第1回 ファン減少の企業もあるってホント? これがFacebookページの立て直し方
第2回 「エンゲージメント率向上」は中間目標…、分かっちゃいるが最終目標
第3回 「顔出し写真」でファンと親近感…、そう思ってたら、ファンが減った
第4回 ついやってしまう「ソーシャルメディア専門家」の登用

 ここまで紹介してきた運営目的、KPI、投稿内容の見直しを効率良く進めるための社内における人材登用の在り方について、最後にご紹介したい。

 多くの企業が半ば試験的にFacebookページを立ち上げた当初は、Webやソーシャルメディアについて技術的に詳しい人材の登用が望ましい面もあった。しかし、このページが乱立し、ファン数などを皆が右肩上がりで伸ばせる時期が過ぎ去ったいま、運営体制や担当すべき人材を熟慮すべきタイミングに差しかかっている。

 化粧品の製造小売り(SPA)、ラッシュジャパン(東京都港区)は4月に、ソーシャルメディアの専任者を置いた。その役割を担うのは、前・お客様相談室室長の大楠翔一氏だった。店舗での経験もある。

 当初、ショップスタッフからの登用や社外のソーシャルメディアのスペシャリストの採用なども検討された。が、マーケティング責任者の中村淳子氏によれば、「お客様相談室に入る前に店舗でスタッフとして働いていた経験もあり、ラッシュブランドへのパッション、そして理解が高いことはもちろん、お客様に対しても誠意を持って接することができるスタッフ」と、大楠氏に白羽の矢を立てた。

 2年間の顧客サポート経験を通じて、大楠氏は「お客さんの声をずっと聞いてきたので、この投稿は反応がいいだろう、などコメント数もある程度は予測がつく」と語る。この独特のコミュニケーションスキルも生かして、ファンからの反応を活性化。Facebook活用の指標の1つ、「話題にしている人」の数を4月末の632人から、7月4日には2743人まで急増させた。同時期に、アットコスメの「@cosme上半期ベストコスメ大賞」が発表になり、ラッシュの商品が部門賞を受賞したという“ご祝儀”もあるが、話題を着実に広めているのは確かだ。

 ここで、多くの企業における実際の運営体制を見ておきたい。本誌がD2Cと共同で実施した調査(調査概要はp.33)によれば、ソーシャルメディア運営企業のうち、担当部署(複数回答)が広告・宣伝部門となっているのは38.0%、営業企画・マーケティング部門が31.8%、広報部門が20.2%というのが実情だ。ラッシュのようにソーシャルメディア担当部門が担うのは0.8%と希有な例である。

 ラッシュに学ぶべきは社内を巻き込むその活動にある。大楠氏は、ソーシャルメディア活用の社内における認知度向上と、全社一丸となったソーシャルメディア活用の推進に取り組んでいる。4月下旬に開催された店長会では、その会場でソーシャルメディア活用のブースを出店した。先進事例を説明し、ラッシュ全店舗が既に運用する店舗Twitterアカウントの効果的な活用を指南した。

 こうした機会を活用して店舗とのパイプを太くし、各店舗のイベント情報を集めるルートを確立して、それら情報の発信をしたり、社内広報と連携して、ラッシュの工場紹介をしたりとコンテンツを強化している。

 大楠氏は言う。「Facebookページ上で社内のファン、社内からの感想が増えた。お客さんもその延長線上にあるんだと思う」。社内の共感すら得られないのでは、顧客の共感も得られまい。

 Facebookページを舞台に、優勝劣敗がくっきりとし始めている現実をみつめ、自社の戦略と照らしあわせたFacebookページ再生プランの作成がいま、求められている。

Facebookページの運営を見直す4つのポイント

第1回 ファン減少の企業もあるってホント? これがFacebookページの立て直し方
第2回 「エンゲージメント率向上」は中間目標…、分かっちゃいるが最終目標
第3回 「顔出し写真」でファンと親近感…、そう思ってたら、ファンが減った
第4回 ついやってしまう「ソーシャルメディア専門家」の登用
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