間近に迫ったロンドン五輪を念頭に、日本コカ・コーラ インターラクティブ・マーケティング バイスプレジデントの江端浩人氏は、「コカ・コーラはティーンの獲得をオリンピック × ソーシャルメディア × モバイルでやっていきます」と語った。

コカ・コーラが五輪を機に新チャレンジ公表

日本コカ・コーラの江端浩人氏

 日経BP社が7月24日~26日の日程で開催中のイベント「モバイル&ソーシャルWEEK 2012」に登壇した際のことである。「ブランド価値向上に繋がる消費者との会話促進とソーシャルメディアの活用について~オリンピックの活用事例~」と題した講演で、江端氏は新しい施策をお披露目した。

 前回、2008年開催の北京五輪と同様に、デジタル関連の施策は「コカ・コーラ オリンピック応援パーク」のサイトを軸に展開していく。ただ、当時と異なるのがスマートフォンとソーシャルメディアの普及状況だ。江端氏は、iPhoneの日本上陸は2008年7月と、北京五輪の真っ最中だったと指摘。

 また、前回の応援パークでは「mixi」「Mobage」「GREE」を活用したが、今回は「アメーバピグ」「LINE」「Facebook」「Twitter」が加わり、それらの利用者数を単純合計すると1億7200万人にも達するという。それゆえ、広く普及したスマートフォンとソーシャルメディアを積極活用していく。

LINE活用にアクティブサポート

 この講演開始と同時刻となる、24日午後1時に始めたのがLINEの公式アカウントと公式スタンプだ。ロンドン五輪公式飲料の「コカ・コーラ」「アクエリアス」「グラソー ビタミンウォーター」の3商品のスタンプを提供する。江端氏は「LINEは10~20代、さらには30代まで多くの方に使われている。コミュニケーションの中で、コカ・コーラのブランデッドアイテムをかなり活用してもらえる」とLINE活用の狙いを語った。

 また、7月27日から8月12日の五輪期間中は、Twitterアカウント(@London_CCPark)を通じたアクティブサポートを実施することも公表した。「オリンピック期間中は24時間3交代で担当が付きソーシャルメディア全般の投稿を監視する。『北島選手頑張れ』とツイートした人には『ありがとう』と返事をするかもしれない」と江端氏。

 アクティブサポートは、ソーシャルメディア上でのユーザーからの問い合わせや不満、苦情に企業が自発的に対応することで、企業への印象を高めたりサポート窓口への問い合わせを減らしたりする効果が期待される。コカ・コーラは既に米国やスペインでアクティブサポートを実施中で、日本での実施についても社内で期待が高まっているという。

 ただ、一度始めるとやめにくい。今後、消費者のアクティブサポートに対する期待が高まった時に備えて、ロンドン五輪という特別な期間を使って実験する考えだ。

 北京五輪の応援パークでは期間中に100万人が会員登録したが、今回は開始前に70万人が登録したという。また、アメーバピグ上に設けた応援パークは200万人が参加。江端氏は「重複はあっても既に270万人に達しており、かなり多くの方にコカ・コーラとオリンピックをスマートフォンとソーシャルメディアを通じて体験してもらえる」と期待を寄せていた。

 「チョコレートクッキークランブルフラペチーノ with ホワイトチョコレートプディング」――。高額だがヒット商品となった、その秘訣を明かしたのが、スターバックスコーヒージャパンのマーケティング本部Web/CRMグループでマネージャーを務める長見明氏だ。

 やや長いネーミングのこの商品は、同社が今年4月~6月の期間限定で販売したフラペチーノ(フローズンドリンク)である。発売日には予想の3倍も売れ、クチコミも爆発的に拡大。「フラペチーノ」というキーワードがTwitterのトレンドに入った。

スタバが提供した「ストーリー」とは

スターバックスコーヒージャパンの長見明氏

 最も小さなトールサイズでも価格が590円と、通常の期間限定フラペチーノより100円ほど高い。ヒットの背景には、商品自体の良さに加えて、(1)分かりやすい商品と分かりにくい名前、(2)「ストーリー」を提供するキャンペーン、(3)テレビ展開――といった要素があったという。

 通常のフラペチーノは、ホイップクリーム部分とフラペチーノ部分の2層が基本だが、この新商品は最下層にホワイトチョコレートプディングを加えた3層の味が楽しめる。ファンにとって、魅力が分かりやすかった。半面、商品名は長くて覚えづらい。「商品は分かりやすいが、商品名が分かりづらい」という組み合わせがネットでバズを生んだ。

 発売前日に仕掛けたキャンペーンはファッションショー仕立てにし、ストーリーの提供に注力した。土屋アンナさんなど人気モデルが、ファッションブランド「Ron Herman」の服を身につけ、フラペチーノを手にランウェイを歩く。そんな姿を、300人の招待客やメディアに披露。

 それを「Ustream」で中継したところ約5000人が視聴した。こだわりの服を自分らしく着る姿と、フラペチーノを自分好みにカスタマイズして購入するイメージ。その2つを重ね、自分らしさを表現するというストーリーを顧客に提供する狙いだった。

 パブリシティの効果も大きかった。例えば、発売の2週間ほど前に「カンブリア宮殿」(テレビ東京系列)がスターバックスを取り上げ、新商品が紹介されたことも告知に一役買った。

 発売当日、同社は、公式サイトやブログ、Twitter、Facebook、mixiで商品を告知。店舗で実際に飲んだ人からのクチコミも続々とネットに投稿されていった。結果、フラペチーノがTwitterトレンドに入り、「Yahoo!JAPAN」トップの「話題なう」に掲載。夜には一般ユーザーが「NAVERまとめ」で、その反応をまとめるなどネットで広く情報が流通した。「おいしいです」「当たりかも」など味を評価するツイートに加え、「名前長すぎw」と突っ込むツイートも多かった。

 ヒットを振り返り、「ストーリーが重要」と長見氏は言う。商品やキャンペーンにストーリーがなければ、会話やSNS投稿のネタにもしづらい。Twitterでバズが起き、テレビでも紹介されるなど、複数のメディアが同時に盛り上がったことも勝因の1つだ。人気ファッションブランドや土屋さんといったインフルエンサーと組んだこともポイントになったという。

 ネットの力だけでなく、マーケティングのストーリー設計やテレビの活用など、むしろ伝統的な手法がヒットを支えたこの事例。「15年ぐらい前のマーケティングの感覚に戻ってきたのではと強く思う」と、長見氏は話していた。

■修正履歴
スターバックスコーヒージャパンの講演報告について、講演者からパブリシティ効果に関する詳細についは会場限りにしたいとの要請があり、この報告記事の一部を削除いたしました。本文は修正済みです。[2012/7/29 18:30]
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