今年3月末、新しいWebニュースメディアがオープンした。その名は「爽力取材!放課後ニュース」。読者ターゲットは男子中高生だ。ニュースのコンテンツは以下の4ジャンル構成になっている。
1.「女子ウケニュース」:女子にウケる・モテるノウハウを伝授
2.「中高生の実態」:中高生の日常生活を調査データを基に解説
3.「エンタメニュース」:主にアイドルグループ「ももいろクローバーZ」の活動やメンバーの近況を報じる
4.「アイスニュース」:アイスクリームをより美味しく食べるために知っておきたい豆知識を提供

このうち、4つ目の「アイスニュース」に、やや違和感を感じる読者もいるだろう。「5月9日はアイスクリームの日、米では7月第3日曜」「最高気温が30度の時、20度の時の2倍アイスクリームは売れる」といった“へぇ~”と思わせる雑学コラムを読み進めていくと、「爽スペシャルサイト:http://soh-soh.jp/」の記述が記事末尾にある。そう、これはロッテのアイスクリームブランド「爽」が運営するニュースメディアなのだ。
昨今、オウンドメディアの強化策として、コンテンツの増強、自社サイトのメディア化といったキーワードを目にすることが増えている。オウンドメディアの代表格である「コカ・コーラパーク」もニュースを配信しているが、記事は「スポニチ」と音楽ポータル「BARKS」が提供元だ。ロッテという大企業とはいえ、一アイスクリームブランドが独自ニュースを配信するメディアを運営するのは、極めて異例かつ大胆な取り組みと言っていいだろう。
このプロジェクトを指揮した同社広報・宣伝部宣伝担当制作第二グループ課長の荘司和雄氏は言う。
「アイスの購入に至るプロセスと情報の流れが大きく変わった。これはつい最近の他社の例ではあるが、赤城乳業の『ガリガリ君リッチコーンポタージュ』は、TwitterやSNSでまず話題になって、Webニュースメディアが試食レポートを書いてそれが拡散し、あっという間に供給が間に合わないほどの売れ行きになった。ネット上で話題に上っていることが大きな力になる」
では、どうすれば「爽」をネットで話題になる商品にできるか――。それを知るため、主顧客層の男子中高生がどんなデジタルライフを送り、どのようなシーンで爽を食べるのかを調べた。すると、彼らはゲームやSNSと並んで、案外とニュースサイトを頻繁に利用していることが分かった。
また食べるシーンは、「学校帰りにコンビニエンスストアで買って、友達とたわいもない話をしながら」「風呂上りにケータイをチェックしながら」といった状況が浮かび上がってきた。「ならば、そのたわいもない話の小ネタの提供元となることで彼らとの距離を縮めていこう」。そんなコンセプトから、放課後ニュースが完成した。
ニュース編成は博報堂グループの企画・制作会社、博報堂ケトル(東京都港区)に委託。8月末までの5カ月間、ライター3人体制で計1000本近くのニュースネタを洗い出し、うち週20本ペースで400本以上を執筆した。査読・吟味のうえ、ユニークかつ不愉快な印象を与えないといった条件をクリアした記事を厳選して、1日1~3本ペースで260本公開してきた。
あくまで小ネタの提供に徹し、アイスニュースのコーナーであっても爽の宣伝色は一切排除。記事の中立性を保っている。放課後ニュースの記事は、東京産業新聞社(東京都渋谷区)が運営するWebニュースメディア「ガジェット通信」の派生媒体「夕方ガジェット通信」に転載され、さらにそこから一部記事が、ニュース提供先である「マイナビニュース」や「アメーバニュース」「NEWSポストセブン」などの提携先サイトにも載ったことで、爽のスペシャルサイトのURLとともに拡散していった。
結果、「爽ブランドサイトのPVは200万超。サイトがオープンする前までは、『爽』と検索すると『爽健美茶』などが上位に表示されたが、現在は爽がトップになった」と、荘司氏は手応えをつかんでいる。8月31日付の「日経MJ」によると、8月20日に投入した「爽 チョコマーブル」は、日経POS情報サービスの調査データ(8月19~25日)で冷凍食品部門のトップに立つなど、実売も好調だ。
もっとも、放課後ニュースがどれくらい売り上げに貢献したのかを図るのは容易ではない。今年も猛暑だったこと、CMに起用したセリエA・インテル所属の長友佑都選手、なでしこジャパンの澤穂希・宮間あや両選手らの活躍で露出効果が高かったことなど、さまざまな要因がある。荘司氏は、「ニュースサイトは8月末で更新をいったん停止したが、爽ブランドがニュースにひも付いて定着してくれれば、秋冬期の売り上げに好影響が出るのではないか」と期待を寄せている。