いよいよ12月。2014年春に入社する大学3年生の“就活”、企業にとっては新卒採用活動がスタートする。

 ネット求人広告大手のエン・ジャパンが今年9月、2014年卒業予定の学生を対象に実施した調査では、ソーシャルメディアのアカウント保有率は実に87.5%に上り、就活に利用する学生は半数近くを占める。利用していない学生も6割が「今後利用したいと思う」と回答している。ソーシャルメディアを使った就活、いわゆる「ソー活」は、ユーキャンと自由国民社が主催する2012年の「新語・流行語大賞」の候補50語にノミネートされるほどのムーブメントとなっている。

就活支援の情報を提供し引き込む

 企業としては、同じ土俵で発信力を高めて学生の期待に応え、同業他社にも差をつけたいところ。新卒採用専用のFacebookページを開設して「ソーシャルリクルーティング」に乗り出す企業は、昨年度は約1400社ほどだったが、今年は一段と増えそうだ。

 企業がソーシャルリクルーティングに期待するのが、短期決戦における訴求力だ。昨年、採用選考に関する倫理憲章の見直しによって採用活動の解禁日が10月から12月に後ろ倒しになった。そのため企業は短くなった学生の企業探し・研究の時間に食い込んで好印象を残したい。そこで、社内の様子や雰囲気など採用と直結しない情報を解禁日以前から伝えることで、学生との距離を縮めて親近感を持ってもらう。こうした内容は採用専用サイトよりもSNS向きのコンテンツである。

 とはいえ、開設さえすれば学生から注目が集まるわけではない。マーケティング目的のFacebookページが活性化している企業もあれば残念な状態の企業もあるのと同様、人事部主導の採用Facebookも運用のやり方次第だ。

 では、学生からの評価が高い採用向けFacebookページを見てみよう。

 前年(2011年)12月の解禁日の時点で最もファン数を集めていたのは日本生命保険だった。当時ファン数6000人に迫る勢いで、ピーク時には7000人を超えた。同社は金融業界で先陣を切って2011年6月にFacebookページを開設。リテール、ホールセール、証券投資、不動産など各部門で働く若手社員の姿を紹介する仕事紹介ムービーや、採用電子パンフレットをFacebook限定で公開したほか、「就活準備にいわゆる“ハウツー本”はあまりおススメできない」として、採用担当者がお薦め本を紹介するなど、一方的なインターン情報やサイト更新のお知らせとは異なる、ひと手間かけた内容で学生を引きつけた。なおこの時期調査した「日経就職ナビ」の就職希望企業ランキングで、同社は1位になっている。

日本生命は採用Facebookの効果もあり就職人気ランキング1位に

 運営方針としては、「特に解禁前は、自社のアピールよりも、何から手をつけたらよいか迷っている学生に向けて就活全般の準備になりうる情報やメッセージを提供することを心がけた」(同社人材開発室)という。

 この姿勢が、同社および金融業界を必ずしも第一志望で考えていなかった学生にも響いたようだ。ファン登録した学生が記事にいいね!やシェアをすれば、その学生の友だちの目にとまり、ファン登録を促すことになる。登録してもらえれば、同社がFacebook上で告知するセミナー情報が届くため、集客に寄与することになった。

Ustreamセミナーに5000人

 就職・転職を業とするリクルートを除き、2013年採用のFacebookページで最もファン数を集めたのはニトリだった。2012年入社組の内定式を行った2011年10月3日にFacebookページを開設し、Facebook限定申し込みの「就活必勝イベント」を開催したり、自社会議室からUstreamで「オンライン就活準備セミナー」を生中継したりといった挑戦的な試みが、ピーク時1万3000人超という学生からの支持につながった。

 同社人材採用部東日本採用マネジャーの鈴木敏明氏は言う。

 「学生がセミナーに参加できるのは1日2~3社が限度。ならば夜8時から動画中継すれば、見てもらいやすい。学生にはニトリが求める人材である『3C主義(Change、Challenge、Competition)』を伝えたかった。IT企業でもなく人事にソーシャルに詳しい人がいるわけでもない中、ネット中継やFacebookページ運営に取り組んだのも3Cの一環だ」

 会場コストをかけずに、計5000人が視聴するセミナーを実施できたことは大きな収穫と言えそうだ。またこうした現場感覚をリアルに伝えることは、入社3年で3割が辞める企業と学生のミスマッチの解消につながるだろう。

 一方で“誤算”もあった。Facebookページ名を同社は「ニトリ 新卒採用2013」としていたが、ファン数が200人を超えると原則変更できなくなる。そのため同社は2014年採用向けに新たなFacebookページを立ち上げた。

 就活学生は毎年入れ替わるため、ファン登録を外していない残存者はターゲット層ではない。従って引き継げないことの実害はほぼないが、1万人からファンを集めながら次年度はゼロからのスタートになってしまう。検索エンジンでは、「ニトリ 採用 Facebook」と検索すると、2013年版が1位表示される(11月13日時点)。新ページが逆転するのは時間がかかりそうだ。

 同社が新たに開設したページ名は「ニトリ 新卒採用」で年号は排除した。今後は継続利用していく予定だ。ちなみに採用とは異なるが、北海道日本ハムファイターズのFacebookページも、2011年1月に開設して2シーズンを終えたが、ページ名は登録時につけた「【試験運用】北海道日本ハムファイターズ」を冠している。

 人気企業は一瞬でファン数200人を超えるため、これから開設する企業は、「継続利用」「ページ名変更不可」を前提に“命名”する必要がある。

ニトリは採用Facebookの積極活用で学生に高評価

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