オーストリア発の高級ワイングラスブランド「リーデル」をご存知だろうか。創業から250年の歴史を誇る老舗ブランドだ。このブランドを日本で展開するRSN JAPAN(東京都港区)は、Facebookを活用したマーケティングを、実利に結びつけている1社である。

2万円のセミナーに2日で36人の申し込み

 同社のマーケティングは少々独特だ。消費者向けの商品のメーカーにしては珍しい、有料セミナーを自社のオフィス内で開催している。参加費は商品代金を含むため、1回当たり4200~2万円と比較的高額なものもある。Facebookはこの有料セミナーへの集客の窓口として、雑誌以上の成果を発揮している。

 例えば、今年実施した2万円のセミナーをFacebookで募集したところ、「告知からわずか2日で14人の定員に対して、36人の申し込みがあった」(同社マーケティング部デジタルマーケティングプロジェクトリーダーの西村敏雄氏)。一方、雑誌に載せた広告経由の申し込みは9人だった。

 有料セミナーへの集客でFacebookを売り上げに結びつけているRSN JAPAN。その具体的な活用手法を紹介する前に、なぜ有料セミナーを実施しているのかを説明しよう。

 同社は、ワインの味や香りを引き立たせるために、赤白、様々なワインに適応したワイングラスを開発している。ワインとグラスを正しい組み合わせで利用しないと、かえって風味を損なうこともあるという。そこで、リーデルのグラスを正しく使って、ワインを楽しんでもらうために、セミナーでそれを紹介している。

RSN JAPANが開催する有料セミナーの様子

 セミナー参加者に、そこで得た知識を使ってリーデルの商品を引き続き利用してもらうためには、商品代金、または自社で運営する直営店で使える商品券の代金を含むすべきと考えて、有料で実施している。

 同社にとってこのセミナーは、商品の正しい使用法を伝える以上の大きな意味を持つ。セミナーでは、ワインとグラスの相性など、ワイン好きにとって、人に伝えたくなるような情報を織り交ぜている。そのため、参加者はその後、リーデルの商品の魅力を友人などに勧めてくれるような、優良顧客になるケースが多いという。このセミナーへの集客にFacebookが役立っている。

 もっとも、Facebookを活用してすぐに有料セミナーへの集客を実現できたわけではない。活用を始めてから約1年半の間、試行錯誤を繰り返してきた成果だ。

 同社がFacebookの活用を始めたのは、ワインの魅力を伝えて、愛飲する人の裾野を広げられる可能性を感じたのがきっかけだ。「ワイン(を熟知するの)は難しいというイメージを持たれている。ブームのような追い風もない。消費者にアプローチする新しい手法が必要だった」と同社社長のウォルフガング J. アンギャル氏は言う。

 そこでRSN JAPANでは、まずファンに喜んでもらえるような投稿をして、ファンとの関係性を作ることに腐心した。意識したのは、ワインの初級者から上級者まで幅広い人に関心を持ってもらうこと。例えば、商品情報に限らず、ワインに関する豆知識や、ワインに合う料理のレシピなどを投稿している。

 こうして、ワイン好きにとって関心の高い投稿を通じて、ファンとの関係を作り上げていった。ファン数は現在約3万8000人と、突出して多いわけではない。ただ、投稿へのいいね!の数は多い時で4500を超える。ファン数の1割を超えるこの割合は、かなり高い水準と言えるだろう。ファンとのつながりを深めることで、セミナーへの関心も高まっていった。

 活用を始めた当初は、Facebookページでセミナーの告知をしても鳴かず飛ばずだった。ファンとの交流に不慣れだったこともあり、セミナータイトルや日程だけしか載せないことも。「申し込みどころか、『いいね!』すら、ほとんどつかなかった」と西村氏。まだ、有料のセミナーに関心を引きつけられるようなファンとの関係性は構築できていなかったのだ。

 潮目が変わり始めたと西村氏が実感する出来事が昨年11月に起こった。その月には、参加費約1万円の有料セミナーの開催を予定していた。

 参加者を募るために、顧客へのメールマガジンを配信したり、専門雑誌などに広告を掲載したりしたものの、思うように人が集まらない。そこで、最後にFacebookで参加を募った。すると、来場者の3分の1がFacebook経由の申し込みという結果だった。

「こんなセミナーを開催して!」ファンから提案が舞い込むことも

 手応えを感じた西村氏は、それ以降も常にセミナーへの参加をFacebook上で促すようにしている。もちろん、以前と同じような、日程を載せるだけの告知はしない。告知文では、まずセミナーで使用するワインの紹介から入る。こうして、ワインの魅力で関心を引いていく。

 飲んでみたい。そう思わせたところで、セミナーの告知ページへと誘因する。ランディングページでは、セミナーの様子が分かる動画を掲載して、申し込みにつなげる最後の一押しをしている。

セミナーで使うワインを紹介して関心を引く

 セミナー参加者が増えれば、先述の通りリーデルのワイングラスの魅力を友人などに語ってくれる“営業担当者”が増えることになる。一方、営業担当者は、セミナーの構成内容にも助言を始めている。

 ある日、同社のセミナー担当者は、自身のFacebookアカウントに一通のメールが届いていることに気づく。内容は、こんなセミナーを開催して欲しいという、顧客からの要望だった。「自社サイトで顔や名前が出ているので、それで見つけて連絡をしてきたようだ」(西村氏)。この要望に応える形で、参加費5000円のセミナーを開催。約10人の参加となった。

 今後は、優良顧客を選別するためのキャンペーンの実施も計画している。例えば、リーデルのグラスにワインを注いだ写真を募るコンテスト。ワイングラスとワインが適合していることを評価ポイントにすれば、リーデルのワイングラスの特徴をきちんと理解している優良顧客を発見できる可能性がある。

 キャンペーンの対象者が絞られるため、応募数はぐっと減るかもしれない。が、優良顧客を見つけ出せれば、その人を中心に情報が広がるような、次なる施策への展開につながることも期待できよう。