内田洋行はソーシャルメディア活用に積極的なBtoB(企業間)系企業の1社だ。ソーシャルメディアとセミナーを連携させることで自社への理解を深めて、話題を広めることに腐心している。

 同社の事業は、オフィス空間のデザイン設計や家具の製造・販売、そして学校への教育機器・教材などの製造・販売など幅広い。創業から102年、東証一部上場企業であり営業先となる総務部門への認知度は高い。しかし、同社製品を実際に使う一般のビジネスパーソンではどうだろう。

 「社名を知っていても何をしている会社か分からない。特に若い人に知られていない。先進的なものを持っているのですが…」

 マーケティング本部カスタマーリレーション企画部の高橋祐人担当部長はそう話す。そこで同部が今、ミッションの1つとして注力するのが、各事業部ではアプローチできない若年層などへ向けたマーケティング活動だ。

 若手ビジネスパーソンが関心を持つ様々なテーマのセミナー開催も、その一環。集客にFacebookを活用したところ、同部主催セミナーの参加者の9割以上はFacebook経由となっている。

自社ショールームを会場にセミナーを開催する

 例えば「伝える力」セミナーは、「プレゼンテーションの資料の作り方ではなく、自己の持っている表現能力を高めることを目的」(高橋氏)としたもので、今年3月から月1回のペースで開催してきた。第1回は自社サイトでも申し込みを受け付けたが申込者は4人程度。大半はFacebookページのイベント機能経由だった。そこで2回目以降は自社のメルマガやFacebookページ「次世代ワークプレイス研究所」などで告知して、受付はFacebook限定にした。その結果、各回40~60人の参加者が集まる。

 セミナーでは自社製品を詳しく紹介するわけではない。ただ、オフィス内にあるショールームが会場となっており、プロジェクターで映し出す3つの画面を制御できる「マルチスクリーンプレゼンター」など内田洋行の製品を体感してもらう場ともなっている。プレゼンに関心を持つビジネスパーソンは、同社製品の最終ユーザーである。そうした人に理解を深めてもらうことが営業活動の後押しになり、将来的な顧客創造につながっていくと考えている。

Ustream生番組も開始

 Facebookで集客といっても、ファン数が約1400人の次世代ワークプレイス研究所だけが貢献しているわけではない。同ページのファン以外のセミナー参加者も多い。高橋氏は「個人的なつながりが大きい。パワーを持つ人の力を借りてセミナーを広げている」と明かす。伝える力の講師である佐々木博氏も、NHKのテレビ番組「趣味悠々」では12年間講師を務めた著名人だ。そうした人を通じて話題を広げる。数十人規模のセミナーであればFacebookページに数万、数十万のファンを集める必要はない。

 コストが安いソーシャルメディアは徹底活用する方針だ。この6月にはUstreamを使ったライブ動画番組「UCHIDA TV」を始めた。毎週水曜日18時~18時30分に放送。カスタマーリレーション推進課の三上雄輔氏が登場し、社員をゲストに招き自社事業を紹介していく。視聴数はまだ少ないが、「社員全員がマーケティングに参加するような意識の変化を生み出せれば」と高橋氏は願っている。