「いずれはiTunesが成し遂げたような世界のプラットフォームへと変化させたい」
日経BP社が7月24日~26日の3日間、東京都港区の六本木アカデミーヒルズ49で開催中のイベント「モバイル&ソーシャルWEEK 2012」冒頭の基調講演に立ったグリーの田中良和社長は、ゲームSNS「GREE」のグローバル戦略についてこう自信をのぞかせた。初日となった24日は、イベント全体で664人の来場者が押し寄せ、会場は熱気に包まれた。このイベントは、今年3回目の日経デジタルマーケティング読者無料セミナーでもある。

グリーは今年5月に、ソーシャルゲームの世界共通プラットフォーム「GREE Platform」の提供を開始。このプラットフォームの開始に先駆け、ゲームアプリを全世界を向け提供したところ、それが世界でも売り上げを上げていることから、GREEのゲームは世界でも通用する確証を得たという。
新たなプラットフォームを使って、日本製のゲームを169カ国に向けて発信していく。「年末までには数百タイトルを集める。また、10億人に利用されるサービスを目指す」(田中氏)という。
グローバル戦略において最も重視するのはスマートフォンと新興国だ。
「ネットを使うという言葉が持つ意味は、従来のパソコンを使うことから、今後はスマホを使うことへと変化していくだろう」
田中氏がこう指摘するように、グリーはスマホでの利用を念頭においてサービス開発を進める。それを、タブレットなど他のデバイスへ移植するというスキームを想定している。「パソコンはいずれ、マイナーな存在になっていくだろう」と田中氏は予測した。
こうした動きは、ゲーム市場においても同様に起きるという。ゲーム機といえば以前は、テレビにつないで楽しむものだった。それが、「ニンテンドーDS」などのポータブルゲーム機が人気を博し、ゲーム市場の主役へと躍り出た。その手軽さや、クイズなどで脳を刺激するコンセプトのゲームソフトなどがウケて、これまでゲームに関心がなかった主婦層や高齢者にも利用が広がった。そして、スマホでオンラインゲームという流れだ。だから、「ゲームをする」という言葉の持つ意味が、スマホでオンラインゲームをすることに変わっていくとみる。
スマホで新興国の攻略を目指す
このスマホを活用しながら、新興国も攻めていく。従来、ゲーム市場の中核だった家庭用ゲーム機について田中氏は、「先進国の人だけが遊べる狭い市場」と位置づけた。機器自体の価格の高さ、テレビが必要となる環境など、様々なハードルがあり、新興国などでは市場が広がりにくかったとみる。
こうした新興国でも、スマホは急速に普及しつつある。田中氏は、2015年には新興国におけるスマホ普及台数が、先進国を上回るというデータを示しながら、「スマホ上でゲームプラットフォームを展開することで、これまでゲームをやりたくてもできなかった新興国の人たちを取り込めるはず」と説明。新興国市場の攻略が「グリー成長の最大化につながる」と来場者に訴えかけた。
もっともゲームは、GREEがプラットフォームとしての力を蓄える上での一手段に過ぎないとした。田中氏は、音楽配信に始まり、利用者の拡大に伴ってコンテンツを拡充し、映画やアプリも配信するようになった米アップルの「iTunes」を例に挙げながら、「ゲームというキラーコンテンツを基礎に利用者を拡大していき、iTunesのような世界プラットフォームに変化させていきたい」と意気込みを語った。
ゲームビジネスではソニーや任天堂がグローバルで成功を収めてきた。グリーの世界への挑戦は始まったばかり。「ゲーム市場は先人が世界の市場を切り開いてきた。日本発で世界において成功できるビジネスと信じている」として、田中氏は講演を締めくくった。