ユニクロがモバイル会員の獲得を急いでいる。店頭での接客中や、自社EC(電子商取引)サイトのトップ画面で、会員特別価格のタイムセールクーポンをもらえる、といったメリットを伝えて会員登録に注力中である。

 将来的には既存顧客から募ったモバイル会員と深い関係を築きながら、顧客の趣味嗜好(しこう)にあわせたクーポンの配布などで来店を促すCRM(顧客関係管理)施策へと発展させたい考えだ。

 「マス広告に代わる、新しい顧客との直接的な接点を持つ基盤を作るため、会員獲得を始めた」

 同社のグローバルコミュニケーション部商品マーケティング&コミュニケーションチームの松沼礼リーダーは狙いをこう語る。

 ユニクロの7月の国内既存店売上高は前年同月比で2.0%減となり、4カ月連続で前年割れするなど、苦戦が続く。こうした状況を打破するため、モバイル会員の獲得で、顧客と直接コミュニケーションする体制を急ぎ整える。

CRM施策では遅れていた

 意外に思われるかもしれないが、実のところ同社では「CRMはこれまで、ほとんどやってこなかった」(松沼氏)。従来は、誕生月の割引サービスをECサイトで実施する程度だった。

5月に刷新したスマートフォンアプリ「UNIQLO」

 CRM戦略に本腰を入れる上で活用するのが、スマートフォンアプリ「UNIQLO」だ。同社は、チラシをスマホ上で見るといった機能にとどまっていたこのアプリを今年5月に刷新。モバイル会員限定の割引サービスや、指定の日時に使えるクーポンを配布するタイムセールの告知機能を加えた。このほかゲームなど、アプリを継続的に利用してもらうコンテンツも拡充する。

 全国に826店を展開する店舗への誘導を促すには、パソコンよりも店舗に持っていけるモバイルデバイスの方が相性が良い。ここ最近は、消費者のスマホシフトが著しいという事情もある。「従来型ケータイ向けのマーケティング予算を圧縮しているわけではないが、スマホ関連の開発投資には特に力を入れている」(松沼氏)段階だ。

 かねて同社が、積極的にスマホアプリを提供してきことを知る人は多い。時計アプリやカレンダーアプリ、最近では目覚ましアプリ「UNIQLO WAKE UP」がリリースから約1カ月で50万ダウンロードを達成した。ただ、これらのアプリは、通常の生活の中でユニクロブランドとの接点を薄く広く持つための、ブランディング施策の意味合いが強かった。

 現状は、アプリを利用するのに会員登録する必要がないため、モバイルクーポンを使った人数は把握できても、個人にひもづいた情報は取得できない。が、「購買履歴を取得して、顧客ごとに最適なクーポンを配布するといったマーケティング手法は自ずと手がけることになろう」と松沼氏。EC会員との連携なども視野に入れながら、個人の嗜好に合わせたCRM施策への進化を目指す。