ショッピングモール開発を手がけるイオンモールは9月3日午前10時、EC(電子商取引)モール「イオンモールオンライン」をオープンする。ファッションを中心とした140の店舗が軒を連ねる。全国に110以上のモールを展開して年間延べ9億人が訪れるという同社の強みを生かして、「ZOZOTOWN」や「楽天市場」などのEC専業に対抗していく。
「小売りの総額は横ばいだが、ECだけはどんどん伸びている。ファッションであれば、ZOZOTOWNに食われている部分もある」
イオンモール営業本部新規事業統括部長の藤原雄三取締役は、消費スタイルの変化に強い危機感を持つ。
イオングループは中期経営計画で「デジタルシフト」を成長領域の1つに掲げる。8月10日にはグループのポータルサイト「イオンスクエア」を開設し、グループのECサイトの会員IDを統一した。その会員数は約700万人に上り、2016年度には3000万人規模に増やす方針だ。早速、1000万人超の会員を抱える会員制サイト「コカ・コーラ パーク」とタイアップ企画を実施するなど、会員獲得に余念がない。
自社内の“ショールーミング”に期待

今日オープンするイオンモールオンラインが競合との差異化のために力を入れるのが、イオンモールのリアル店舗との連携だ。自社グループが持つ強みを生かしたいからだけではない。消費者ニーズにも則しているのがその理由。藤原取締役はその狙いをこう語る。
「そもそも、ネットの世界だけでの買い物に不安がある人はまだまだいて、リアルで商品を見られるというのは安心を与えて、(ECユーザー層の)裾野を広げる」
お店で商品を見て、スマートフォンを使ってECサイトから買う「ショールーミング」現象が広がっているといわれる。店舗にとっては脅威だが、これは、店舗で商品を手に取りたい、ECサイトだけではモノは買いたくない人が多いことの表れでもある。
イオンモールが期待するのは、自社店舗と自社ECモール間でのショールーミングだ。店舗で手に取った商品を自宅で買う。そんな利用も想定している。
イオンモールが仕掛ける店舗とECモールの連携策は2つある。1つは店舗での受け取りサービスだ。まずは実験的に4つの店舗でイオンモールオンラインでの購入商品を受け取れるようにする。店舗なら送料無料で、都合のいい時間に受け取れるのが顧客のメリットとなる。今後、他のイオンモール店舗や、将来的にはグループのコンビニエンスストア「ミニストップ」などでの店頭受け取りサービスも検討する。
もう1つの施策が、電子マネー「WAON」との連携だ。オンラインの開店にあわせて、イオングループのECサイトでの買い物でたまる「ネットWAONポイント」のサービスを始める。200円の買い物で1ポイントたまり、「WAONポイント」に交換できる。WAONポイントはイオンなどリアル店舗の買い物に使えるので、ネット、リアル店舗の相互利用を促進できる。
イオンモールオンラインの開店プロモーションにも、イオングループの既存資産をフル活用した。8月20日からはイオンモールの店頭で告知を開始した。その他、折り込みチラシやサイトも告知手段として活用。クレジットカード「イオンカード」の会員は主要なターゲットに位置づけ、請求書同封のチラシやメルマガで告知をする。その他のリストも含め、オープン前2週間の告知メール配信数は実に740万通に上ったという。
出店者から商品を預かり、イオンが発送
EC市場では品ぞろえや価格での差異化が難しくなり、大手の間では配送期間などサービス品質が競争のポイントになっている。イオンモールは、出店者でなく自社が配送しその品質を高めている。
販売商品は出店者からイオンモールが預かり、横浜市の配送センターから一括して発送する。顧客は複数店舗で購入しても商品はまとめて届く。出店者による商品配送が主流の楽天市場ではなく、物流センターを自社で持つZOZOTOWNに似た方式だ。こうした対応をイオンモール側で請け負うことで、EC未経験の企業の出店ハードルが下がることも期待する。
配送料は全国一律525円で、購入額5000円以上なら無料となる。ZOZOTOWNの送料無料ラインの1万円を意識して、低めに設定したようだ。追加で315円を払えば、午後2時までの注文は当日出荷する「お急ぎ便」メニューも用意した。
イオンモールオンラインはまず、ファッション中心のモールとしてオープンするが、今後は家具などその他の物販、そして飲食や金融、不動産などのサービス業のテナントにも参加を呼びかけ、「最終的にはスーパーモールと呼べるモールにしたい」(藤原取締役)と意気込む。出店者数、商品数だけでなく、商品検索などの使い勝手も追求したい考えだ。