第1回 普及率、女性比率、HD画面…、ほんの1年強でスマホの技術とユーザーが一変
第2回 スマホサイトの役割を見直す、みずほ銀行と楽天オークション
第3回 スマホサイトのデザインはシンプル追求へ、ソフトバンクモバイル、ディズニーの改善

 ドッグイヤーの再来─。スマートフォンを巡る変化の早さを見ると、久しく忘れていたこの言葉が頭をよぎる。ITビジネスの変化の早さを、人間の7倍のスピードで成長する犬の一生に例えたこの言葉は、2000年前後、大いに流行した。その後に廃れていったのは、流行語の宿命であるとともに、パソコンなどITの世界も成熟化が進んだからだろう。

スマートフォンを巡る環境はこの1年強で大きな変化

 しかし、スマートフォンの世界はその例外だ。コムスコアジャパンが毎月実施する、携帯電話利用者を対象とした定期調査「モビレンズ」よると、2011年3月時点のスマートフォン普及率は9.4%だったが、その1年4カ月後となる今年7月には2.8倍の26.6%になった。スマートフォン利用者に占める女性比率は7.2ポイント増加して41.5%に達した。IT感度の高いビジネスパーソン層から主婦層までスマートフォンは浸透したと考えていい。

 利用されている端末のシェアはまだ従来型携帯電話が優勢だが、サイト利用に限って言えば、スマートフォンからの利用が過半になったと分析する企業が続出している。先進企業からは「モバイル予約の6割弱はスマートフォン経由」(全日本空輸)、「モバイル予約の半分はスマートフォン」(日本航空)、「インターネットバンキングでは今春、スマートフォンが従来型携帯電話を抜いた」(みずほ銀行)との声が相次ぐ。

 ハードウエアの性能進化も著しい。分かりやすいところでは、画面解像度がある。2011年3月に0%だったハイビジョン(HD)画面の端末は1年4カ月後には17.7%まで増えた。標準的だった480×320ピクセルの端末は、今は2%程度に過ぎない。

 こうした利用者層、端末性能の激変に対応すべく、スマートフォンを活用する先進企業はこぞってサイトのリニューアルに乗り出している。開設から2年ほど経った刷新が多いが、9月26日にリニューアルしたウォルト・ディズニー・ジャパンは、わずか8カ月後の大幅変更だ。

 各社の取り組みを概観すると、スマートフォンサイトの運営目的や役割自体を見直す動きが見て取れる。従来はパソコンとの併用が前提だったが、家庭ではスマートフォンでしかネットを利用しない層の出現を前提にした「フルサービス化」が進む。さらには24時間携行し、位置情報なども活用できるという端末特性を生かした独自機能を盛り込む企業も多い。

 また、スマートフォンらしさを追求したサイトデザインの標準も変わっているようだ。使いやすさを追求すれば、デザインはシンプルに、画像は目立つように大きくなっていく。サイト刷新の現場から詳報していく。

全日本空輸、チケット自販機から顧客ナビゲーターへ位置づけ変更

 「2000年代の初め以来、ネット経由の売上高に占めるモバイル比率は15%で概ね不変。ところがここ2年で2ポイント上がって17%に。たかが2ポイントと見えますが、ネット全体で4200億円(2011年度)の売上高ですから、数十億円の変化なのです」

 全日空のプロモーション室マーケットコミュニケーション部企画・宣伝チームの前田欣伸主席部員は、スマートフォンの急速な普及が、同社のネット販売額に大きな影響を与えていることを明かす。

 同社のモバイル販売全体に占めるスマートフォン経由の比率は既に6割弱に達した。影響は金額だけではない。出張利用が中心で、「(旅行などの)レジャー利用は1割にも満たないと思っていたら、実は2~3割もあることが分かりました」(前田氏)と新たな顧客層を開拓していることもうかがえる。

 そうした中、全日空は10月1日、スマートフォン用サイトのリニューアルに踏み切った。肝となるのは「My Booking」機能だ。航空券を予約した人が利用するメニューである。予約状況の確認、変更、座席指定などができ、空港でのチェックインが不要な「スキップサービス」を利用できる人にはその旨を案内する。

 飛行機をあまり利用しない人にとって、いくら丁寧にスキップサービスの利用方法をサイト上で説明しても、自分がその対象かどうか確信が持てない。ならば「あなたは利用できます」と表示するのが親切、という考えだ。

 そのほかにも株主優待券を利用する人には、その券を忘れずに持ってきてもらうよう案内。「お客さまが次の導線をイメージできるサービスをスマホで提供しよう」(前田氏)というのが趣旨だ。来年3月までかけて、続々と機能を強化していく。

 スマートフォン向けサービスは、同社が対応サイトを開設した2010年秋当時は旅慣れた人のための「チケット自動販売機」であればよかった。家庭でのネット利用の中心がパソコンからスマートフォンへ移行する中、「顧客個別に必要な情報を素早く手元に届ける」サイトへと進化しつつある。

迷わず選べるメニュー構成に

 サイトデザインも大きく変えた。これまでのスマートフォンサイトはAndroid端末が国内で本格発売された際に作ったものだった。タッチ画面を意識して、スマートフォンらしくアイコンをグリッド状に並べた。

 これは当時の流行でもあった。ただ実際には20以上のアイコンが大小の区別も無くズラッと並ぶため、利用者は、どのメニューを使えばいいのか迷うことも多かった。予約関連だけでも5つの入り口があったほどだ。また、航空券の購入や搭乗に必要な情報なのか、それともプロモーションなのかの区別も無かった。

 そうした反省を生かして、国内線に関しては「空席照会/予約」「My Booking」「運行状況」「サポート」の4つに、大きな入り口を集約。自分がどれを押せばよいのか一目で分かるようにした。

 「合い言葉はスマホファースト」

 前田氏は、このほどのリニューアルをこう表現する。売り上げ構成を考えれば「パソコンファースト」。だが、プラットフォームとしては成熟しつつある。であれば、投資を強化すべきはスマートフォンとなる。リソースを割いて短期間で開発を進めたという。チケット自動販売機から顧客のナビゲーター役へと進化を遂げて、新たな顧客層の取り込みを図る。

 全日空のようにスマートフォンサイトを先行して開設した企業の中には、利用者層の変化に伴って役割や運営目的を変更することも少なくない。上の表のようにみずほ銀行、楽天オークションもサイト刷新、機能追加に合わせて役割を変化させている。連載第2回から各社の取り組みを見ていこう。

スマートフォンサイトに新たな役割を期待する企業

第1回 普及率、女性比率、HD画面…、ほんの1年強でスマホの技術とユーザーが一変
第2回 スマホサイトの役割を見直す、みずほ銀行と楽天オークション
第3回 スマホサイトのデザインはシンプル追求へ、ソフトバンクモバイル、ディズニーの改善
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