第1回 メーカーCRMサイト続々登場の舞台裏
第2回 利用するほど高まる価値、顧客の意見でコンテンツ拡充――価値共創型のオムロンヘルスケアと味の素
第3回 店舗との連携強化で会員拡大、エンタメコンテンツも有効――接点拡大型のジョンソン・エンド・ジョンソン

 CRMサイトの会員に正しい装用を啓蒙して長期間の利用を促進し、ポイントで購買を働きかけて顧客生涯価値を高める。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、そんな接点拡大型のCRM施策に取り組んでいる。

 昨年9月に会員プログラム「Myアキュビュー」を開始し、会員数は今年6月に30万人に達した。ビジョンケアカンパニーのマーケティング本部デジタルマーケティング&戦略企画部の坪田明晃マーケティングマネジャーは、「1年弱で30万人は予想以上」としつつ、さらなる増加に期待をかける。

 接点拡大型CRMのカギを握るのは会員獲得の手法だ。同社は、店舗との連携にヒントを得た。

 国内需要の伸び悩み。コンタクトレンズ市場も例外ではない。装用者数は2008年以降、1500万人程度で頭打ちだという。

 「10代から使い始め(老眼が始まる)40代で抜けていく。そのベルカーブ(正規分布)の大きさが小さくなっている。弊社製品でも老眼市場向けには優れた製品を出せていないのも課題だ」と坪田氏。

 若年層の人口減少は市場縮小に直結する。同社は国内市場で5割近いシェアを持つため、他社からシェアを奪うにも限りがある。採るべきマーケティング戦略は、他社への乗り換えを防ぐことや、継続利用する顧客を増やすことだ。そうした狙いからMyアキュビューが生まれた。

 このプログラムでは、コンタクトレンズ「アキュビュー」を購入するとポイントを獲得でき、一定のポイントをためると賞品と交換できる。サイトでは購入履歴などを確認できるほか、コンタクトレンズの正しい装用法や目の健康を守るための啓蒙コンテンツなどの閲覧によってもポイントがたまる。

 ただ、「ポイント制度はシカケに過ぎない」(坪田氏)。付与されるポイントは少額で、本当に安く買いたい人は販売価格が安い店へ足を運ぶ。

 ポイントをきっかけに啓蒙コンテンツを見てもらい、正しい装用法を理解することで、高年齢になってもアキュビューを使ってもらう。また1日、2週間といった使用期限を守って購入頻度を高めてもらうことを目指す。

店舗にもメリットを提供

ジョンソン・エンド・ジョンソンは店舗の協力を得て顧客との接点拡大を狙う

 同社が会員規模を順調に拡大できている理由の1つは、コンタクトレンズの販売店から会員獲得の協力が得られているからだ。

 「デジタルと実店舗の協働という観点がないと、CRMはうまくいかない」と坪田氏は指摘する。その根拠は、同社が今年2月に開始した、店舗と連携した新たな会員登録策である。

 商品の購入時に店頭で、会員番号を付与した紙の「お店でクイック入会カード」を渡してもらい、その番号を使ってサイトで本登録すると購入分のポイントが獲得できる仕組みだ。これなら、最初からポイントがつくので継続利用が見込める。2月以降は、会員登録者の半数以上は購入経験がある人になっている。

 協力店舗ではポイント獲得も簡単だ。紙の会員カード、もしくは携帯電話に表示した会員証のバーコードを提示するだけ。それ以外の店舗では、購入商品のバーコードを郵送してもらわなければならない。

 ではなぜ、ジョンソン・エンド・ジョンソンは店舗から協力を得られるのか。それは、Myアキュビューに、協力店舗もリピート顧客を増やせる機能が備わっているからだ。

 Myアキュビューの利用者が、会員証を提示して商品を購入した協力店舗は、自動的に「My店舗」として会員情報にひもづけて登録される。このMy店舗で再度商品を購入すると、ポイント付与率が2倍になる。

 協力店にはMyアキュビューのサイト上で顧客へメッセージを表示できる機能も提供することで、店の常連客獲得を支援する。店舗にとってのメリットを提供することで協力店舗を拡大して、全国に8000店あるといわれる販売店のうち、協力店は現在約1200店舗まで増えた。

 このようにMyアキュビューは協力店舗と二人三脚で進めるCRMプログラムだ。今後も相乗効果を生かして会員と協力店舗の双方をバランス良く拡大していく方針だ。

 こうした施策で「会員になった方は購入回数が多い、特定の期間の購入量が多いという数字が出ている」と坪田氏は語る。顧客のロイヤルティ向上を判断する指標には、「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」を採用している。

 NPSとは、「あなたはそれを友人や同僚に勧めたいと思うか?」という問いに対する答えを0~10の11段階で調査。10~9を推奨者、8~7を中立者、6以下を批判者に分類し、推奨者の比率から批判者の比率を引いた値がNPSとなる。NPSの変動から、ロイヤルティの度合を測る。

 今後の課題は、サイト利用の活性化だ。8月にはエンタテインメント性の高いコンテンツを追加して、さらなる顧客接点の拡大を目指す。

価値共創、接点拡大に有効な機能

 ここまで紹介してきた事例を俯瞰して見てみると、「価値共創型」と「接点拡大型」の推進には、必要となる機能が異なることが分かってくる。

メーカー系CRMサイトでは戦略によって必要な機能が異なる

 価値共創型では、製品と連携して継続利用することで付加価値が高まっていく仕組み、会員同士で協力することで価値が生まれる仕組み、顧客からインサイトやニーズを引き出すためのコミュニティやアンケート機能の仕組みなどが必須だろう。接点拡大型では、とにかく多くの顧客とのつながりを作ることが成果の向上に直結する。そこで活用できるのがエンタテインメント系のコンテンツだ。 

 例えば、日本コカ・コーラの「コカ・コーラ パーク」やサントリータウン、ネスレ日本の「ネスレアミューズ」といった、接点拡大型の有力CRMサイトを見れば、ゲームや占い、懸賞応募などで顧客との接点を作っていることに気づく。

 エンタテインメント系のコンテンツは、直接的に商品の購入を促すものではない。浅くてもいいので、幅広い層にブランドと接してもらうことが目的だ。

 自動販売機やコンビニエンスストアなどの棚の前に立った時、真っ先に自社ブランドを思い浮かべてもらい、購入につなげる可能性を高めている。

 ポイント機能は価値共創型と接点拡大型、ともにサイトの活性化に利用できる。パナソニックでは、レビュー品質の向上にもポイントを活用する。CLUB Panasonicでは、レビュー投稿するだけでは500ポイントしか取得できない。が、実際に掲載されれば2000ポイントをもらえる。このような二段構えにすることで、より具体的なレビューを集めている。

 メーカーCRMサイトは目的によって、必要な機能やサイトの作りは大きく異なる。紹介した事例を、自社が目指すCRM戦略の方向性と照らし合わせれば、自ずと必要な機能が見えてくるはずだ。

第1回 メーカーCRMサイト続々登場の舞台裏
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