録の最初には従来型携帯電話用サイト同様に空メール送信のステップを加えた。入力する登録項目は3分の2程度に減らした。その結果、新規会員の獲得率は1.5倍に向上した。

 真鍋氏は、「モスフードならではの差異化でとがらせたい。例えばクーポンにもゲーム性を持たせることはできるだろう」と来年への展望を語る。味への熱心なファンも多いとされるモスバーガーだが、全店売上高は2011年度に続き2012年度も上半期(4~9月)までは減少が続く。スマートフォンの普及という追い風で、逆境を乗り切ることができるだろうか。