「こんなに売れるなら、もっと早くに作ればよかった」。取材中、ガリバーインターナショナルの関係者は思わずこんな声をもらした。

 ガリバーが今年7月に千葉県習志野市にオープンした大型中古車展示・販売場の1号店「WOW! TOWN(ワオタウン)」が好調だ。開店初日には入場制限をかけるほど人が押し寄せ、1カ月間で191台が売れた。敷地面積や立地が異なるため単純比較は難しいが、同社他店の実績の2倍以上だという。

 ガリバーは創業者の羽鳥兼市会長が「クルマの流通革命を起こす」という信念のもと設立された。まずは流通の川上を押さえるためクルマの買い取り事業に専念。ここ数年は川下の小売り事業の強化に舵を切っている。その象徴の1つがWOW! TOWNの開設で、「小売りのガリバー」を強く打ち出す。

 新店舗の特徴の1つはクルマの陳列方法だ。一般的な中古車店では、車種ごとに並べ年式やスペック、価格で商品を選んでもらう。ガリバーが目指したのは、顧客のライフスタイルに合ったクルマ選びという楽しさを提供する場づくりだった。

 そのため場内を「ファミリー」「アクティブ」「ファッション」など5つのエリアに分け、それぞれに適したクルマを並べた。商談スペースとは別に、自由にコーヒーなどを飲み休憩できるカフェスペースを設置したのも「自動車販売店には(その後に営業を受けるという)ある程度の覚悟が必要だが、もっと気軽に見てもらえるスペースを作りたかったから」とマーケティングチームの北島昇チームリーダーは言う。

 実はこうした陳列方法やカフェスペース設置といったアイデアは、ガリバー社内から出てきたものではない。オンライン上で消費者から集めた意見を参考に作られたものだった。

消費者のアイデアを全面採用

 利用したのは、企業と消費者による商品や店舗の共同開発を支援するブラボ(東京都渋谷区)のサービス「Blabo!」。登録会員に対して、ビジネス関連のアイデアを募集できる点に特徴がある。このサービスを利用する企業が、特定のテーマの「アイデアボード」を設け、登録会員からテーマに関するアイデアを募る。それらがボード上に集められ、企業が自由にアイデアを選別できる。

 従来型の調査方法も活用してきたガリバーだが、「机上で想定したアンケート結果に頼ることに疑問を抱いていた。どんな店舗がいいのか、もっと生活者から自由な意見を直接聞いてみる。たとえ1人の意見でも、それが参考になる可能性は十分あるはず」と北島氏は考え、同サービスを採用した。

 「これからの中古車」をつくろう─。最初はこんな大括りの質問を同サービスの会員に投げかけた。すると、326のアイデアが寄せられた。中には「新車の展示は買わないと行けない感じだけど、もっと入りやすい感じの展示になるといいな。カフェっぽく、車選ぶのはついでって感じじゃないけど、もっと女性ひとりでも入れそうな感じになるといい」といった意見も。これらを受けて、カフェの設置が現実のものになった。

Blabo!で寄せられた消費者の声(左)で、クルマの展示法やカフェスペース設置が決まった

iPadを使ってライフスタイル提案

 ガリバーでは当初より、スペック比較ではなく“こと軸”でクルマを探せる店舗作りをコンセプトに据えていた。Blabo!で寄せられた「お客さんのライフスタイルを聞くだけでクルマをおすすめできたら、コンシェルジェ!」といった意見は、同社が想定したコンセプトが受け入れられる可能性を示唆していた。実際、コンシェルジュ的な取り組みも新店舗では取り入れた。来店者は展示場入り口で、「iPad」を受け取り10の質問に答える。その結果から、5つのエリアの中でどれがその人に合うかを推奨する。まさにライフスタイルからクルマを勧めるコンシェルジュだ。

 このiPadを使って新しいショッピング体験もガリバーは提供している。新店舗では、一般の中古車店で目にする、フロントガラスに掲げられた大きな値札がない。代わりに張ってあるのはQRコード(2次元バーコード)。気になるクルマのQRコードを、iPad向け新店舗専用アプリで読み取ればスペックなどの詳細を見ることができる。

 比較検討の対象にしたい場合は、お気に入りリストに追加する。こうして店内を見て回りながら、気になるクルマの情報をiPadに取り込んでいく。一通り場内を歩きまわった後に、前出のカフェスペースでじっくり比較してもらうという仕組みだ。

 あれこれ見てもらうためゲーミフィケーションの要素も取り入れた。専用アプリにはビンゴゲームも搭載されており、QRコードを読み取るとビンゴカード上の数字部分にランダムに穴があく。ついついビンゴを完成させたくなって、いくつもQRコードを読み込んでしまう人もいるという。

 何気なく集めた車種の一覧から、再び来場者の嗜好(しこう)を診断する仕組みも取り入れた。その診断結果が、入場時の結果とは異なることもあるらしく、深層心理として来場者が求めるクルマを提案できるようにした。

 Blabo!で寄せられた消費者からの生の意見に目を通すにつれ、北島氏は「これまで消費者を無視した企画作りをしていたことに気づかされた」。社員による検討段階では「2週間で総入れ替えになるほど多くのクルマを流通させている価値を伝えるため、ベルトコンベアでクルマが流れる様子を見せよう」といったアイデアも出た。が、「もっと優先すべきことがあることを消費者の意見から痛感させられた」と北島氏。ベルトコンベア案が日の目を見なかったのは言うまでもない。

 こうした店舗作りが可能になったことと、同社が進めた組織改革は無縁ではない。同社は昨春、マスコミ担当やCSR担当などの広報部門と、ネットマーケティング担当や実店舗マーケティング担当などのマーケティング部門との垣根を壊し、マーケティングチームとして組織を統合した。「明日の来店客を増やすための販促とブランドコミュニケーションを総合的に進める必要があった」と北島氏は狙いを語る。

 組織統合のきっかけは東日本大震災だった。担当領域に関係なくメンバーが集まり決めた「被災地に1000台の中古車を寄付するプロジェクト」は、単にクルマを送りつけるのではなく、Blabo!も活用して集まった被災地のニーズや有効なクルマの使い道の声を積極的に取り入れたことが好意的に受け止められた。

 WOW! TOWN開店準備に際しても「フラッグシップストアの共同開発者募集」と銘打ってリアルのワークショップを開催するなど、プロセスを公開しながら消費者参加型でプロジェクトを進めた。9月7日から放映を始めたテレビCMは、新店舗の来店客とスタッフの表情を撮りおろした構成で、タレントを使ったものとは一味違う仕上がりだ。北島氏は「今後もさらに生活者との距離を縮めて“共創”していきたい」と語っている。