第1回 普及率、女性比率、HD画面…、ほんの1年強でスマホの技術とユーザーが一変
第2回 スマホサイトの役割を見直す、みずほ銀行と楽天オークション
第3回 スマホサイトのデザインはシンプル追求へ、ソフトバンクモバイル、ディズニーの改善

みずほ銀行、9月にスマホで口座開設開始

 メガバンクの一社であるみずほ銀行は競合に先んじて、2010年6月にスマートフォンサイトを開設した。同年11月にスマートフォンでバンキングサービスを利用できるようにして以降、機能拡充を進めている。そして今年9月、新規口座開設の申し込み機能を追加した。早くも期待に応える成果を上げている。

 同行がスマートフォン対応の検討を始めたのは2009年のこと。当時、スマートフォンの契約数は国内全体で見ても200万~300万台の水準で、携帯電話全体から見ればほんのわずかだった。それでも、バンキングサービスのスマートフォン対応を考えたのは、他行への乗り換えへの防衛策との意味合いが強かった。

 バンキングサービスは残高照会、入出金の明細、振込といった基本サービスの提供からスタートし、定期預金の作成、投資信託取引と機能を拡充してきた。パソコンサイトのおよそ2倍のペースで機能の追加、改善を進めているという。

 同行の全2400万口座のうち、インターネットバンキング契約者は940万人。スマートフォン向けサービスの利用者は開始から2年間で累計40万~50万人になった。今春にはインターネットバンキング利用者に占めるスマートフォン比率が従来型携帯電話を上回った。他のメガバンクに先駆けてサービスを拡充することで、顧客の乗り換えを防止するという目標は一定程度達成できたといえよう。

 そしてこの9月、みずほ銀行はスマートフォンサイトでの口座開設申し込みの受け付けを始めた。つまり、スマートフォンに新規顧客の獲得チャネルという役割が加わったことになる。

 「金融情報の収集、分析、取引の開始、実際の取引など、各種サービスの提供によりさらに便利になる。2年強でようやく基盤が整ったところ」

 みずほ銀行の個人マーケティング部リモートチャネルマーケティングチーム調査役の西本聡氏はその現状をこう説明し、「既に新規口座申し込みの1割はスマートフォン経由になった」と明かす。同行で口座開設する人の半数は20代前後だという。若年層に浸透するスマートフォンは顧客獲得ツールとしての可能性が高いことが、1カ月もたたないうちに実証された。

 AR(拡張現実)技術を使ったATM・店舗検索アプリや、スマートフォンサイトの主要メニューへのショーカットを自在に配置できるアプリなど、スマートフォンアプリの提供にも積極的だ。「金融サービスの枠組みにとらわれずに、お客さまの生活に密着した便利なサービスを提供したい」と語る西本氏。新規口座の獲得などにより、その投資効果が明確化されれば、スマートフォンサイトの拡充はさらに積極化されるだろう。

楽天オークション、スマホ単体での利用を想定

 楽天とNTTドコモの共同出資会社である楽天オークションは、スマートフォンサイト開設の1年後となる2011年末にその役割を見直し、サイトの改善スピードを上げている。見直しを後押しするのは、利用者層の変化だ。

 同社は、2010年末にスマートフォンサイトとアプリの提供を開始した。同社マーケティング・編成部大島薫部長は、「当初はネット上級者向けで、パソコンでオークションをする人が、いつでも取引できるようにするためのツールとして提供した」と説明する。

 その仮説は正しかった。同社はサイト運営のKPI(重要業績評価指標)の1つに「取引完了率」を掲げる。落札後に実際に商品が取引された率だ。落札後に気が変わって取引を放棄してしまう人もいれば、入金や発送方法に戸惑って取引が完了できない人もいる。

 スマートフォンサイト開設当初の取引完了率は、上級者が多いパソコン利用者とほぼ同等。初心者が多い従来型携帯電話の利用者を大きく上回っていた。楽天オークションの新規顧客は、NTTドコモの「iメニュー」が強力な獲得ルートになっていた。そのため、従来型携帯電話の利用者にはオークション初心者が多かったのだ。

 1年かけて基本機能を追加し2011年末にデザインを楽天グループのガイドラインに合わせるなどのサイト刷新を実施した。当時、取引総額に占めるスマートフォン利用は1割未満だったが、今春に2割、今秋には3割に達した。

 スマートフォンでの取引が増えるにつれ、大島氏はある変化に気がついた。取引完了率が下がっていたのだ。従来のユーザー層と異なり、スマートフォンだけで取引をする層が増えたようだ。スマートフォン利用者は必ずしもネット、オークション上級者ではなくなったのだ。

楽天オークションはA/Bテストでスマートフォンに最適なデザインを探る(画面は商品ページの例)

 そこで、スマートフォン単体での利用を前提としたメールマガジン配信、キャンペーンの実施、サイト強化といった改善を進めた。今年に入ってからは楽天グループのパソコンサイトでもよく実施する「A/Bテスト」の手法を取り入れている。

 最初は、トップページの下方にユーザーの閲覧履歴や入札ランキングなどを表示すべきか否か、どのデザインにすべきかを決めるために実施した。あらかじめ用意した5種類のデザインを20%ずつ出し分け、ページを見た人の何%が入札するかを示す「入札転換率」を測定し、効果が高いものを正式版として採用した。この9~10月には、検索ページ、商品ページのテストを実施している。

 「毎回0.5~1.5ポイントの転換率向上が目標」と大島氏。一度の改善幅は小さいが、積み重ねにより極大化を図る。

 取引総額に占めるスマートフォン経由の比率は3割と、パソコン経由の4割を下回るが、「今後はスマートフォン中心に考えないといけない。ドコモもスマートフォン(のポータルサービスなど)に力が入り、我々の露出も増えるだろう」と、同社の殿村英嗣副事業長は期待を寄せる。

第1回 普及率、女性比率、HD画面…、ほんの1年強でスマホの技術とユーザーが一変
第2回 スマホサイトの役割を見直す、みずほ銀行と楽天オークション
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