「目標は数字ではない。コミュニケーションを密に取って、ファンを作ることです」
日経BP社が10月10日~12日の3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催中のイベント「モバイル&ソーシャルEXPO 2012」に登壇した、タマホーム(東京都港区)専務の玉木伸弥氏は、同社がFacebookに注力する狙いをそう語った。このイベントは、今年4回目の日経デジタルマーケティング読者無料セミナーでもある。

タマホームの創業は1998年。来年には15周年を迎える。創業者で現社長でもある玉木康裕氏の長男である伸弥氏は現在、33歳。自らの肩書きを“わくわくドキドキ本部長”という。若くて勢いがあるとされる会社の1つだ。
同社がFacebookページを開設したのは2011年2月のこと。当時は、500人くらいしかファンもおらず、更新頻度も気がつけば、という程度だったという。
Facebook課を設立するほど注力
しかし、東日本大震災を機にコミュニケーションの重要さを痛感し、「広告宣伝部Facebook課」を設立した。課長には、伸弥氏の大学時代からの親友であり、もっとも信頼のおける川野和義氏を据えた。
「常に顧客との接点を確保しつつ、そろそろ家でも建てようかなと思った時に、我々、タマホームを想起してもらいたい」
従来型のCMや折り込みチラシといったものは、あくまで企業側からの一方的なコミュニケーションである。Facebookに注力する一番の理由は、消費者と双方向のコミュニケーションが取れることだという。
Facebook課の設立後、約4カ月でファン数は1万人を超えた。タマホームについての紹介記事を落とし込むとともに、数多くのキャンペーンを展開した。同社CMで起用した木村拓哉さんの書籍『プレミアムボックス!』のプレゼントのほか、創業の地、福岡で10年来の関係を保ち続けている福岡ソフトバンクホークスの協力のもと、始球式に参加できる権利や試合前に監督へ花束を贈呈できる権利なども提供してきた。
また福岡国際マラソン、テレビ朝日とタイアップしFacebook上で連動キャンペーンを実施し、幅広い層から多くの支持を得たという。現在のファン数は3万2000人を超えている。
「こうしたキャンペーンを継続的に実施すると同時に、地道に朝と夕方、一日に2回、必ず何らかの情報をウォールへ投稿する。寄せられたコメントに対する返信率は100%。これを徹底しています」と玉木専務は語った。
タマホームはソーシャルメディアを使って見込み客との接点を常に確保しつつ、リアルイベントで直接ふれあう場を積極的に用意している。Facebook上でファンに呼びかけ、昨年は福岡、大阪、東京でパーティを開催した。東京では帝国ホテルに550名もの見込み客を集客したという。これはタマホームの社員と顧客が実際に交流をする場である。
「パーティでは一切、当社商品の宣伝活動はしません。タマホームを、そしてタマホームで働く社員のことを知ってもらいたい。そのためのお客様へのおもてなしなのです。ご本人ではなくても、周りの誰かが家を建てようと思ったときに、タマホームってなんか良かったよと言ってもらえれば、それで成功なのです」
そもそもこうした活動は、費用対効果を数値化しにくく、企業としては取り込みにくいものだ。もっとも、タマホームでは宣伝広告費全体に占めるウェブ、ソーシャルメディア関連の比率はわずかに2%ほど。バランスを重視しつつ、見込み客との接点を増やしている。
「弊社のホームページは、カッコ良さは追求していない。ウリである価格訴求、キャンペーンの告知、とにかく分かり易さが大切。そこで、こちらからメッセージを発信し、それへの反応がFacebookに返ってきて、そしてまた、こちらから返信する。そういったコミュニケーションにつなげていきたい」。
スマートフォン専用のサイト構築にも早くから取りかかり、優れた操作性を実現できることに徹底してこだわっているという。効果指標は、PV(ページビュー)。同社に対する資料請求の数も着実に増えてきているとした。
またYouTubeに公式チャンネルも持っており、そこで同社のCMや玉木専務からのメッセージなども公開する。このチャンネルの動画再生回数は、既に3万5000回ほどを数えている。
「住宅は、多くの人にとって一生に1度の買い物です。いつ訪れるか分からないその時に向かって、我々は突き抜けるような広告、企画、コミュニケーション戦略を継続していく。お客様にわくわくとドキドキを感じてもらいたい。そして、我々を知ってもらい、安心感のある住まいを提供したいのです」
今年も東京では11月6日に、帝国ホテルで1300名を招待しての大型の交流会を開催する予定だという。現在、すでにFacebook上では1450名を超えるエントリーがあると語っていた。