特集第1回第2回を通じてLINEのマーケティング活用には可能性が大きいことはお分かりいただけたと思う。ただ、これからの活用を考えると、来年以降もLINEは成長を続け、マーケティングのプラットフォームとして魅力あるサービスであり続けられるかどうかは気になるところ。

LINEの登録者数の推移

 まず右図のLINE登録者数の推移をご覧いただきたい。LINEの提供を開始した2011年6月から今年の4月にかけて、大きく利用者数が増えている。

 一方、右図のスマホ契約数の推移も2011年3月末の955万件から、2012年3月末には2522万件と2.6倍になり、急速に普及した。これを照らし合わせると、LINEの利用者はスマホの普及に合わせて急拡大したことは明らかだ。

 では、なぜそうした推移をたどったのか。最も重要なポイントは、スマホで利用しやすい“メールアプリ”を目指した点だろう。

ケータイメール代わりに普及

 スマホの普及は、一般消費者が従来型の携帯電話から次々と乗り換えたことで一気に進んだ。しかし、これまで従来型の携帯電話を利用していた人にとって、スマホに最初から搭載されているメールアプリは決して利用しやすいものではないようだ。

 携帯通信事業者が提供するメールアプリには、「重くて使いづらい」「不要なフォルダが多くて不便」「勝手にメールが消えるなど不具合が多い」といったクチコミがネット上に多数投稿されている。この間隙をついて、LINEの利用が広がったとみるべきだろう。

 情報社会論・メディア論の専門家である、日本技芸(東京都渋谷区)の濱野智史リサーチャーは、LINEの普及状況を「ケータイメールの正常進化系として広がっている」とみる。

 LINEは電話帳と連携することで、どの友人が使っているか一目で分かるため、まず会員登録をして、次に友人を探す、といった一般的なソーシャルメディアのようなわずらわしさがない。登録後は、電話帳に登録している友人の中から、LINEを利用している人が自動的に友達として登録される。後は送りたい相手を選んで、メッセージを送信するだけ。その手軽さから、キャリアのメールアプリの乗り換え先として、人気が集まった。

 わざわざソーシャルメディアを使って、幅広い人と交流をしなくても良いという人は多い。一方、大半の人が今もケータイメールで友人などと連絡を取り合っているだろう。そうした人たちにとって、メールアプリの使いづらさは死活問題。その結果、「LINEは主婦など、普段それほどWebサービスを利用しない一般の人たちから先に広がる珍しい事例になった」と濱野氏は指摘する。

 メールの代替アプリとして人気を集めたLINEは、このまま高成長を維持できるのか。NHN Japanウェブサービス本部事業戦略室室長の舛田淳執行役員は「メールや電話を使うすべての人に利用してもらえる可能性がある。限界があるとすれば、スマホの台数以上には増えないこと」と自信を見せる。

 スマホは来年以降も利用者拡大が続く見通し。2013年3月末には契約数は4335万件にまで増える予測だ(MM総研調べ)。ここ1年で特に乗り換えが進んだのは10代の男女だ。

スマートフォン契約数と携帯電話の契約総数に対するスマホの比率(MM総研調べ)

 電通が今年1月に実施した「スマートフォンユーザーの利用実態調査」によれば、10代の男性のスマホ利用比率は昨年より30ポイント伸びて37%になった。また10代女性は同24ポイント増の31%となった。20代女性の伸びも著しく、同28ポイント増の41%にまで高まった。

 今後もこうしたトレンドが続けば、LINEの利用者はさらに増えそうだ。 前出の濱野氏は、「このままスマホの普及に合わせて、メールアプリに置き換わっていくなら、6000万~7000万にまで達するポテンシャルは持っている」とみる。

 また、企業の女性向けマーケティング支援事業のトレンダーズ(東京都渋谷区)の女性情報サイト「キレナビ」で編集長を務める伊藤春香氏は、「スタンプは、言葉で伝えるよりも簡単に、そして豊かに感情を伝えることができ、スマホに不慣れな層でも使いこなせる。そして、老若男女問わず、直感的に使えるユーザビリティは、今後日本でもますます広がるに違いない」と語る。

成長が鈍化するシナリオは?

 一方、月間利用者が1000万人に達するハウツー情報サイト「nanapi」を運営するnanapi(東京都渋谷区)の古川健介社長は、「mixiなどのSNSと同様、一定の若者層を取り込んだ後はやや鈍化するものと考える」とみる。

 では、成長を阻害する要因があるとすればそれは何か。3つ考えられる。

 まず、LINEがSNS化することで複雑になり、持ち味であったシンプルさを失うことによる利用者離れの可能性だ。同時に、利用者が鬱陶しいと感じ始めることへの懸念もある。

 LINEでは気軽に仲の良い友人同士でグループを作って、そこで会話をする利用法も増えている。このグループが増えるとメッセージ数が過多になりがちだ。クローズドの居心地のよさ故に、コミュニケーションが密になりすぎ、やや鬱陶しいと感じる人は、利用を遠ざけるかもしれない。

 2つ目はシステム面の懸念だ。SNS化と時期を同じくしてバージョンアップしたアプリでは、「タイムライン機能がついたせいでダウンしやすくなった」といった不満の声が少なくない。9月6日には、一部サービスが利用できなくなる障害が発生した。これまでにも、こうしたトラブルは何度か起こっている。頻繁に続けば、利用者離れを招く恐れもある。

 最後に、出会い系ツールとして悪用される恐れも指摘されている。LINEでは電話帳と連携して利用するほかに、設定したIDで利用者を検索して友人になる機能がある。このIDを掲載して、友人を募集し合う非公式の掲示板がネット上で増えている。

 若年層の利用が多いだけに、安心・安全の担保は特に重要だ。NHN Japanは、こうした友だち募集掲示板の運営者に対して、サービスの利用停止を依頼する一方で、LINE利用者には注意を促している。

 また、無作為にIDを検索して、メッセージを送りつけるスパム行為に対しては、一定回数連続してID検索をすると、検索機能が使えなくなるよう対策をした。その結果、「スパムは8割くらい減ったとみられる」(舛田氏)。

 KDDIのスマホ向け定額制コンテンツ配信サービス「auスマートパス」版のLINEでは契約者情報とひもづけ、18歳未満はID検索の対象から外すなどして、犯罪に巻き込まれないような対策を強化している。

 これらの懸念を最小限にする努力を続けなければ、4週間800万円への大幅値上げという企業姿勢は、次第にそっぽを向かれていくことになるだろう。