「いつか、(自社のある千葉県の)幕張を活性化するために、大きなリアルのイベントを開催したいと思っていた。その夢が実現した」

 9月15日から16日にかけて千葉市の「幕張メッセ」で、ファッション専門EC(電子商取引)サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは、初のリアルイベント「ZOZOCOLLE」を開催した。イベントの開幕式に登壇した前澤友作社長は、集まった関係者に向かって、そこに賭けた思いをこう打ち明けた。

開幕式に登壇したスタートトゥデイの前澤友作社長

 そして、こう続けた。「ネットで商売している我々がお客さんに直接対面してコミュニケーションできる、このイベントはチャンスでもある」。

 イベント会場には「UNITED ARROWS」「BEAMS」「JOURNAL STANDARD」「吉田カバン」「A BATHING APE」など、若者に人気とされる約200のファッションブランドの最新商品が並んだ。2日間で約1万人がイベントに訪れ、約1億5000万円の売り上げとなった。

 こうしたファッションイベントでは、最新の洋服を身にまとったタレントや人気モデルがステージ上を歩く姿に、来場した若い女性が熱狂する様子がよく見られる。しかしZOZOCOLLEには、モデルもタレントも登場しない。主役はあくまで洋服だ。

 ブランドやショップが次期シーズンの洋服をお披露目する展示会は通常、関係者に限って開催される。展示会に参加できるのは、ファッション関連業界に身を置く特権でもあり、一般消費者にはあこがれでもあった。

 その展示会に参加できるのだ。発売前の洋服を、いち早く手に取ることができ、試着も予約も可能。これらをスタートトゥデイは、イベントの価値として来場者に提供した。

 「元々展示会に興味があったので、観光もかねて来ました」。こう話す女性は、愛知県から友人と一緒に足を運んだ。これまで、ZOZOTOWNで予約購入をしたことはないが、実際に試着できるイベントなら素材やサイズも分かるため、「コートなどを中心に購入したい」と話した。

人気ブランドのブースには人が殺到した

 スタートトゥデイでは収益の拡大を狙い、定価が基本の予約販売を推進している。ただ、試着さえできないアパレルの通販で、発売すらしていない商品を予約購入してもらうのは、ややハードルが高い。愛知からきた女性のように、今まで予約販売を経験したことがない人が、イベントをきっかけに今後ネットでも予約販売してくれれば、収益拡大が期待できる。

「ブランドによって売り上げに明暗」

 女性に人気とされるブランド「X-girl」を展開するビーズインターナショナル(東京都目黒区)販売促進部X-girlプレス担当の川邊恵美里氏は、「アウトドアブランドとのコラボ商品を中心に、かなりの予約をいただいている」と好調さをアピールする。同ブランドのスニーカーは、イベント初日の15時時点で靴のカテゴリーの売り上げランキングで1位につけていた。今後、自社でも一般の消費者を対象とした展示会の開催を検討していくという。

 一方で、思ったより成果を上げられていないブランドもあった。あるブランドの担当者は「期待するほど予約がきていない」と表情を曇らせる。来場者の動きを見ていると、人が殺到しているブースと閑散としているブースで二極化しているようだった。総合ランキングも人気ブランドが首位を独占している傾向もみられた。

 また、別のブランドの担当者は「当初は人が押し寄せてくると思っていましたが、想像より少ない印象です」と感想を述べる。

 「来場者数、売り上げともに目標通り」(スタートトゥデイ)という今回のイベントだが、人が多すぎて試着できずに不満につながることを懸念しすぎるがゆえに、来場者数を絞りすぎた面もありそうだ。また、人気ブランドとそうではないブランドの客数を平準化することはできないか。こんな課題も見て取れた。スタートトゥデイにとって、イベント事業は離陸したばかり。こうした課題を一つひとつ改善していくことが、イベントをより盛り上げる上では必要不可欠だろう。

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