第1回 普及率、女性比率、HD画面…、ほんの1年強でスマホの技術とユーザーが一変
第2回 スマホサイトの役割を見直す、みずほ銀行と楽天オークション
第3回 スマホサイトのデザインはシンプル追求へ、ソフトバンクモバイル、ディズニーの改善

 スマートフォンサイトの役割、目的は従来通りでも、運営経験を生かしてユーザー体験の向上を目指す企業も増えている。ソフトバンクモバイルもその一社だ。

スマホのマイページ、顧客満足度を10%向上

 料金体系やサービス内容が複雑になる傾向のある携帯電話業界。ソフトバンクモバイルも企業買収や競合対抗でサービス内容が頻繁に変わる。戸惑いかねない顧客をサポートして、料金確認、オプションサービスの申し込み受け付け、ポイント確認などの機能を提供する会員サイト「My SoftBank」は、「携帯電話の販売こそしないが24時間開いている店舗」(マーケティング本部Webコミュニケーション部高橋宏祐部長)として重要な顧客接点だ。

ソフトバンクモバイルは、よく使われるメニューを上部に配置したことで、顧客満足度は10%向上

 PV(ページビュー)は公式サイトとほぼ同等で、合計すれば月間数億PV規模という。そして、iPhoneから利用する人は、パソコン利用者の3倍に上る。スマートフォンにはiPhone発売当時から対応しており、「何らかの疑問や不満があるから見ることも多い」(高橋部長)という会員サイトの改善には心血を注ぐ。

 同社が、サイト改善の判断基準とするのは顧客の満足度調査だ。「こうした調査は一般的に半年、あるいは3カ月に1回の頻度だと思いますが、当社はそれ以上の頻度で実施しています」(Webコミュニケーション部Web企画課の岩本嘉子課長)。満足度調査はグループ全体で重視しており「リサーチ部門は日本最大規模」と岩本氏は言う。

 今年1月にはトップページの刷新を実施し、利用料金の確認、迷惑メール対策、契約内容の確認という利用頻度の高い3メニューを上部に配置。「お困りの課題をすぐ解決して帰ってほしい」(高橋部長)という方針からだ。

 デザインはメニュー名称が縦に並ぶシンプルな構造となった。デザインの改善に当たっては、「求められる機能を入れすぎると、メニューが多くなりすぎ使いづらくなる。そのバランスが難しい」と、Webコミュニケーション部Webマネジメント課の大黒悠課長。

 この刷新によって、My SoftBankトップページの顧客満足度は10%向上したという。会員サイトはすべての顧客が利用できる必要があるため、新しい技術の採用には慎重ながら、「スマホファースト」を掲げるヤフーと人材交流も含めた情報交換を重ね、スマートフォン上でのユーザー体験のデファクトスタンダード作りを目指す。

ディズニー、シンプル追求でPV比率約2倍

 こうしたスマートフォンサイトのトップページをシンプルにするのは1つの潮流となっているようだ。ウォルト・ディズニー・ジャパンは今年1月に開設したスマートフォンサイト公式サイト「Disney.jp」を9月に刷新した。コンセプトは「シンプル&クリーン」。

ディズニー公式サイトは刷新で画像を大型化

 同社は当初、ユーザーに親しみのあるパソコンサイトのデザインをスマートフォンサイトでも踏襲した。しかし利用動向を分析すると「スマートフォンサイトは文字をしっかり読むというより絵を見て直感的な行動をとる傾向にある」(同社)といった違いが見えてきた。その一方でトラフィックは急増。「市場環境の変化は早いので、早くサイトリニューアルした方が、ゲストに良い体験をしてもらえ、ディズニーの情報にさらに接触してもらえる」(同社)と判断し、短期間でのデザイン刷新に踏み切った。

 新サイトでは、星やピンクのグラデーションだった背景を白一色にして、アイコン画像を大きくした。アイコン画像に載せるキャラクターなどのコンテンツが際立つようにし、動きも軽くした。また、従来はタイトルと詳細な説明文の文字が同色だったが、刷新後にタイトルは青、詳細文は黒にし、タイトルを目立たせた。

 同時にディズニーストア、キャラクターなどのコンテンツを拡充した。それらの配置も課題だったが、スマートフォンでは縦スクロールがパソコンサイトより容易と判断し、縦長のページにした。早くも公式サイト全体のPVにおけるスマートフォン経由の比率は従来の1.5~2.5倍に高まったという。

 スマートフォンを巡る環境変化は今後も激しくなる一方。マーケティングに活用する企業側も、最新動向を常にウォッチし迅速な意思決定が必要だ。ただ先を見越すのは極めて難しい。米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)でさえ見誤ったほどだからだ。

ザッカーバーグCEO、「HTML5は失敗」の真意

 「HTML5に賭けたのは失敗だった」

 ザッカーバーグ氏が9月、米メディア「テッククランチ」主催のカンファレンスでこう発言し、大きな波紋を呼んだ。HTML5はスマートフォンなど様々な端末向けのサイトやアプリを制作する標準言語になると目される。そのため企業のスマートフォンサイトの構築でも、HTML5をフル活用するのは避けるべきか気になるところだ。

 「あの言葉には続きがありました。一言で言えば『早すぎた』のだと思います」。HTML5を利用したアプリやサイト制作も手がけるカヤック(神奈川県鎌倉市)意匠部CREATORの比留間和也氏は発言の背景を読み解く。

 ザッカーバーグ氏が目指したのは、Facebookで提供する高度なサービスをすべてHTML5でアプリ化すること。それは「パフォーマンス面、機能面でまだ難しいでしょう」と比留間氏は説明する。HTML5は2014年の正式勧告を目指し仕様策定が進められている最中で、期待過剰の面もあるという。

 一方で「サイトを作る上では問題ない」と比留間氏。軽いゲームやリッチなインターフェースなどでFlashを代替するような用途では全く問題ない。短期間のキャンペーンサイトならHTML5の技術的な可能性を追求した高度なコンテンツも作るという。

 前出のソフトバンクモバイルの高橋部長は、「HTML5には慎重だ」と語る。事例編で紹介したMy SoftBankのような顧客向けサイトは、様々な端末を持つ利用者が問題なく使えることが前提となる。技術の成熟を待って採用すべきという判断だ。

アプリでもSEOが必要に

 スマートフォンを活用したマーケティングは、HTML5など技術環境の変化に大きく影響される。その点で、米アップルの動向にも注目が集まる。

 同社は9月20日、iPhone向け新OS「iOS 6」の提供を始めた。そこで明らかになったのは、アプリ配信サービス「App Store」のアプリ案内方法が、カテゴリー中心からキーワード検索中心にシフトしたことだ。従来はApp Storeの初期画面から「カテゴリー」のメニューへ直接アクセスできた。が、その位置には全体の「ランキング」メニューが配置され、カテゴリーはその先の階層になった。iPhone向けにブランディングアプリを提供する企業では、新たな対策が求められる。

 キーワード検索のアルゴリズムは、アップルが今年2月にアプリ検索サービスの米チョンプを買収し、その技術を導入して以降に大きく変わった。「アプリストア最適化(ASO)」のツール「SearchMan」を提供する米アップグルーブ共同創業者の柴田尚樹氏はこう説明する。

 「ダウンロード数が多い古くからあるアプリに有利で、ロングテールアプリには厳しくなった」。
 そのアルゴリズムの変化は激しい。毎日70万アプリをトラッキングするSearchManの分析結果からは、アップルが2~3週間に一度のペースで大きく変更していることが分かるという。あるときはアプリ名に入っているキーワードの重みが上がり、またあるときはレビュー数の重みが上がる、といった具合だ。

 米ニールセンの調査によると、アプリを探す人の63%がApp Store内でキーワード検索をしている。App Storeの導線変更で、検索利用者はさらに増えることが見込まれる。

 カテゴリーからキーワード検索へのシフト。その変化はYahoo!からGoogleにシフトした際のウェブの世界に置き換えると分かりやすい。アプリ提供企業はサイトのSEO(検索エンジン最適化)同様に、アプリ紹介文などを十分考慮したアプリストア最適化に取り組む必要があると言えよう。

第1回 普及率、女性比率、HD画面…、ほんの1年強でスマホの技術とユーザーが一変
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