化粧品ブランド「クリニーク」のFacebookページのファン数が急増している。1週間に100人程度だった増加ペースが8月下旬に急変し、1週間に1700人以上のファンが増えた。8月19日に1万9000人だったファン数は9月1日には2万1000人を超えた。

 急増の契機は8月20日から始めたFacebook限定のプレゼントキャンペーンだ。9月7日に新発売するファンデーション「イーブン ベター メークアップ 15」と人気美容液「イーブン ベター ブライト セラム」のサンプルセットを100人にプレゼントする内容だった。

 PRマネージャーの坂口優子氏は、「KPI(重要業績評価指標)の1つであるファン数増につながりました」とは言うものの、やや不満げ。Facebook活用で理想にするのは「クリニークマガジン」。製品情報やプロモーションの発信を中心とする公式サイトとは異なる、ファンとのコミュニケーションの場作りがFacebookの最終ゴールだからだ。

クリニークのFacebookページ「Clinique Japan(クリニーク)」

 Facebookページは今年1月に開設した。クリニークは幅広い世代が使うブランドだが、その中でも若年層の獲得に使えるメディアを探していた。若年層に強いmixiページの開設も検討したが、「mixiは運用も難しく、ユーザー同士で盛り上がる場」(坂口氏)と判断し、米本社の意向もありFacebookページを開設することにした。

 コアなファンを中心に盛り上がりを作り、新たなファン獲得を狙いとする。なお、TwitterはEC(電子商取引)サイトの商品入荷情報などをタイムリーに伝えるメディアとして併用している。

モノと知識でコミュニケーション

 Facebookページで「いいね!」をたくさん集めて盛り上げる。その定番手法と言えば、人やかわいい動物、美しい風景などの写真を投稿することだろう。化粧品のFacebookページなら、誰もが憧れるブランドのイメージモデルの写真がいいかもしれない。

 ところがクリニークのFacebookページに、そうしたものは見当たらない。多いのは製品の写真だ。「製品が主役(Product is the star)」こそ、ブランドのこだわりだからだ。

 ただ、単に製品情報を伝えるのではない。投稿の中核となるのは、化粧品の上手な使い方や、美容や健康の知識を伝える「Beauty Tips」だ。そのほかには、ブランドの歴史を感じさせる過去の製品紹介、衛生基準などクリニークのこだわりなど、ビジュアルに頼らず「モノ」と「知識」でファンを引きつけることを目指す。特に過去の製品を紹介すると、長年使っているロイヤルカスタマーからの反応は高くなる。

 最大の反響を得たのは、渋谷ヒカリエのクリニークに設置した「スマイル ブレスレット」の紹介だ。客がグリーンのブレスレットをつけると「コンサルテーション希望」、ピンクは「自由に製品を試したい」など、接客するコンサルタントへの意思表明ができるというもの。顧客の隠れた要望をくみ取った取り組みには、500件以上のいいね!が寄せられた。ブランドの背景にある信念を伝えることがファンからの反応を引き出す。

 また、クリニークというブランドに対し、日本では「皮膚科医発祥」ということもあり堅いイメージが浸透しているが、海外ではファッショナブル、スタイリッシュなブランドという側面も持つという。海外イベントの報告などを通じて、日本のファンにとっては新たな魅力となる側面も伝えている。

 こうした編集方針を持ち、内容や投稿時間などを工夫した運用を続けて、地道にファンを拡大してきた。1つの投稿に対するコメント数といいね!数の合計をファン数で割ったエンゲージメント率は、「この3カ月で1.5倍に向上し、これは平均的なFacebookページの倍の水準」(坂口氏)と言う。今後は、プレゼント目的で急増したファンと、いかにエンゲージメントを深めていくかが新たな課題となる。

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